考えるっておもしろいかも!? パート4:第1回 社会に貢献する学び
- 2018/04/16
- カテゴリー:考えるっておもしろいかも!?

文:鴨川光(ジャパンGEMSセンター研究員)
Q やる気がない子にどうかかわったらいいですか?
今回の質問は、大人向けのワークショップでよく聞かれる一つです。
やりたくないことを無理にやらせなくてもいいんじゃないかなぁと個人的には思うのですが、なかなかそう言っていられない場面もありますよね。では、そもそもどうして子どもたちのやる気が起きないのでしょう?
誰のために学ぶのか
僕は、何のために学ぶのかという目的意識が持ちにくいことが大きい理由の一つだと考えています。
みなさんも子どもの頃に経験されたかもしれませんが、「勉強するのは自分の将来のため」と言われることが日本では多いですよね。確かにその通りだと思います。しかし、往々にして子どもの頃は将来これが何につながるのかイメージが湧きにくいものです。その結果、「オレ別に困らないからいいし」というこれまた定番の台詞が出てきます。
GEMSのプログラムには、自分以外の誰かのために課題解決をする場面がたくさんあります。例えば、『ウーブレック』ではNASAの科学者から謎の宇宙物質の調査を依頼されるし、『食べ物で算数』ではメニューの値段設定に困っているレストランオーナーに算数の考え方を使って適正価格をアドバイスします。困っている人のために課題を解決するという設定は、子どもたちのモチベーションをぐっと高めてくれます。
「 困り感 」がある課題解決
僕はワークショップの中で子どもたちに課題を提示する際、この「困り感」を大切にしています。僕もわからないから知りたいんだとか、僕の友だちがどうしたらいいか困っているんだとか、この課題解決に協力してくれると、困っている誰かの助けになると最初に伝えるのです。
そうすると、子どもたちは「仕方ないなぁ」と言いながらも、一生懸命考えていろんなアイディアを出してくれます。なにより困っているのが自分自身ではないので、解決しきれなくても自分の評価が下がるわけではないと気楽に取り組めます。
逆に、「たかしくんが時速500mで3km離れた友だちの家に向かう時にかかる時間」などという「解かなくても誰も困らない問題」は、取り組む必要性が感じにくいもの。それなのに「自分のためにやりなさい」と言われ、しかもパーフェクトな回答を出さないと減点されるのでは釈然としませんよね。
学びのサイクルを意識したかかわり方
教育の目的は、個人の力を高めることで、その子の人生と社会が豊かになることです。特に持続可能な社会を意識するのであれば、自分が学んだことを社会に還元できる人材を育てたいところ。そうであれば、学ぶのは「自分のため」だけでなく、「困っている誰かのため」だよと伝えるのもありではないでしょうか。そうすることで社会に貢献できる力と共に、貢献したいという姿勢が育ちます。
そうやって誰かのために何度も試行錯誤した経験は、次第に自分の力として蓄えられていきます。人のためでも、ご褒美のためでも、もっとやりたいと思えるものがあれば学びは続いていきます。
そうして学びのサイクルが切れさえしなければ、いつか自分のために学びたいと思った時にその力を使うことができるのです。
子どもたちに 教える人としてではなく、課題解決の依頼主であり共に解決に臨む仲間としてかかわってみると、「やる気のない子」も重い腰を上げてくれるかもしれませんよ。
2018年3、4月号
- 考えるっておもしろいかも!? パート4:第1回 社会に貢献する学び
- 自由な発言で深める、環境教育への思い
- 高校生に負けてられない!
- ほしい未来をつくるために。届けたい想いをつづる、もうひとつの仕事。
- アジア湿地シンポジウム(AWS)に参加して
- パート3:開発途上地域(アジア)の地域デザイン第5回 〜家庭菜園の多面的機能を 活かした地域づくり〜
- 「道の駅」から始まる、小さな国の大きな一歩(ブータン王国)
- 狩猟 〜動物の命をいただく行為から学んだ 自然を大切に想う心〜
- 大阪の街をかけ抜ける
- 2枚目の名刺が生み出す3つの変化
カテゴリー
- worldexpress (13)
- 事業レポート (79)
- GEMS (2)
- JICA草の根技術協力事業 ブータン王国ハにおける地域に根ざした持続可能な観光開発と人材育成プロジェクト (6)
- JICA草の根技術協力事業 ブータン王国ポブジカにおける地域に根ざした持続可能な観光の開発 (6)
- NEC森の人づくり講座 (2)
- SAVE JAPANプロジェクト (1)
- インドネシア (6)
- カンボジアにおけるオオヅル及び生息地の保全に関する環境教育・普及啓発事業 (1)
- きのこたけのこ里山学校 (2)
- ハイフォン市都市環境整備にかかる環境教育・普及啓発プロジェクト (3)
- バングラデシュ国における事業 (18)
- 企業の人材育成事業 (1)
- 市民の市民のための環境公開講座 (4)
- 日本の環境を守る 若武者育成塾 (7)
- 東京シニア自然大学 専科 (2)
- 東京シニア自然大学 本科 (1)
- 清里ミーティング (3)
- 王子の森自然学校 (2)
- 人が育つ場づくり (5)
- 国際事業コラム (24)
- 地域の課題解決あの人に聞きました! (8)
- 寒さを楽しむ。温もりを感じる。 (1)
- 小さなサスティナブルのカケラ (4)
- 投稿 (4)
- 次世代のホープ達 (3)
- 清里ミーティング30thコラム (1)
- 特集 (131)
- 「伝える」ちから (3)
- 「未来を豊かに」を仕事にする (5)
- 「食」をとおしていのちをつたえる (3)
- 2020年までにチェックしたい9つのサスティナブル・トピック (3)
- esdユネスコ世界会議を終えて (4)
- JEEF25周年 私を形づくっている自然の原体験 (3)
- SDGs×教育 (3)
- アクティブラーニングってなに? (3)
- あなたの買い物が社会を変える (3)
- いま泊まりたい“学べる宿” (3)
- クリスマスの景色が変わる?生き物の変化と気候変動を知る。 (3)
- さあ! 2枚目の名刺をもとう (3)
- サイエンスと環境教育 (1)
- シニアからの環境教育 (2)
- どうする? サスティナブルな洗濯 (3)
- メディアを使った間接コミュニケーション (3)
- もうすぐ春がやってくる! 写真で伝えるセンス・オブ・ワンダー (1)
- 人と環境をつなぐ「花」のおはなし (3)
- 人気アウトドアメーカーは どんな環境の取り組みをしているの? (2)
- 今、子どもに向けたワークショップが熱い! (2)
- 今年こそ、エコツアーに行こう! (6)
- 今年こそ資格をとろう!自然体験型環境教育の資格・認定 (1)
- 地域を動かす移住者たち (3)
- 変わる!プラスチックの使い方 (3)
- 外であそぼう! (4)
- 夫婦で森に生きる (3)
- 子どもたちの自立を育むコミュニケーション (3)
- 学校で有効な環境教育的教育手法 (3)
- 市区町村の都市型環境教育のとりくみ「水」「森」「施設」 (3)
- 日中韓の環境教育の今 (3)
- 日本ならではのSDGsって? (4)
- 海の環境問題と環境教育 (3)
- 清里ミーティング30th (5)
- 環境教育✖️フェス (4)
- 環境教育って効果があるの? (2)
- 環境教育施設としての動物園・水族館 (3)
- 自然を感じる服 (3)
- 自然学校でラーケーション&ワーケーションしよう! (1)
- 自然学校の今 (7)
- 遊ぶ、学ぶ、サステナブる。 (1)
- 里山イニシアチブ 野生動物と向き合う (1)
- 食とエネルギー (3)
- 食べ物を育てる×教育 (2)
- 食品ロスから環境を考える (3)
- 理事コラム (11)
- 環境教育のものさし (7)
- 考えるっておもしろいかも!? (31)
- 超大 狩猟免許をとる! (3)
- 鈴木みきの山便り (5)