機関誌「地球のこども」 Child of the earth

森が育てる子どもたち 2017.12.06

【事業名】第13回 2017王子の森・自然学校
【実施期間】2017年8月1日~25日の間で4回(台風のため1回中止)
【実施地】北海道苫小牧市、栃木県日光市、静岡県富士宮市、宮崎県日南市
【主催】王子ホールディングス(株)、JEEF

JEEFが行う森の活動のひとつ「王子の森自然学校」。小学4年生~中学3年生を対象に、製紙会社である王子ホールディングス(株)と共催している夏休み子どもキャンプです。

「王子の森自然学校」は北海道、栃木、静岡、広島、宮崎の5ヶ所で開催し(一部隔年開催)、その地域の子どもたちや、都会育ちで自然遊びに慣れていない子が、はじめましてから一緒に2泊3日を過ごします。

子どもたちの様子を見ていて思うのは、たった3日間でも、子どもたちにとっては大冒険ということ。朝から夜まで森にいるからこそ、出会える瞬間もあります。

森は「先生」

北海道で、羽化直後の蝶と巡り会いました。ベンチの影に生えた草に、羽を下にしてぶら下がっていたのです。空っぽになった蛹と一緒に。

そのことに気づいた子どもたちは、目を爛々と輝かせてその様子を見つめていました。人間に囲まれているのに飛んで逃げないことを不思議に思う子(翅を乾かしているんだよ、とスタッフに教えてもらっていました)、持っていたメモ帳にスケッチする子、ただただ蝶の様子を飽きもせずじーーーっと見つめ続ける子(まばたき忘れていないかな? と心配になるほど)。

 

王子ホールディングスの社有林で間伐体験をすると、切り倒した木の切断面を、大人が教えなくても五感を使って観察し、口々に気づいたことを教えてくれます。冷たい、濡れた、ギザギザ、木くずがたくさん出た、切り株が椅子みたい、「年輪数えたら10才だから、ぼくと同じ年だ!」などなど。

思い思いのかたちで森と向き合っている子どもたちの様子を見ているのは、いつも面白い。気づけば、初日に会った時とは顔つきがまったく違っています。森という場そのものが、きっと子どもたちにとっては「先生」なのでしょう。勉強とは異なる新しい気づきを自ら得て、当たり前が実は当たり前でないことを知り、疑問を見つけ、考え、挑戦するチャンスを豊富に与えてくれます。

体験したことを「自分事」に

開催後、保護者と子どもたちにアンケートをお願いしています。

  • 夜の星空や虫の音がこんなにきれいに聞こえる、見られることをはじめて知りました。
  • 見本で木こりさんが木を切ってくれ、それがたおれた時、地ひびきがしました。重くて、中がつまっていたんだなと思いました。

「ウリみたいな匂いがする!」

「どの葉っぱが綺麗にスタンプできるかな?」

 

子どもたちは発見したこと、体で感じたことを書いてくれます。また森の活動をしていてよくあるのが、木を切る=悪いこと(環境破壊)と思っている子どもがいること。でも、人間が手を入れて木や下草を切ってあげることで元気になる森があることも、このキャンプで学んでくれます。それを子どもたちが帰ってから保護者に語ってくれたと、アンケートには多く書かれています。

保護者からは、「まつぼっくりを濡らすと閉じることを子どもが知り、帰ってきてから家族に教えてみんなでびっくりした」というエピソードを書いて下さった方がいらっしゃいました。また、この3日間で学んだことを自由研究にまとめたという報告も、事務局には届きます。

そうやって、参加した子がその場だけでなく森で感じた「びっくり」や「気づき」を持ち帰り、ふりかえって、周りの人に伝えたいと思う。その気持ちが、環境教育ではとても大切だと考えています。

「王子の森自然学校」の最終日は製紙工場を見学し、自分たちが3日間を過ごした森で育った木が、紙になるまでを学びます。森のめぐみが、私たちの暮らしを支えてくれている。そのことを実感した子どもたちが、これからどのように成長していってくれるのか、あるいは伝えていってくれるのか。今後がとても楽しみです。

文:垂水恵美子(事業部コーディネーター)

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