3つのアプローチでバランスの良い環境教育(ケニア共和国)
- 2016/12/17
- カテゴリー:worldexpress

文:杉原 淳夫
ケニアの沿岸部にシモニという村があります。人口3千人程度の小さな村ですが、ここにキシテ・ムプングティ海洋公園・保護区という公園があります。この公園には美しいサンゴ礁と多種多様な海洋生物が生息しており、シモニという村の収入の多くがその観光業で占められています。
そんな美しい公園でも実は、観光客や漁具による海洋生物への悪影響、そしてゴミの散乱など多くの問題を抱えています。幸い公園を管理しているスタッフのモチベーションは高く、学校への出前授業を既に実施しており、次のステップへ進むための準備ができていました。そこへ派遣された私が実施したのは、ジョイ・パーマー氏とフィリプ・ニール氏の提唱した、次の「3つのアプローチ」を元に開発した「教育活動のパッケージ化」です。
- 3つのアプローチ
- 「環境についての教育」知の移転型・理論型
- 「環境のなかでの教育」感性学習・直接体験型
- 「環境のための教育」集団的行動・参加・対話型
この3つのアプローチをとることで、バランスのいい環境教育ができるというものです。私が提案したそれぞれのアプローチについて紹介します。
私が提案したパッケージのそれぞれのアプローチ
1「環境についての教育」
既に行われていた座学です。海洋公園の概要からはじまり、そこに生息する生きもの、そして漂流するゴミ等、できるだけ幅広い授業を効果的且つ継続的に行なえるように、教材のさらなる充実をはかり、また配属先スタッフの巻き込みにも注力しました。しかし、知識を詰め込む方法だけでは断片的な知識しか身につかず、自分で判断して行動できる人材を育成するには一歩及びません。

出前授業(環境についての教育)
そこで効果的なのが
2「環境のなかでの教育」
経験することでさらに学びたいという意欲を引き出し、さらに現状把握によって危機感の醸成もはかれます。
入園料が高いために公園に行ったことのある子どもは、地域でもごく僅かでした。そこでパークツアーを企画し、資金調達、安全確保、事前のスノーケリング練習などを含めた一連の実施体制を確立しました。

スノーケリング練習 (環境のなかでの教育)
3そして、最後のアプローチが最も実践的な「環境のための教育」
これは個々が、環境に対する自らの意見を持った状態で実施するのが理想的です。
例えば、ゴミ拾いという行為の意味を見い出しながら行えるように、パークツアーや砂浜でのスノーケリング練習と併せてするように構成しました。また、それらの経験を外部に向けて発信することが最終的に自分たちの資源を守ることにつながるとし、絵や音楽を使った情報発信も行ってきました。

ビーチクリーン(環境のための教育)
これらのアプローチをバランスよく行うことが私の提案でした。周辺の小学校を対象とし、順番に全6週にわたるパッケージ化された環境教育を実施していきます(図1参照)。これによる効果として次のことが期待できます。
- 単発ではない継続的な巡回指導の動機づけ、きっかけづくり
- 3つのアプローチによる相乗効果
- 複数回訪問による記憶の定着とふり返り機会の創出
- 学校及びコミュニティとの良好な関係の生成
持続が可能な学びの提案が、私の活動の最優先事項でした。しかし、このパッケージ、果たして現在も引き続き使われているのかは分からず、まだまだ試行錯誤が必要と考えています。少なくとも実施スタッフ、子どもたちの中に何か刻まれたものがあれば、と願うばかりです。
2016年11、12月
- 「高校生」から「若武者」へ
- 3つのアプローチでバランスの良い環境教育(ケニア共和国)
- 環境教育こそ数値で評価できない部分に光を
- パート2:バングラデシュ現地からの環境レポート第3回 〜現地NGOが考える ごみ問題解決に向けての環境教育活動 編〜
- はちみつ収集や商品開発技術向上による成果が出はじめました!
- 太陽光100%で音楽を届ける 中津川THE SOLAR BUDOKAN に参加してきました!
- 対談:なぜ進まない? 環境教育の効果測定
カテゴリー
- worldexpress (13)
- 事業レポート (79)
- GEMS (2)
- JICA草の根技術協力事業 ブータン王国ハにおける地域に根ざした持続可能な観光開発と人材育成プロジェクト (6)
- JICA草の根技術協力事業 ブータン王国ポブジカにおける地域に根ざした持続可能な観光の開発 (6)
- NEC森の人づくり講座 (2)
- SAVE JAPANプロジェクト (1)
- インドネシア (6)
- カンボジアにおけるオオヅル及び生息地の保全に関する環境教育・普及啓発事業 (1)
- きのこたけのこ里山学校 (2)
- ハイフォン市都市環境整備にかかる環境教育・普及啓発プロジェクト (3)
- バングラデシュ国における事業 (18)
- 企業の人材育成事業 (1)
- 市民の市民のための環境公開講座 (4)
- 日本の環境を守る 若武者育成塾 (7)
- 東京シニア自然大学 専科 (2)
- 東京シニア自然大学 本科 (1)
- 清里ミーティング (3)
- 王子の森自然学校 (2)
- 人が育つ場づくり (5)
- 国際事業コラム (24)
- 地域の課題解決あの人に聞きました! (8)
- 寒さを楽しむ。温もりを感じる。 (1)
- 小さなサスティナブルのカケラ (4)
- 投稿 (4)
- 次世代のホープ達 (3)
- 清里ミーティング30thコラム (1)
- 特集 (131)
- 「伝える」ちから (3)
- 「未来を豊かに」を仕事にする (5)
- 「食」をとおしていのちをつたえる (3)
- 2020年までにチェックしたい9つのサスティナブル・トピック (3)
- esdユネスコ世界会議を終えて (4)
- JEEF25周年 私を形づくっている自然の原体験 (3)
- SDGs×教育 (3)
- アクティブラーニングってなに? (3)
- あなたの買い物が社会を変える (3)
- いま泊まりたい“学べる宿” (3)
- クリスマスの景色が変わる?生き物の変化と気候変動を知る。 (3)
- さあ! 2枚目の名刺をもとう (3)
- サイエンスと環境教育 (1)
- シニアからの環境教育 (2)
- どうする? サスティナブルな洗濯 (3)
- メディアを使った間接コミュニケーション (3)
- もうすぐ春がやってくる! 写真で伝えるセンス・オブ・ワンダー (1)
- 人と環境をつなぐ「花」のおはなし (3)
- 人気アウトドアメーカーは どんな環境の取り組みをしているの? (2)
- 今、子どもに向けたワークショップが熱い! (2)
- 今年こそ、エコツアーに行こう! (6)
- 今年こそ資格をとろう!自然体験型環境教育の資格・認定 (1)
- 地域を動かす移住者たち (3)
- 変わる!プラスチックの使い方 (3)
- 外であそぼう! (4)
- 夫婦で森に生きる (3)
- 子どもたちの自立を育むコミュニケーション (3)
- 学校で有効な環境教育的教育手法 (3)
- 市区町村の都市型環境教育のとりくみ「水」「森」「施設」 (3)
- 日中韓の環境教育の今 (3)
- 日本ならではのSDGsって? (4)
- 海の環境問題と環境教育 (3)
- 清里ミーティング30th (5)
- 環境教育✖️フェス (4)
- 環境教育って効果があるの? (2)
- 環境教育施設としての動物園・水族館 (3)
- 自然を感じる服 (3)
- 自然学校でラーケーション&ワーケーションしよう! (1)
- 自然学校の今 (7)
- 遊ぶ、学ぶ、サステナブる。 (1)
- 里山イニシアチブ 野生動物と向き合う (1)
- 食とエネルギー (3)
- 食べ物を育てる×教育 (2)
- 食品ロスから環境を考える (3)
- 理事コラム (11)
- 環境教育のものさし (7)
- 考えるっておもしろいかも!? (31)
- 超大 狩猟免許をとる! (3)
- 鈴木みきの山便り (5)