機関誌「地球のこども」 Child of the earth

SDGsを活用し地域活性化〜地方自治体からSDGsへのアプローチ〜 2018.06.08

文:蓑島 豪(北海道下川町)

森林資源活用で持続可能な地域社会の実現を

下川町は、北海道北部に位置する人口約3千4百人の小規模自治体ですが、町の面積は東京23区と同等で、このうち森林が88%を占め、古くから森林資源を活用したまちづくりを行っています。

特に、2007年に施行した、下川町自治基本条例に「持続可能な地域社会の実現を目指す」ことを位置付け、政府から環境モデル都市(2008年)、環境未来都市(2011年)の選定を受けるなど、目指す姿の実現に向けた取組みを進めています。この推進に当っては、SDGsと共通する、経済・社会・環境の3領域の価値創造、統合的解決をコンセプトとしています。具体的には、この3領域で下記の取り組みを進めてきました。

経済・社会・環境の好循環により持続可能な地域社会を創る

社会領域

集落再生などによる超高齢化対応社会創造

バイオマス熱を核としたコンパクトなまちづくりを進めています。例えば、一の橋バイオビレッジ(集落再生モデル)では、①地域熱供給システムを中心に高性能集住住宅や地域食堂を整備し、健康的で快適な住環境づくりと、エネルギーコストを低減。②バイオマス熱を利用した新たな産業をつくり、持続可能な集落づくりを進めています。

環境領域

森林バイオマス活用による地域エネルギー自給と低炭素化

森林施業で発生する未利用の林地残材などを森林バイオマス原料としてエネルギー自給を推進しています。現在は、11基の木質バイオマスボイラから30の施設へ熱供給を行い、低炭素な社会づくりを進めています。

経済領域

森林資源を余すことなく使う森林総合産業の構築

森林資源を最大限、最大効率で活用することを基本としています。例えば、町有林で毎年50‌haの植林を行い、60年間育て、伐採し、繰り返す循環型森林経営システムを確立。また、FSC森林管理認証(国際的な森林認証)を北海道で初めて取得するなど、適切な環境配慮のもとに森林管理と木材生産を実施しています。

木材加工では、廃棄物をできるだけ出さないゼロエミッションに取り組みながら、森林の多面的な機能を活かした環境教育や、森林セルフケアなどの森林サービス業といった新たな価値創造がなされています。

その結果、近年は人口減少が緩やかになり、最近5カ年では社会動態人口が転入超過の年も散見され、地域熱エネルギー自給率は49%に到達、個人住民税も増加傾向にあるなど、小さいながらも持続可能な地域社会の「芽」が発現しています。

また、この取組みと実績が評価をされ、2017年12月に「第1回ジャパンSDGsアワード」のSDGs推進本部長(内閣総理大臣)賞を受賞したところです。

SDGsを活用して地域活性化

国内では地方創生、国際ではSDGsといった新たな社会潮流が生まれ、とりわけSDGsは世界共通言語ともいわれています。地域内外の多様な主体(人・都市・企業など)を結び付けることなどに有効であり、地域活性化のツールとして取り入れ、レベルアップをしていく考えです。

具体的には、現在、SDGsを取り入れた自治体政策体系づくりに着手していますが、バックキャスティングの考え方で、「2030年における下川町のありたい姿(ビジョン)」を描き、この実現のための計画(総合計画・SDGs未来都市計画など)を策定し具現化のための事業を位置付け実行していく考えです。

2030年における下川町のありたい姿を描く。地域ステークホルダーを中心に策定。

 

そして下川町が目指す「持続可能な地域社会」を実現し、国内外の都市や地域へ波及展開していくことが、SDGs、地方創生への寄与につながると考えています。

蓑島 豪(みのしま たけし)

1993年下川町入庁。2015年総務課企画財政グループにて「下川町まち・ひと・しごと創生総合戦略」策定を担当。2016~現在 環境未来都市推進課SDGs推進戦略室にてSDGs、環境未来都市、地方創生を担当している。

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