機関誌「地球のこども」 Child of the earth

わたしたちができること 〜エシカルな選択が未来を変える〜 2018.02.06

文:末吉 里花(一般社団法人エシカル協会)

エシカルってなに?

皆さんは「エシカル」という言葉を聞いたことがありますか? 「エシカル」 とは、

多くの人たちが正しいと思う「エシカル(倫理的)」な消費やライフスタイル

のことです。ここ最近日本でも「エシカル消費」が注目され始めています。今、世界の緊急課題として、貧困、人権、気候変動の3つが挙げられます。これらの課題を同時に解決していくために、人や社会、地球環境に配慮した倫理的に正しい消費を行う「エシカル」という概念が有効と言われているからです。

日本においても、消費者庁が2015年5月から2年かけて「『倫理的消費』調査研究会」を開催し、この中でエシカル消費の枠組みづくりが行われました。エシカル消費は間口が広く、「エシカル」という大きな傘の下「フェアトレード」を筆頭に「オーガニック」や「地産地消」「障がい者の支援につながる商品」「応援消費」「伝統工芸」「寄付つき商品」など幅広い消費の形があります。

そもそもなぜ「エシカル消費」は必要なの?

それは不公正な世界の現状があるからです。

皆さんは、普段自分が着ている洋服が、どこで、誰が、どのように作っているかわかりますか? おそらくほとんどの方は知らないでしょう。なぜなら、私たち消費者は製品を手にとっても、その裏側にある情報をほとんど受け取れないからです。ではその裏側で人や環境を犠牲にするような問題が起きていたら? 私たちは知らない間に、「買う」という行為を通じて、そういった問題に加担しているかもしれない危険性があります。

私たちは日々なんらかの消費をして生活をしていますが、洋服の原料となるコットンやコーヒー、紅茶、チョコレートの原料となるカカオなど、多くのものは途上国で作られています。その生産背景には、労働搾取や児童労働、環境破壊といった深刻な問題が潜んでいます。

2013年4月に起きたバングラデシュの縫製工場ラナプラザの崩壊事故では、約1100人以上が犠牲になりました。ここでは主に、私たち先進国の消費者が安いといって好んで購入するファストファッションのブランドや、誰もが知っているグローバルなアパレルブランドの商品が作られていました。

私たち消費者が積極的に求める安い商品の裏には、弱い立場にある途上国の生産者の犠牲があるといっても過言ではありません。日常的に多くの洋服を消費している私たちにとって、こうした現実は決して遠い世界の問題ではないのです。

私たちにできることは?

一方で日本に住む私たちは、どのような関わり方でエシカル消費を推進していけばよいのでしょうか。私たち全員に共通することは、消費者であるということ。毎日なんらかの消費のために大切なお金を使っています。企業にとって消費者の存在は無視できず、私たち消費者が何を求めるかによって、企業の生産のあり方が左右されるはずです。

そう考えたとき、私たち消費者が持つ力は絶大であり、それぞれが「誰が、どこで、どうやって、どのように作った製品か」を意識しながら買い物をすることが重要です。フェアトレードやオーガニックコットン、持続可能な森林認証や漁業の認証ラベルを目印に購入すれば、消費者にとってもわかりやすいでしょう。また、企業やスーパーに、「フェアトレード商品は置かないのか?」「この製品の生産過程を知りたい」と掛け合ってみるのも効果があります。

大手スーパーのイオンはフェアトレードの商品を販売するリーディングカンパニーとも言えますが、実は「フェアトレードを活用して、イオンの店舗をより多くの人が気軽に国際貢献に参加できる場にしてもらえませんか?」というたった一人の主婦の声から取り組みが始まりました。毎日の消費行動は、個人的な営みにとどまりません。人や環境や社会、ひいては未来にも影響を与えていることを一人ひとりが自覚しながら生活することで、社会を変えていくことができるのです。

すべてのモノをエシカルに切り替えることは誰にもできません。でも、自分が普段お金をかけたいと思う分野のものから、エシカルな選択をしていく、という方法もあります。

写真提供/ピープルツリー

 

5枚買っていたTシャツのうち1枚をオーガニックコットンにしてみる、いつもの1杯をフェアトレードのコーヒーにしてみる、地元の農家さんから直接野菜を購入してみる、など小さなことから始めてみてください。きっと自分にとっても新たな発見や喜びがあるはずです。毎日を楽しみながら、「私にいい」と「世界にいい」をつなげていってほしいです。

エシカルとは「エいきょうを シっかりと カんがえル」こと。エシカルとは、見えないものを見る想像力を育むことです。また古くからの日本人が大切にしてきた「おたがいさま」、「おかげさま」、「もったいない」といった精神性と親和性が高く、私たち日本人こそ世界にエシカルのマインドを伝える力を持っているのです。

末吉 里花(すえよし りか)

一般社団法人エシカル協会代表理事。TBS系『世界ふしぎ発見!』のミステリーハンターとして世界各地を旅した経験を持つ。現在はフェアトレードやエシカルを中心に活動を展開。著書に『祈る子どもたち』(太田出版)。新刊『はじめてのエシカル』(山川出版社)。消費者庁「倫理的消費」調査研究会委員(2015.5〜2017.3)、東京都消費生活対策審議会委員、日本エシカル推進協議会理事、NPO法人FTSN(Fair Trade Students Network)関東顧問、日本サステナブル・ラベル協会理事

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