アジアの開発途上地域で国際環境教育活動を目指す人のために 4
〜成果と評価 編〜
- 2016/02/23
- カテゴリー:国際事業コラム

文:佐藤秀樹(JEEF職員)
第4回目の「国際環境教育活動の成果と評価」は、 その活動成果をどのように評価していくかについて紹介します。
環境教育で評価と言えば、事業やプログラムの実施中や終了時に、参加者の知識の広がりや、技能の習得度およびプログラムの満足度を、アンケートやインタビューを行い数値化します。また、フィードバックミーティングを開催して関係者から意見を抽出することが多く行われます。
しかし、途上地域における国際環境教育事業やプログラム評価には、体系的に確立され、明確に効果や成果を測定するための手法はほとんどないのが現状です。
さらに、このような地域で環境教育のプログラムを実施する場合、ワークショップ(ファシリテーションを学ぶ研修や、自然観察のプログラムデザイン等)を単独で実施しても、その成果や効果は十分に上がるものではありません。
生計向上とリンクしたプログラム開発
途上地域では、貧困等の社会課題や、社会・経済政策が十分でないため、環境に対する取組みの興味・関心や優先順位は低いのが一般的です。
そこで、具体的な地域振興や、住民の生活改善に直結する環境教育活動プログラムを開発していくのが効果的です。なぜならば、その活動で生み出される、住民への具体的な成果を明確にすることで、モチベーション向上と活動の持続性につながっていくからです。
例えば、地域住民が環境教育プログラムに植林を組み込む場合、植林で生態系を保全しながら、コーヒー、カカオの栽培や養蜂等、住民やコミュニティが自立して生計向上をはかるための取組みが効果的です。
住民の生計向上と環境教育プログラムをリンクさせた環境教育活動を実施することで生み出される、農産物の収量やその金銭的利益等を数値化することができ、活動による成果をより具体的に評価することが可能となります。そうすることで、支援者にもわかりやすく成果を説明することができます。
変容を評価する
研修やワークショップで身につけた能力には、そこで学んだ心構え・態度が行動変化として発現していくことが求められます。知識を習得した後に、その知識を実際に体験・経験して振り返りを繰り返しながら自覚を高めることで、学んだ知識を効果的に活用できるようになります。
環境教育では、知識・技能・心構えを身につけた人がどのような行動をとっていくのか、その変容を評価していくことも重要です。
しかし、この変容を評価測定するのは難しく、次の内容を評価の項目として取り入れることで可能となります。
- 研修時に立てたアクションプランの実施。
- 職場や支援団体に環境教育活動を提案して予算を確保する。
- 何かしらの環境関係の活動に従事する。
開発途上地域における国際環境教育活動を評価するための万能な方法はありません。しかし、地域振興、住民の生計向上の視点を含めて包括的で一貫性のある環境教育活動やプログラムを提供していくことで、評価内容がより具体的且つ明確となり、説明もし易くなると言えます。
2016年1、2月号
- 環境教育はもう古い? 中国における自然教育の台頭
- 「母なる大地」を大切にするボリビア環境教育
- 韓国環境教育の現状
- JEEFインドネシア事務所 矢田所長にインタビュー!
- ネパールの人間開発2
- CSOラーニング生がレポート 市民のための環境公開講座
- キーワードは『そば』と『ヤク』!? 地域に眠る素材でお土産開発
- アジアの開発途上地域で国際環境教育活動を目指す人のために 4
〜成果と評価 編〜 - 考えるっておもしろいかも!?パート2:第2回「考える力」を育てる最初の一歩
- 〜阿部先生に訊いてみました〜日本の環境教育の始まりから、日中韓の環境教育ネットワーク構築まで
カテゴリー
- worldexpress (13)
- 事業レポート (79)
- GEMS (2)
- JICA草の根技術協力事業 ブータン王国ハにおける地域に根ざした持続可能な観光開発と人材育成プロジェクト (6)
- JICA草の根技術協力事業 ブータン王国ポブジカにおける地域に根ざした持続可能な観光の開発 (6)
- NEC森の人づくり講座 (2)
- SAVE JAPANプロジェクト (1)
- インドネシア (6)
- カンボジアにおけるオオヅル及び生息地の保全に関する環境教育・普及啓発事業 (1)
- きのこたけのこ里山学校 (2)
- ハイフォン市都市環境整備にかかる環境教育・普及啓発プロジェクト (3)
- バングラデシュ国における事業 (18)
- 企業の人材育成事業 (1)
- 市民の市民のための環境公開講座 (4)
- 日本の環境を守る 若武者育成塾 (7)
- 東京シニア自然大学 専科 (2)
- 東京シニア自然大学 本科 (1)
- 清里ミーティング (3)
- 王子の森自然学校 (2)
- 人が育つ場づくり (5)
- 国際事業コラム (24)
- 地域の課題解決あの人に聞きました! (8)
- 寒さを楽しむ。温もりを感じる。 (1)
- 小さなサスティナブルのカケラ (4)
- 投稿 (4)
- 次世代のホープ達 (3)
- 清里ミーティング30thコラム (1)
- 特集 (131)
- 「伝える」ちから (3)
- 「未来を豊かに」を仕事にする (5)
- 「食」をとおしていのちをつたえる (3)
- 2020年までにチェックしたい9つのサスティナブル・トピック (3)
- esdユネスコ世界会議を終えて (4)
- JEEF25周年 私を形づくっている自然の原体験 (3)
- SDGs×教育 (3)
- アクティブラーニングってなに? (3)
- あなたの買い物が社会を変える (3)
- いま泊まりたい“学べる宿” (3)
- クリスマスの景色が変わる?生き物の変化と気候変動を知る。 (3)
- さあ! 2枚目の名刺をもとう (3)
- サイエンスと環境教育 (1)
- シニアからの環境教育 (2)
- どうする? サスティナブルな洗濯 (3)
- メディアを使った間接コミュニケーション (3)
- もうすぐ春がやってくる! 写真で伝えるセンス・オブ・ワンダー (1)
- 人と環境をつなぐ「花」のおはなし (3)
- 人気アウトドアメーカーは どんな環境の取り組みをしているの? (2)
- 今、子どもに向けたワークショップが熱い! (2)
- 今年こそ、エコツアーに行こう! (6)
- 今年こそ資格をとろう!自然体験型環境教育の資格・認定 (1)
- 地域を動かす移住者たち (3)
- 変わる!プラスチックの使い方 (3)
- 外であそぼう! (4)
- 夫婦で森に生きる (3)
- 子どもたちの自立を育むコミュニケーション (3)
- 学校で有効な環境教育的教育手法 (3)
- 市区町村の都市型環境教育のとりくみ「水」「森」「施設」 (3)
- 日中韓の環境教育の今 (3)
- 日本ならではのSDGsって? (4)
- 海の環境問題と環境教育 (3)
- 清里ミーティング30th (5)
- 環境教育✖️フェス (4)
- 環境教育って効果があるの? (2)
- 環境教育施設としての動物園・水族館 (3)
- 自然を感じる服 (3)
- 自然学校でラーケーション&ワーケーションしよう! (1)
- 自然学校の今 (7)
- 遊ぶ、学ぶ、サステナブる。 (1)
- 里山イニシアチブ 野生動物と向き合う (1)
- 食とエネルギー (3)
- 食べ物を育てる×教育 (2)
- 食品ロスから環境を考える (3)
- 理事コラム (11)
- 環境教育のものさし (7)
- 考えるっておもしろいかも!? (31)
- 超大 狩猟免許をとる! (3)
- 鈴木みきの山便り (5)