地域への「誇り」と「愛着」を育てる(ヨルダン)
- 2017/02/12
- カテゴリー:worldexpress

文:橋本 卓道
サルトの町中を歩いていると、良くそう声をかけられる。ヨルダン流おもてなしの文化と伝統的建造物が立ち並ぶ古く歴史的な町並みが特徴なのが、古都サルト。首都アンマンから西へ30キロ、人口およそ15万人、ぶどうやオリーブなどの果樹栽培が盛んで、緑が豊かな農業地帯。サルトは、交易の要所として19世紀後半から20世紀初頭にかけて栄えた町だ。

サルトのゴミ問題
伝統的な町並みが美しいサルトだが、その陰で空き家とゴミ問題を抱えている。サルトには650を超える伝統的建造物が登録されているが、その内、約半分は空き家である。これらの空き家は、所有者による管理が行き届いておらず、ゴミ溜まりと化している。集積したゴミは、ねずみや虫が増える要因になることや、ゴミを燃やす、もしくは自然発火によって火事が発生し、建造物に深刻なダメージを与えることがある。
なぜゴミのポイ捨てをしてしまうか?
まず一般論として、ヨルダンではゴミをポイ捨てすることは悪いことだと思われていない、ということがある。
例えば、路上で紙コップのコーヒーを買って飲んだら、飲みかけをその辺りに放置する、もしくは路上に放り投げるのが普通である。
そのゴミはやがて、市町村が雇った清掃員のおじさんが箒とバケツを持って掃除してくれるのである。ポイ捨てすることは彼らの仕事を作り出している、という考え方さえある。

市役所職員、JICA、大学生ボランティアによる空き家の清掃活動
地域への「誇り」と「愛着」を育てる
筆者は、環境教育隊員としてサルト教育局に赴任し、主に小・中・高校で環境をテーマに巡回授業を行っていた。そこで「町への誇りや愛着が育てば、自然と町を奇麗にしていこう、奇麗な町を未来へ残そう、という意識が生まれるのではないか」と考えた。そもそも、地域の人たちはサルト人であることに誇りを持ち、自分たちの町に愛着を持っている。歴史と伝統があるからこそ、こういった意識は恐らくヨルダンの他の町よりも強い。言い方は悪いが、そこを上手く利用して伸ばすことで、環境教育につなげられるのではと思った。

博物館前の広場でソーラン節を披露するJICAボランティア。
スタッフとして参加してくれた館内案内役の中学生チーム、人形劇の小学生チーム、ダンスチーム、博物館スタッフ、地元大学生、JICAボランティアなど、それぞれが楽しみながら役割を担ってくれていたことが、主催者としては一番嬉しかった。
サルト歴史博物館「オープンデイ」
町の中心部にサルト歴史博物館はある。ここでは歴史をはじめ、教育や建築などサルトの暮らしを総合的に紹介している。この博物館スタッフと協力して「オープンデイ」という、サルトと日本それぞれの文化紹介や体験型アクティビティを織り交ぜた国際交流イベントを行った。
目的は、地域の人たちが自分たちでは気づかなかった町の魅力や価値を再発見すること、また日本人に「イイネ」と言ってもらうことで自信を持つこと、であった。
また、博物館のアピールにもなるように、町の中心にある広場を使って地域住民を巻き込む工夫をした。その結果、目標の150人を超える来場者を迎えることができた。このイベントの他にも、地元中学生を対象にした「未来のまちに残したいもの」を考えるワークショップ、高校生を対象にしたカメラワークショップ、地域住民と日本人が交流しながら伝統的ボードゲームで遊ぶイベントなどを行った。
たくさんの人が協力してくれたお蔭で、少しずつだが、地域を盛り上げることができた。最終的に、自分の好きな町を、大切にしたい、守っていきたい、と思ってくれたら嬉しい。

地元のおじいさん指導のもと、伝統的ボードゲームの「マンカラ」で遊ぶ
2017年1、2月号
- 充実感、達成感、感動いっぱいの3日間!
- ミーティング だけじゃないよ!清里高原のお楽しみ 清里ミーティング30th
- 清里ミーティングの次の一歩 清里ミーティング30thコラム:最終回
- マングローブ再生とマングローブエビの伝統的加工技術の促進による、持続的な自然資源の利用を目指して
- 受講生からの声
- パート2:バングラデシュ現地からの環境レポート第4回 〜小学生・中学生が描くスンダルバンスの 生物多様性編〜
- 地域への「誇り」と「愛着」を育てる(ヨルダン)
- どんどん真似してほしい!清里ミーティングのつながるための9つの工夫
- 参加者に聞きました「次の一歩は?」 清里ミーティング30th
- 考えるっておもしろいかも!?パート3:第1回 かもの想い
- 全体会で 記念イベントにチャレンジ 清里ミーティング30th
カテゴリー
- worldexpress (13)
- 事業レポート (79)
- GEMS (2)
- JICA草の根技術協力事業 ブータン王国ハにおける地域に根ざした持続可能な観光開発と人材育成プロジェクト (6)
- JICA草の根技術協力事業 ブータン王国ポブジカにおける地域に根ざした持続可能な観光の開発 (6)
- NEC森の人づくり講座 (2)
- SAVE JAPANプロジェクト (1)
- インドネシア (6)
- カンボジアにおけるオオヅル及び生息地の保全に関する環境教育・普及啓発事業 (1)
- きのこたけのこ里山学校 (2)
- ハイフォン市都市環境整備にかかる環境教育・普及啓発プロジェクト (3)
- バングラデシュ国における事業 (18)
- 企業の人材育成事業 (1)
- 市民の市民のための環境公開講座 (4)
- 日本の環境を守る 若武者育成塾 (7)
- 東京シニア自然大学 専科 (2)
- 東京シニア自然大学 本科 (1)
- 清里ミーティング (3)
- 王子の森自然学校 (2)
- 人が育つ場づくり (5)
- 国際事業コラム (24)
- 地域の課題解決あの人に聞きました! (8)
- 寒さを楽しむ。温もりを感じる。 (1)
- 小さなサスティナブルのカケラ (4)
- 投稿 (4)
- 次世代のホープ達 (3)
- 清里ミーティング30thコラム (1)
- 特集 (131)
- 「伝える」ちから (3)
- 「未来を豊かに」を仕事にする (5)
- 「食」をとおしていのちをつたえる (3)
- 2020年までにチェックしたい9つのサスティナブル・トピック (3)
- esdユネスコ世界会議を終えて (4)
- JEEF25周年 私を形づくっている自然の原体験 (3)
- SDGs×教育 (3)
- アクティブラーニングってなに? (3)
- あなたの買い物が社会を変える (3)
- いま泊まりたい“学べる宿” (3)
- クリスマスの景色が変わる?生き物の変化と気候変動を知る。 (3)
- さあ! 2枚目の名刺をもとう (3)
- サイエンスと環境教育 (1)
- シニアからの環境教育 (2)
- どうする? サスティナブルな洗濯 (3)
- メディアを使った間接コミュニケーション (3)
- もうすぐ春がやってくる! 写真で伝えるセンス・オブ・ワンダー (1)
- 人と環境をつなぐ「花」のおはなし (3)
- 人気アウトドアメーカーは どんな環境の取り組みをしているの? (2)
- 今、子どもに向けたワークショップが熱い! (2)
- 今年こそ、エコツアーに行こう! (6)
- 今年こそ資格をとろう!自然体験型環境教育の資格・認定 (1)
- 地域を動かす移住者たち (3)
- 変わる!プラスチックの使い方 (3)
- 外であそぼう! (4)
- 夫婦で森に生きる (3)
- 子どもたちの自立を育むコミュニケーション (3)
- 学校で有効な環境教育的教育手法 (3)
- 市区町村の都市型環境教育のとりくみ「水」「森」「施設」 (3)
- 日中韓の環境教育の今 (3)
- 日本ならではのSDGsって? (4)
- 海の環境問題と環境教育 (3)
- 清里ミーティング30th (5)
- 環境教育✖️フェス (4)
- 環境教育って効果があるの? (2)
- 環境教育施設としての動物園・水族館 (3)
- 自然を感じる服 (3)
- 自然学校でラーケーション&ワーケーションしよう! (1)
- 自然学校の今 (7)
- 遊ぶ、学ぶ、サステナブる。 (1)
- 里山イニシアチブ 野生動物と向き合う (1)
- 食とエネルギー (3)
- 食べ物を育てる×教育 (2)
- 食品ロスから環境を考える (3)
- 理事コラム (11)
- 環境教育のものさし (7)
- 考えるっておもしろいかも!? (31)
- 超大 狩猟免許をとる! (3)
- 鈴木みきの山便り (5)