必要とする人に届けるしくみ 〜フードバンク多摩の活動〜
- 2018/08/17
- カテゴリー:特集, 食品ロスから環境を考える

文:松本 靖子(NPO法人 シェア・マインド)
食品ロス解消と同時に、困った時の駆け込み寺として機能する活動、「フードバンク」を実施するNPO法人シェア・マインドをご紹介します。
暮らしに困っている方のサポートを目指して立ち上げたNPO法人シェア・マインドは、東京都多摩市を中心に、『フードバンク多摩』を運営している。
フードバンクとは、企業や個人宅で持て余されている食糧を預かり、それを必要としている方からの問い合わせで、食糧を届ける活動を言う。国内のフードバンクは80か所以上にのぼり、自治体やNPO等が運営する。
活動開始のきっかけは、仕事に就けず、家族にも頼れず、お金が無い事で全てを失った当事者を目の当たりにしながら、人として何一つ支援できなかったことだ。
困っている方に届かないフードバンクというセーフティネット
フードバンクの存在を知り、支援の問い合わせに漕ぎつける事のできる方は幸運だと感じる。
現在、WEBサイト、街の掲示板・公民館へのチラシ設置でフードバンクの情報発信をしているが、活動を知らない方にとっては、フードバンクはこの世に存在しない事と同じだ。
そして『フードバンク』が存在するという情報を知っていても、どのように繋がってよいのか分からない方がまだまだ多い事を、活動の中で思い知らされた。
一方で、食品を余らせがちな方からも寄せられる、「フードバンクって何する所?」というご意見。時々、新聞やテレビ、ラジオ、雑誌でフードバンクの活動が取り上げられてはいても、まだまだ世間には浸透していないのだ。
誰でも利用できる「無料スーパー」
どうすれば知ってもらえるかと考える中、新聞記事で見かけたシドニーの『無料スーパー』。これは、食品ロスに繋がる物を集め店舗に陳列し、その店舗は誰でも利用してもよい。
このシステムとネーミングの強烈さに驚くと同時に、「これなら、多くの方に伝わるかもしれない。」と、多摩市で無料スーパーを月1回で開催してみることにした。
結果は想像以上で、この名称を知った方(お困りの方も、食品を余らせている方も)が、次々に会場に訪れ連絡をくださるようになった。毎月約50名の参加があり、メディア掲載時には約250名にご参加いただけた。そして、次のような嬉しい言葉をいただけたのだ。

月1回開催している「無料スーパー」。誰でも利用していいことが、直感的にわかるネーミングで、利用者が増えている。
無料スーパー利用者の声
- 暮らしに困っている方
- フードバンクは知っていた。でも、私くらいの困窮では、問い合わせをしてはいけないのかと思っていた。
- フードバンクを知らなかった。でも、無料スーパーだと、食べ物がタダで貰えるとわかる。助かる。
- 食品を余らせている方
- 今までは捨てるしかないと思っていたから心苦しかった。誰かに食べてもらえるなら嬉しい。
困っている方のための活動を、そして、社会で持て余されている物を活用するための活動を知ってもらえた、とても嬉しい反響だった。
遠方にお住まいの方からは「出張で無料スーパーを開いてくれないか」と多くのお問い合わせを頂いている。
これからフードバンクで実現したいこと
食べ物が大量に生産され、大量に捨てられること。それにも関わらず、食べ物が行き届かない方が増えていること。この現実を多くの方に知って頂かなくてはいけないと感じる。
今後は、これからの時代を担っていく子どもたちに対し、どのように食品ロス問題や食糧セーフティーネットの存在を伝えられるのか考えたい。また、多くの人たちと一緒に食品ロスを減らせるよう 、無料スーパーの規模を拡大していきたい。
読者の皆さま。食品ロス削減を心がけていても、仕方なく出てしまう時があります。そんな時は、フードバンクへ食品をご寄付ください。

食ロス活用の食堂で。八百屋さんなどから「明日、お店には並べられないけれど、まだまだ食べられるもの」を譲っていただきました。調理や配膳には子どもたちも参加してくれます。
2018年7、8月号
- 環境教育のものさし第2回 行動観察を用いた評価の実例
- 世界(開発途上地域)の食・農事情 第1回アンデス特有の恵みがもたらす多様な食材
- 地域の課題解決あの人に聞きました!Vol.1海苔養殖の歴史を通じてつなげたい「ふるさと」
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- 捨てないパン屋のつくり方
- 考えるっておもしろいかも!? パート4:第3回 関わり方で学びの質を高める
- 日本はもったいない大国!? 食品ロス問題の現状と私たちにできること
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