機関誌「地球のこども」 Child of the earth

パート2:バングラデシュ現地からの環境レポート第3回 〜現地NGOが考える ごみ問題解決に向けての環境教育活動 編〜 2016.12.17

写真:クルナ市の街中にある集積場周辺

第3回目は、同国が直面するごみの課題やその解決へ向けて必要な環境教育の活動内容についてを、現地のNGOによるワークショップの結果に基づいて報告します。

一般的な廃棄物の課題

バングラデシュでは、街のいたる所ろでごみのポイ捨てや不法な投棄が見られます。これは、私の所感ですが、この国の人々は街の美化に努めるという意識がまだ低く、地域の清掃は市の職員が行うもので、住民同士が協力して清掃するという考え方は少ないのが現状だと思います。バングラデシュにおける主要な廃棄物管理の問題は、下記の4つが挙げられます。

  1. 廃棄物政策や法制度の不備
  2. 脆弱な財政基盤による廃棄物処理に関わる機材の不足
  3. 廃棄物管理に関わる市、住民やNGO等とのコミュニケーションや連携が不十分
  4. 廃棄物管理、公衆衛生等を含む環境教育(ごみ教育)が十分に行われていない

このように、政策、技術や教育に関する視点が全般的に不足しており、お互いの協力による横断的な廃棄物管理が十分に行われていません。特に、教育の視点から見ると、学校、家庭や地域社会でごみ問題を学習する機会が殆どないため、住民の意識が向上しない要因の一つとなっています。

今回は、現地の環境NGOでJEEFの協働先であるバングラデシュ環境開発協会(※以下、BEDS)が廃棄物教育をテーマとしたワークショップを職員同士で開催し、そこから抽出された結果を中心に報告します。

※バングラデシュ環境開発協会(Bangladesh Environment and Development Society)

現地NGOのBEDS職員同士によるワークショップ

クルナ市は人口約150万人、国内では3番目に大きい都市です。地域の商工業の中心地ですが、ここでも上述した1~4の廃棄物管理に関わる課題を抱えています。

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BEDS職員同士によるワークショップでは、「地域社会を対象として、どのような環境教育のやり方を導入すれば、廃棄物管理の問題を解決へ導けるのか」をテーマに意見交換(グループ毎)が行われました。集約された主な意見は次の通りです。

ワークショップでの主な意見

  • エコバックの使用やビニール類は利用しない等、ごみ削減に焦点を当てたプログラムの導入。
  • ごみに関わる人たちが連携した地域における定期的な清掃活動の実施。(地域住民、学校、企業、NGO、大学等の専門家、ごみ回収人、市役所等)
  • カードゲームや体を動かしてごみ問題を学習できる体験型の環境教育教材やプログラムの開発・実施。
  • ごみ拾い競争やごみに関わる絵画コンテスト等を導入した環境イベントの定期的な開催。
  • ごみ管理をモニタリングする地域住民による環境保全グループの結成。
  • ごみポイ捨て禁止の看板設置。
  • コミュニティ会議で、地域住民がごみのポイ捨て禁止の周知徹底を図るよう働きかける。
  • 政治的な力のあるリーダーと定期的な意見交換を行い、廃棄物政策レベルで環境教育の重要性をアピールする。

ワークショップの結果から見えるもの

ワークショップの結果から言えることは、廃棄物管理に関わる様々な関係者を巻込んだ、廃棄物教育導入の重要性です。また、ごみというものを通じて楽しむことのできる体験型のコンテスト・イベントの要素を盛込む必要性や、住民が廃棄物管理に関してお互いに働きかけるための組織化やコミュニケーションをとることも不可欠な取組みの一つと言えます。

ごみと言うと、どうしても汚いイメージがあり、あまり関わりたくないというのが人間誰しも感じることではあります。しかし、ごみの排出は私たちの現代生活において必然的に生じるものであり、逃れることができない地域の環境課題の一つです。住民がごみ問題に対して積極的に関わっていけるよう、NGOはそのプラットホームを関係者と連携し、構築する役目を担っていく必要があると思います。

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佐藤秀樹(国際事業部チーフコンサルタント)

JICA青年海外協力隊員(派遣国:エクアドル、職種: 野菜栽培)、農業・農村開発コンサルティング会社を経て2010年9月から、JEEFの国際事業部に勤務。主として、バングラデシュにおいて環境教育の技能を活用した住民による持続可能な地域づくりの活動を実施中。 バングラデシュにおける環境教育活動に関心がある・意見交換したい、インターンを考えている、一緒に協働プロジェクトを実施したい等がございましたら、お気軽にご相談下さい!お問い合わせはこちらから

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