パート2:バングラデシュ現地からの環境レポート第2回 〜地球温暖化編〜
- 2016/10/19
- カテゴリー:国際事業コラム

写真:レンガ工場で働く子どもたち(クルナ市)
バングラデシュの街の中を歩いていると、必ずと言ってよいほど目に飛び込んでくるものがあります。それは、レンガです。レンガは、家、ビル、塀や道路等に多用され、ここでは欠かすことのできない資材の一つです。この国では石・砂利の採掘できる場所や河川は極めて少なく、ほとんどの建築では粘土を材料としたレンガが使用されています。
首都ダッカの場合、半径25キロメートル圏内にレンガ製造工場が約1200箇所存在するとのことです。レンガ産業は同国GDPの1%に寄与し、100万人の雇用を生みだす産業となっています。

レンガ製造工場の様子(クルナ市)
レンガ製造工場で働く人たちの姿
レンガ製造工場は、借地料の安い都市郊外に多く位置し、黒い煙が立ち上る煙突を数多く見ることができます。この国は低地が多く、雨季になると雨水の浸水や洪水等で、工場の稼働できる時期が限られています。そのため、乾季の半年程の間に働く、労働者が多くなります。
レンガ造りの全工程は、ほとんどが人の手によって行われます。粘土を型枠に入れて型をとる人、レンガを焼く人、焼いたレンガを運ぶ人。頭に10個以上のレンガを載せて汗だくで運びます。子どもや女性も同様に働きます。
給料は歩合制が基本となっています。例えば何往復レンガを運んだかで給料が支払われる仕組みになっており、これは彼らがレンガ工場で働くためのインセンティブの一つとなっているようです。労働者の給料は、100~120タカ(130円~160円程)/日で、労働時間は10~12時間程/日が平均のようです。ちなみに、粘土レンガの値段は8タカ(10円)程度で取り引きされています。
レンガ製造工場がもたらす環境問題
レンガ産業はバングラデシュ国内における最大の温室効果ガス排出源であると同時に、年間350万トンもの石炭を使用し、レンガを焼く際に発生するガス、粉塵等が深刻な大気汚染の問題をもたらしています。特に、エネルギーをたくさん消費するタイプのレンガ製造窯が多く使用されていることが、石炭使用量の増加、そして温室効果ガス排出を増大させる要因となっています。
また、レンガ産業は年間4,500 万トンの粘土を掘削しているため、毎年8万ヘクタールの農地が減少していると言われています。さらに、製造工程で廃棄となるレンガの量が多く、その適正な処理も重要な課題となっています。

クルナ市郊外にあるレンガ製造工場
クリーンで労働者が安全に働けるレンガ工場を目指して
政府のクリーンなレンガ製造を目指した政策・法規制の制定により、エネルギー効率の良い窯の導入や、農地減少をもたらす粘土採掘に代わる、産業廃棄物等をレンガ材料にする技術の導入が進められています。
しかし、財源の制約や、環境に配慮したレンガ製造に携わることのできる人的資源不足が理由で、クリーンなレンガ製造が全国へ浸透していくには少し時間がかかりそうです。この中で多くの労働者たちは、レンガを焼く際に発生するガス、粉塵による健康面へのリスク、長時間労働・低賃金等の厳しい労働環境の中での作業を余儀なくされています。
今後、JEEFとしては、環境教育という技能を活用した人材育成の視点から、クリーンで安全に働けるレンガ製造工場へ改善していけるよう、レンガ製造工場で働く子どもたちを支援する環境教育プログラムの開催等を検討していきたいと考えています。
文責:佐藤秀樹(国際事業部チーフコンサルタント)
参考文献: バングラデシュ国無焼成固化技術を使ったレンガ事業準備調査(BOPビジネス連携促進)報告書(2014年1月)、独立行政法人国際協力機構(JICA)、亀井製陶株式会社、株式会社アルセド
2016年9、10月号
- 日本モデルの環境教育を目指して!!(スリランカ)
- 新たな取り組みで見えてきたこと
- 村には祭りが必要だ
- 合宿:世界谷地原生花園散策と伝統的な藍染め体験
- 企業の環境マネジメントの目標を全社で考えるお手伝い
- 考えるっておもしろいかも!?第6回 「違う」ということ
- パート2:バングラデシュ現地からの環境レポート第2回 〜地球温暖化編〜
- ウエイスト・ピッカーからのメッセージ
- 聴いて 美味しくて 楽しいだけじゃない!インタプリターから見たフェスの魅力と可能性
- フェスが広げてきた社会への環境ムーブメント
カテゴリー
- worldexpress (13)
- 事業レポート (79)
- GEMS (2)
- JICA草の根技術協力事業 ブータン王国ハにおける地域に根ざした持続可能な観光開発と人材育成プロジェクト (6)
- JICA草の根技術協力事業 ブータン王国ポブジカにおける地域に根ざした持続可能な観光の開発 (6)
- NEC森の人づくり講座 (2)
- SAVE JAPANプロジェクト (1)
- インドネシア (6)
- カンボジアにおけるオオヅル及び生息地の保全に関する環境教育・普及啓発事業 (1)
- きのこたけのこ里山学校 (2)
- ハイフォン市都市環境整備にかかる環境教育・普及啓発プロジェクト (3)
- バングラデシュ国における事業 (18)
- 企業の人材育成事業 (1)
- 市民の市民のための環境公開講座 (4)
- 日本の環境を守る 若武者育成塾 (7)
- 東京シニア自然大学 専科 (2)
- 東京シニア自然大学 本科 (1)
- 清里ミーティング (3)
- 王子の森自然学校 (2)
- 人が育つ場づくり (5)
- 国際事業コラム (24)
- 地域の課題解決あの人に聞きました! (8)
- 寒さを楽しむ。温もりを感じる。 (1)
- 小さなサスティナブルのカケラ (4)
- 投稿 (4)
- 次世代のホープ達 (3)
- 清里ミーティング30thコラム (1)
- 特集 (131)
- 「伝える」ちから (3)
- 「未来を豊かに」を仕事にする (5)
- 「食」をとおしていのちをつたえる (3)
- 2020年までにチェックしたい9つのサスティナブル・トピック (3)
- esdユネスコ世界会議を終えて (4)
- JEEF25周年 私を形づくっている自然の原体験 (3)
- SDGs×教育 (3)
- アクティブラーニングってなに? (3)
- あなたの買い物が社会を変える (3)
- いま泊まりたい“学べる宿” (3)
- クリスマスの景色が変わる?生き物の変化と気候変動を知る。 (3)
- さあ! 2枚目の名刺をもとう (3)
- サイエンスと環境教育 (1)
- シニアからの環境教育 (2)
- どうする? サスティナブルな洗濯 (3)
- メディアを使った間接コミュニケーション (3)
- もうすぐ春がやってくる! 写真で伝えるセンス・オブ・ワンダー (1)
- 人と環境をつなぐ「花」のおはなし (3)
- 人気アウトドアメーカーは どんな環境の取り組みをしているの? (2)
- 今、子どもに向けたワークショップが熱い! (2)
- 今年こそ、エコツアーに行こう! (6)
- 今年こそ資格をとろう!自然体験型環境教育の資格・認定 (1)
- 地域を動かす移住者たち (3)
- 変わる!プラスチックの使い方 (3)
- 外であそぼう! (4)
- 夫婦で森に生きる (3)
- 子どもたちの自立を育むコミュニケーション (3)
- 学校で有効な環境教育的教育手法 (3)
- 市区町村の都市型環境教育のとりくみ「水」「森」「施設」 (3)
- 日中韓の環境教育の今 (3)
- 日本ならではのSDGsって? (4)
- 海の環境問題と環境教育 (3)
- 清里ミーティング30th (5)
- 環境教育✖️フェス (4)
- 環境教育って効果があるの? (2)
- 環境教育施設としての動物園・水族館 (3)
- 自然を感じる服 (3)
- 自然学校でラーケーション&ワーケーションしよう! (1)
- 自然学校の今 (7)
- 遊ぶ、学ぶ、サステナブる。 (1)
- 里山イニシアチブ 野生動物と向き合う (1)
- 食とエネルギー (3)
- 食べ物を育てる×教育 (2)
- 食品ロスから環境を考える (3)
- 理事コラム (11)
- 環境教育のものさし (7)
- 考えるっておもしろいかも!? (31)
- 超大 狩猟免許をとる! (3)
- 鈴木みきの山便り (5)