気候変動で 変わってしまうかも!?季節や 自然のあり様
- 2018/12/07
- カテゴリー:クリスマスの景色が変わる?生き物の変化と気候変動を知る。, 特集

文:市川 大悟(公益財団法人世界自然保護基金ジャパン)
そろそろ冬の訪れを感じる季節がやってきました。もう1か月もすれば、多くの方が楽しみにするクリスマスもやってきます。
「冬」のイベントであるクリスマスに重ねて思い描く季節感は、どのようなものでしょうか。冷たい透き通った空気が醸し出す荘厳な雰囲気や、雪の降る中でのホワイトクリスマスをイメージされる方も少なくないのでは?
暖かいクリスマス?
春夏秋冬の暦に紐づくイベントは、その季節感とセットで連想されることが多いと思いますが、将来そのイメージは大きく変わるかもしれません。気候変動(地球温暖化)の進行により、私たちを取り巻く環境が変わり始めているからです。
気象庁によると日本では、冬(12~2月)の平均気温が100年あたりで約1.1度上昇しています(※1)。そして、冬を感じさせる霜の降りる「冬日」(日最低気温が0度未満になる日)は、過去80年以上(気象庁統計の1931~2016年)の間に10年あたり2.1日の割合で減少しています(※2)。今後、さらに暖かくなっていけば、ますます「冬らしさ」を目の当たりにする機会が減ってしまうかもしれません。
例えば
いま深刻化している気候変動の問題について、私たちの社会が十分な対処を講じない場合、今世紀末には世界では今より最大4度程度(※3)、日本では最大5度以上の気温上昇が予想されています(※2)。もし、日本で5度程度の気温上昇が起きた場合、本州日本海側を中心に、多くの地域で年降雪量が減少すると予測されています
( ※図1)。
ちなみに、クリスマスと言えばサンタクロースですが、そのサンタクロースで有名な北欧諸国も例外ではありません。それは、今後予想される気温上昇について、特に緯度の高い地域での上昇幅が相対的に高くなると言われているからです。
我々が抱く季節感のこうした変化は、もちろん冬だけではありません。本稿が掲載される秋の時分についても変化が見られます。秋の代名詞とも言える紅葉狩りですが、その見ごろは徐々に後ろ倒しになっています。1953年~2016年までの約60年間に、カエデの紅葉日は、およそ18日程度(2.9日╱10年)遅くなっていることが、気象庁から示されています。
ひょっとすると、今から数十年後には、クリスマスの時期に紅葉が見ごろという季節感が当たり前になるのかもしれません。
(※1) 気象庁,日本の季節平均気温
(※2)環境省ほか,気候変動の観測・予測及び影響評価統合レポート2018
(※3)IPCC,AR5 WG1 SPM
気候変動の影響は動物にも
このように木々の生態が変わるように、気候変動は生き物にも影響を与えてしまうことが懸念されています。その影響は決して小さなものではありません。例えば、2018年にWWF UKが発表した、気候変動が生物多様性に与える影響を予測したレポートでは、気温上昇が最も進んでしまった場合(4.5度程度)の影響を予測しています(※4)。これによれば、世界の重要な保全地域(WWFの定める35地域)で、約50%もの生物種に絶滅の可能性があることを示しています。
(※4) WWF UK,Wildlife in the warming world
こうした気候変動の影響はすでに現れています。IUCN(国際自然保護連合)によれば、現在、絶滅の危機に瀕している種のうち、温暖化の影響を受けている種の割合は全体の約1割に、そして最も割合の高い鳥類では全体の33%にも上ることが分かっています(2017年8月確認時点)。温暖化の影響を受ける動物としては、まずホッキョクグマをイメージされる方が多いと思いますが、実は、鳥類が少なくない被害者となっていることが分かります(※図2)。
クリスマスにこそ 考えてみよう
もうじき来るクリスマスは、多くの物が行き交い、消費とともに環境への負荷も高くなる時期です。過度な消費は、エネルギー消費の増加、排出の増加につながり、巡り巡って気候変動を加速させ、ひいては季節の在り方だけでなく、生き物への影響にもつながります。
大げさかもしれませんが、こうしたことを、消費の多くなる時期だからこそ、あらためて考えてみることが重要なのではないでしょうか。
2018年11、12月号
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