機関誌「地球のこども」 Child of the earth

新たな取り組みで見えてきたこと 2016.11.30

JEEFが漕ぎ出した「ナチュフェス」という船

JEEFが環境教育と野外フェスティバルを融合した新しいチャレンジを始めるらしい―。そんな噂が流れ始めたのが2014年の冬。その後、鈴木幸一@南兵衛さん(同特集ページ「フェスが広げてきた社会への環境ムーブメント」筆者)とJEEF川嶋理事長を中心に、インタープリターや環境を学ぶ学生、シンガーソングライターからDJまで幅広い人材が集まって企画を考え、フェスのような大きな波及効果をもった環境教育イベント 「ナチュフェス」が生まれました。これまで環境に興味がなかった層を、イベント自体の魅力で取り込んで環境教育の裾野を広げていこうという試みです。

これまでの活動を報告するため、これからの活動に参加してくれる仲間を集めるために、ブースやワークショップを出展している。

これまでの活動を報告するため、これからの活動に参加してくれる仲間を集めるために、ブースやワークショップを出展している。

2015年春のアースデイ東京に出展して以来、各地のフェスにブース出展をしたり、多彩なゲストを招いた参加型トークワークショップ「ナチュフェスカフェ」を開催してきました。ここでは、時に参加者として、時にファシリテーターとして間近で感じてきたナチュフェスの手応えと可能性について紹介します。

 

アースデイの後夜祭。 印刷工場からいただいた排紙を床一面に敷き詰めて、ゲストの話、参加者どうしで語り合って感じたことをどんどん落書きしていく。

アースデイの後夜祭。
印刷工場からいただいた排紙を床一面に敷き詰めて、ゲストの話、参加者どうしで語り合って感じたことをどんどん落書きしていく。

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地球のことを多様性の中で考える

ナチュフェスの場にいて強く感じるのは、地球の問題は一人ひとりが向き合うこと。だったらみんなで考える方がおもしろい。余談ですが、私はJEEFに勤める2013年まで環境教育に携わったことがありませんでした。さらに言うと、ナチュフェスに関わるまで野外フェスに一度も行ったことがありませんでした。環境教育にせよフェスにせよ、本当に好きな人だけが参加する場のように感じていたのです。

そんな思いを変えたのは、ナチュフェスカフェでテンダーさんの話を聞いた時です。「フェスはそれぞれの理想を持ち寄る場」で、「フェスに関わる各々が、理想の暮らしのカタログ(見本市)を他者に見せるため」にやるのだと。ナチュフェスでは、ゲストと参加者の線引きを明確にせず、それぞれが自分なりの主義主張を持っていても受け入れられる、多様性を歓迎するような場づくりにチャレンジしています。

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ナチュフェスカフェ。多彩なゲストと参加者を迎え、これからの自然、環境意識を表すコトバとデザインを探る対話型ワークショップ。

ナチュフェスカフェ。多彩なゲストと参加者を迎え、これからの自然、環境意識を表すコトバとデザインを探る対話型ワークショップ。

 

ゲストも、環境や音楽のジャンルで有名な方から、これからの環境のジャンルで注目されていくだろう期待の若手まで様々です。例えば、ロックシンガーの佐藤タイジさんは、使用する電気を全部太陽光で賄う「中津川THE SOLAR BUDOKAN」という野外フェスの話をしてくれました。

ヒッピーのテンダーさんは、電気・ガス・水道の契約なしで「エネルギー自給」の生活をしているご自身の体験を語ってくれました。そして、彼らと話してみたいと集まってくる参加者は、JEEFや他の環境団体・活動を初めて知ったというような方が大半でした。環境に興味がある、だけど具体的にどこの活動に参加していいかわからないという人が、まだまだたくさんいるのです。

無意識から意識へ「興味を持つ」ということ

ナチュフェスのイベントでは、

    1. 1ゲストスピーカーを複数人招くこと
    2. 参加者とゲストが交じっての対話セッションを設けること
    3. 企画や運営のミーティングには誰でも参加できること

の3つが暗黙の約束事になっています。先ほど書いたように、一つの意見の押し付けにならないようにしたい、そして興味を持った人がすぐに参加できるようにしたいという思いで続けていく中で自然と出来上がっていきました。

環境教育は、ともすれば企画者が良いと信じている手法や価値観を、紹介するに留まってしまうことがあります。その時点で、興味を持てる人、参加できる人が暗に限定されてしまっているように感じます。だけど、みんなが一つの価値観に染まっていくよりも、いろんな考え方をもった人がいることが大切なのではないか、ナチュフェスをやっているとそう感じるのです。

道は一つではありませんし、何が正解なのかは未来にしかわかりません。一つの考えを押し付けるのではなく、みんなで話し合うプロセスを通して、環境について考える人たちがつながれるプラットフォームをつくっていきたいのです。

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鴨川 光(かもがわ ひかる)

1987年茨城県生まれ。ジャパンGEMSセンター研究員。 早稲田大学大学院教育学研究科修了後、2013年6月より現職。子どもの思考力や社会性の発達について研究している。ワークショップやボランティアを通して子どもたちと一緒に成長中。

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