JEEFインドネシア事務所 矢田所長にインタビュー!

文:野田麻美(JEEFインターン)
【インターン実施期間】2015年5月~12月 【実施地】インドネシア ボゴール
早速ですが、矢田さんがインドネシアに来たきっかけを教えてください!
矢田 19歳の春に、ジャングルでの生活を経験したくてカリマンタン島(インドネシア領ボルネオ)に旅行したことがきっかけです。焼畑農耕民の村に2ヶ月ほどお世話になり、狩りや漁労における哲学、巧みな林産物の利用など、人々が村の周辺の自然環境を深く理解し、自然と共生していることに感銘を受けました。そこでの経験が忘れられず、人生の方向性が定まることになりました。
野田 だから矢田さんは竹細工の編み方ですごく盛り上がったり手織りの布が大好きだったり、自然だけではなくその土地の文化に強く魅かれているんですね。
ところで私がインドネシアで常に思うのが、時間や連絡面がルーズで仕事がしにくいだろうなぁということです。

村の女の子(矢田撮影)
それでもなお矢田さんを13年も引き付けるインドネシアの魅力はずばりなんですか?
矢田「地に根を張った人々の暮らし」でしょうか。JEEFの活動現場は自然と人との繋がりの非常に強い場所がほとんどですよね。
「環境教育」などという言葉がおこがましいほどに、自然と共に生きる人の暮らしを実感できることに喜びを感じています。その意味ではインドネシアである必要はなかったのですが、初めての海外渡航がインドネシアだったため、そのまま今に至っています。その機会は得られていませんが、別の国であっても、同様の喜びを見出して活動を続けているでしょうね。
野田 なるほど。私も自然に生かされている、という実感を得ることに生きがいを感じている節があるので、とても共感できます。
そういえば、矢田さんはインドネシア以外の海外経験がないんですよね。とても意外でした。
さて、矢田さんの活動のポリシーとして「住民の声を大切にする」ということが軸にありますよね。そこで最後の質問です。
その考えは長年の経験から来るものだと思いますが、
「住民の声を大切にする」というポリシーに、最も影響している経験はどんなものでしょうか。
矢田 そうですね、2002年にインドネシアに赴任したばかりの頃はわからない事ばかりで、まずは実態を知ることを目的に、セミナーやワークショップなど政府やNGOが実施する様々なイベントに可能な限り出席しました。
それらイベントで常に疑問に感じていたことが「参加している住民に元気がない」ということでした。特に政府実施の政策決定の公聴会で顕著だったのは、政府高官や有識者が専門用語を駆使して政策を説明するものの、招待されて参加している住民は法律などの用語の理解が難しく、議題についてほとんど理解できていないという場面に何度も居合わせました。
その場の決定事項について理解されていないにも関わらず、出席者名簿に署名することが政府決定に同意したことと同義となってしまうような公聴会の結果、多くの政策が住民に理解されないままに実施されていくことはとても残念なことでした。
「住民参加」を標榜するプロジェクトで、住民は署名だけの参加となりプロジェクトが途中で頓挫するケースがあまりにも多いことに落胆したことが、現在のJEEFの活動ポリシーに反映されています。
大事なことはJEEFの矢田が何かを成すのではなく、住民が活動すること。プロジェクト期間が終わっても、地域の人たちが独自に活動を継続・拡大していることがJEEFの誇りですし、これまでの13年で関わった地域の人たちが、JEEFのサポートが終わった後でも元気に活動し、その進捗を報告しに来てくれることは、とても嬉しいことです。そのような経験が今のJEEFを形作っています。
野田 そのポリシーの影響か、私もこの半年で「これは本当に住民が望んでいることか」という問いを常に持つくせがつきました。
さて、インタビューは以上です!ありがとうございました。
2016年1、2月号
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