機関誌「地球のこども」 Child of the earth

ほしい未来をつくるために。届けたい想いをつづる、もうひとつの仕事。 2018.04.13

文:杉本 有紀 (Webメディアライター)

私は、東京都内でPR会社に勤務しながら、「greenz.jp」というウェブメディアでライターをしています。PRは「パブリック・リレーションズ(Public Relations)」の略で、社会との信頼関係を築くことを目的に、コミュニケーション戦略を設計したり、マスコミに情報を提供し、記事や番組で取り上げてもらえるようはたらきかけることが主な仕事です。一方、greenz.jpは、「ほしい未来はつくろう!」をコンセプトに2006年に創立した社会に役立つグッドアイデアを集めたウェブマガジン。ライターを始めたのは一昨年の熊本地震がきっかけでした。

もっと伝えるべきことがある

2016年4月、熊本地震が発生したちょうどその頃、転職を前に、約40日間の休暇があった私は、知人の紹介で、熊本地震復興支援プロジェクトの現地チームに加わりました。担当した仕事は、とくに被害が甚大だった益城町の被害状況を調べるアセスメント(調査)事業でした。約200名の調査員を募集し、被害エリアのマップを作成するなど全体運営を担い、3,000戸程の調査を終えました。

被災地では「休み」という概念がありません。慣れない連日の業務に1ヶ月を過ぎる頃には、もう起き上がれないほど疲労困憊。周囲は、東日本大震災でも活動経験があるスタッフばかりで、決断の速さや行政との連携の仕方、地元の方々と信頼関係の築き方など、会社員生活では得られない、初めて教わることばかりの40日間でした。

熊本地震での益城町被害状況アセスメント調査の様子

 

私が現地を離れる頃、まだ益城町の現状はひどいものでした。だまし絵のように電柱は傾き、見わたす限り家屋が倒壊しているような状態。東京に戻ってからもしばらくは自分の気持ちを言葉にできず、熊本のことが頭から離れませんでした。

 

熊本地震での益城町中心部の被害状況

 

日々ニュースに触れる中で、熊本地震の報道の裏側を知っていることもあり、もっとその先まで伝えるべきことがあるのに、と強く感じるようになりました。「東京の人が好きなニュースではなく、もっと生々しいまま、熊本地震の今を伝えたい」と。

そこで、greenzの編集部に寄稿を提案。あらためて現地での取材や撮影を重ね、熊本地震に関する記事を公開しました。そして、それを機に、greenzライターに。

greenz熊本地震記事

DOの肩書き、BEの肩書き

私は、小学生の頃から、なぜか地球の温暖化を本気で心配しているような子どもで、将来の夢は国連職員になることでした。ところが、大学で国際関係学を学んだものの、能力も努力も足りず、夢を追うことは早々に断念。新卒でNGOに就職することも考えましたが、社会経験のない自分はまず、スキルを身につけた方が良いと判断し、ベンチャー企業に就職しました。仕事が面白くなり、そのまま20代を駆け抜けて、イベントやPRなどのスキルを身につけました。それらの仕事を選んだ理由は、好きだからということはもちろん、いつか社会活動に役立てることができると考えたから。

最近出会った言葉に、「DOの肩書き、BEの肩書き」という言葉があります。
これは、greenz.jpの元編集長である兼松佳宏さんの言葉です。ほとんどの方は、自己紹介で勤めている会社や業務内容など「DOの肩書き」を名乗りますが、目に触れる仕事の根底には、それぞれの在り方=「BEの肩書き」があるはず。それは、自分が貢献できる価値の源となるはたらきのこと。

例えば、デザイナーが3人いたとして、1人のBEの部分は「冒険家」かもしれない。または「科学者」や「音楽家」かもしれません。BEが違えば、そのデザインの仕上がりはまったく違ったものになります。つまり、「DO×BE」が一人ひとりの個性を決めているのです。

「社会で弱い立場の人たちの役に立ちたい」これが私の「BE」ですが、必ずしもそれを実現できる仕事ばかりではなく、もちろんそれ以外の仕事から生まれる楽しさや出会いも大切にしています。PRもライターも、メッセージを伝え、人を動かすことが仕事であり、ふたつの仕事は通じています。greenz.jpで想いを伝えることが、私にとって、BEと直接つながる大事な時間なのです。
さて、みなさんにとってのBEの肩書きは何ですか?

杉本 有紀(すぎもと ゆき)

イベント運営会社を経て、PR業界に転職。社会に役立つグッドアイデアを集めたウェブマガジン「greenz.jp」ライターも務める。プライベートでは、タバコの代わりにシャボン玉のある暮らしを提案する「東京シャボン玉倶楽部」や、2016年に発生した熊本地震支援活動にも従事。

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