機関誌「地球のこども」 Child of the earth

環境教育のものさし第3回 評価はプログラムの未来への投資 2018.10.22

環境教育のものさし3

アンケートは最も身近な評価手法の一つです。私はアンケートを実施する際の質問項目や分析の仕方についてアドバイスを求められることがあります。しかし、どのように評価に活用するか、設計段階でイメージできていないものをよく見かけます。
今回のコラムでは、評価に使いやすいアンケートにするため、作成前に考えてほしい簡単な2つの質問を紹介します。

2つの問いで評価に使いやすいアンケートに

問い1:アンケートの対象者は誰か?

対象者=プログラム参加者と限定してしまいがちですが、他にも保護者や運営スタッフ、講師、支援者(資金提供者)など、プログラムの内容により様々な対象者が考えられます。

私が連続講座を実施した際、一緒に運営していた学生たちに毎回アンケートをとりました。それにより、評価をスムーズに改善へつなげられただけでなく、意見が反映されることに楽しさを感じた学生たちの参加意欲が増しました。

アンケート対象者を参加者に限定しないことで、副次的な効果もある例です。

問い2:アンケートをいつどのようにとるか?

例えば、プログラム中に記入の時間をとるのか、終了後に各自で記入してもらうのか、アンケートに関する説明をするのかどうかで回答や回収枚数が違ってきます。

私は約半年間の子ども向けプログラムを実施した際、保護者へのアンケートを用いて、プログラムによる子どもの日常の行動変容を評価する試みをしました。
保護者には毎回プログラムの目的や内容を手紙で渡し、子どもの言葉や様子に注目してもらいました。そして、プログラムの最終回に、保護者の見学の時間を設け、プログラム内でアンケートをとりました。

その結果、ほとんどの参加者の保護者からアンケートを回収でき、質問項目にも丁寧に答えてもらえました。また、測定することが難しいとされる、プログラムによる子どもの日常の発言や行動変化が、エピソード付きで記入されるなど、評価につなげやすいアンケートの回収ができました。

アンケートからつながる未来

実践者はプログラムの企画や運営に力を入れるあまり、アンケートによる評価にまで時間をかけられないと思いがちです。

しかし、評価はプログラムの未来への投資でもあります。質問項目を検討する前に、2つの問いかけを通して、アンケートをどう活用するのかシミュレーションしてみてください。

それにより、アンケートの質が高まり、プログラムの改善とスタッフの能力の向上、支援者の共感(資金調達)へとつながる評価のカギとなるでしょう。

正阿彌 崇子(しょうあみ たかこ)

龍谷大学政策学研究科修士課程修了。大阪YMCA高校非常勤講師。とよなかESDネットワーク理事。エコネット近畿理事。ジュゴン保護キャンペーンセンター国際担当。幼児からシニア、外国人研修生など、様々な環境教育プログラムの開発を行う。環境教育や環境政策の評価に関して2009年から仲間と共に調査、研究を行っている。

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