新たな取り組みで見えてきたこと

JEEFが漕ぎ出した「ナチュフェス」という船
JEEFが環境教育と野外フェスティバルを融合した新しいチャレンジを始めるらしい―。そんな噂が流れ始めたのが2014年の冬。その後、鈴木幸一@南兵衛さん(同特集ページ「フェスが広げてきた社会への環境ムーブメント」筆者)とJEEF川嶋理事長を中心に、インタープリターや環境を学ぶ学生、シンガーソングライターからDJまで幅広い人材が集まって企画を考え、フェスのような大きな波及効果をもった環境教育イベント 「ナチュフェス」が生まれました。これまで環境に興味がなかった層を、イベント自体の魅力で取り込んで環境教育の裾野を広げていこうという試みです。

これまでの活動を報告するため、これからの活動に参加してくれる仲間を集めるために、ブースやワークショップを出展している。
2015年春のアースデイ東京に出展して以来、各地のフェスにブース出展をしたり、多彩なゲストを招いた参加型トークワークショップ「ナチュフェスカフェ」を開催してきました。ここでは、時に参加者として、時にファシリテーターとして間近で感じてきたナチュフェスの手応えと可能性について紹介します。

アースデイの後夜祭。
印刷工場からいただいた排紙を床一面に敷き詰めて、ゲストの話、参加者どうしで語り合って感じたことをどんどん落書きしていく。
地球のことを多様性の中で考える
ナチュフェスの場にいて強く感じるのは、地球の問題は一人ひとりが向き合うこと。だったらみんなで考える方がおもしろい。余談ですが、私はJEEFに勤める2013年まで環境教育に携わったことがありませんでした。さらに言うと、ナチュフェスに関わるまで野外フェスに一度も行ったことがありませんでした。環境教育にせよフェスにせよ、本当に好きな人だけが参加する場のように感じていたのです。
そんな思いを変えたのは、ナチュフェスカフェでテンダーさんの話を聞いた時です。「フェスはそれぞれの理想を持ち寄る場」で、「フェスに関わる各々が、理想の暮らしのカタログ(見本市)を他者に見せるため」にやるのだと。ナチュフェスでは、ゲストと参加者の線引きを明確にせず、それぞれが自分なりの主義主張を持っていても受け入れられる、多様性を歓迎するような場づくりにチャレンジしています。

ナチュフェスカフェ。多彩なゲストと参加者を迎え、これからの自然、環境意識を表すコトバとデザインを探る対話型ワークショップ。
ゲストも、環境や音楽のジャンルで有名な方から、これからの環境のジャンルで注目されていくだろう期待の若手まで様々です。例えば、ロックシンガーの佐藤タイジさんは、使用する電気を全部太陽光で賄う「中津川THE SOLAR BUDOKAN」という野外フェスの話をしてくれました。
ヒッピーのテンダーさんは、電気・ガス・水道の契約なしで「エネルギー自給」の生活をしているご自身の体験を語ってくれました。そして、彼らと話してみたいと集まってくる参加者は、JEEFや他の環境団体・活動を初めて知ったというような方が大半でした。環境に興味がある、だけど具体的にどこの活動に参加していいかわからないという人が、まだまだたくさんいるのです。
無意識から意識へ「興味を持つ」ということ
ナチュフェスのイベントでは、
- 1ゲストスピーカーを複数人招くこと
- 参加者とゲストが交じっての対話セッションを設けること
- 企画や運営のミーティングには誰でも参加できること
の3つが暗黙の約束事になっています。先ほど書いたように、一つの意見の押し付けにならないようにしたい、そして興味を持った人がすぐに参加できるようにしたいという思いで続けていく中で自然と出来上がっていきました。
環境教育は、ともすれば企画者が良いと信じている手法や価値観を、紹介するに留まってしまうことがあります。その時点で、興味を持てる人、参加できる人が暗に限定されてしまっているように感じます。だけど、みんなが一つの価値観に染まっていくよりも、いろんな考え方をもった人がいることが大切なのではないか、ナチュフェスをやっているとそう感じるのです。
道は一つではありませんし、何が正解なのかは未来にしかわかりません。一つの考えを押し付けるのではなく、みんなで話し合うプロセスを通して、環境について考える人たちがつながれるプラットフォームをつくっていきたいのです。
2016年9、10月号
- 日本モデルの環境教育を目指して!!(スリランカ)
- 新たな取り組みで見えてきたこと
- 村には祭りが必要だ
- 合宿:世界谷地原生花園散策と伝統的な藍染め体験
- 企業の環境マネジメントの目標を全社で考えるお手伝い
- 考えるっておもしろいかも!?第6回 「違う」ということ
- パート2:バングラデシュ現地からの環境レポート第2回 〜地球温暖化編〜
- ウエイスト・ピッカーからのメッセージ
- 聴いて 美味しくて 楽しいだけじゃない!インタプリターから見たフェスの魅力と可能性
- フェスが広げてきた社会への環境ムーブメント
カテゴリー
- worldexpress (13)
- 事業レポート (79)
- GEMS (2)
- JICA草の根技術協力事業 ブータン王国ハにおける地域に根ざした持続可能な観光開発と人材育成プロジェクト (6)
- JICA草の根技術協力事業 ブータン王国ポブジカにおける地域に根ざした持続可能な観光の開発 (6)
- NEC森の人づくり講座 (2)
- SAVE JAPANプロジェクト (1)
- インドネシア (6)
- カンボジアにおけるオオヅル及び生息地の保全に関する環境教育・普及啓発事業 (1)
- きのこたけのこ里山学校 (2)
- ハイフォン市都市環境整備にかかる環境教育・普及啓発プロジェクト (3)
- バングラデシュ国における事業 (18)
- 企業の人材育成事業 (1)
- 市民の市民のための環境公開講座 (4)
- 日本の環境を守る 若武者育成塾 (7)
- 東京シニア自然大学 専科 (2)
- 東京シニア自然大学 本科 (1)
- 清里ミーティング (3)
- 王子の森自然学校 (2)
- 人が育つ場づくり (5)
- 国際事業コラム (24)
- 地域の課題解決あの人に聞きました! (8)
- 寒さを楽しむ。温もりを感じる。 (1)
- 小さなサスティナブルのカケラ (4)
- 投稿 (4)
- 次世代のホープ達 (3)
- 清里ミーティング30thコラム (1)
- 特集 (131)
- 「伝える」ちから (3)
- 「未来を豊かに」を仕事にする (5)
- 「食」をとおしていのちをつたえる (3)
- 2020年までにチェックしたい9つのサスティナブル・トピック (3)
- esdユネスコ世界会議を終えて (4)
- JEEF25周年 私を形づくっている自然の原体験 (3)
- SDGs×教育 (3)
- アクティブラーニングってなに? (3)
- あなたの買い物が社会を変える (3)
- いま泊まりたい“学べる宿” (3)
- クリスマスの景色が変わる?生き物の変化と気候変動を知る。 (3)
- さあ! 2枚目の名刺をもとう (3)
- サイエンスと環境教育 (1)
- シニアからの環境教育 (2)
- どうする? サスティナブルな洗濯 (3)
- メディアを使った間接コミュニケーション (3)
- もうすぐ春がやってくる! 写真で伝えるセンス・オブ・ワンダー (1)
- 人と環境をつなぐ「花」のおはなし (3)
- 人気アウトドアメーカーは どんな環境の取り組みをしているの? (2)
- 今、子どもに向けたワークショップが熱い! (2)
- 今年こそ、エコツアーに行こう! (6)
- 今年こそ資格をとろう!自然体験型環境教育の資格・認定 (1)
- 地域を動かす移住者たち (3)
- 変わる!プラスチックの使い方 (3)
- 外であそぼう! (4)
- 夫婦で森に生きる (3)
- 子どもたちの自立を育むコミュニケーション (3)
- 学校で有効な環境教育的教育手法 (3)
- 市区町村の都市型環境教育のとりくみ「水」「森」「施設」 (3)
- 日中韓の環境教育の今 (3)
- 日本ならではのSDGsって? (4)
- 海の環境問題と環境教育 (3)
- 清里ミーティング30th (5)
- 環境教育✖️フェス (4)
- 環境教育って効果があるの? (2)
- 環境教育施設としての動物園・水族館 (3)
- 自然を感じる服 (3)
- 自然学校でラーケーション&ワーケーションしよう! (1)
- 自然学校の今 (7)
- 遊ぶ、学ぶ、サステナブる。 (1)
- 里山イニシアチブ 野生動物と向き合う (1)
- 食とエネルギー (3)
- 食べ物を育てる×教育 (2)
- 食品ロスから環境を考える (3)
- 理事コラム (11)
- 環境教育のものさし (7)
- 考えるっておもしろいかも!? (31)
- 超大 狩猟免許をとる! (3)
- 鈴木みきの山便り (5)