機関誌「地球のこども」

考えるっておもしろいかも!? パート4:第3回 関わり方で学びの質を高める

文:鴨川光(ジャパンGEMSセンター研究員)

Q 教育の場に、どうしてファシリテーションが必要なの?

学習者の学びを促進する関わり方(ファシリテーション)が教育の場でも注目を集めていますが、この質問には非常に多岐にわたる回答があるでしょう。前号で書いた、多様性を尊重した教育をするためというのも理由の一つです。

今回は、僕が最近特に感じているもう一つの理由について書いてみます。

「静的な課題」と「動的な課題」

僕は学習課題には「静的な課題」と「動的な課題」の2種類があると考えています。前者は、教科書や問題集に載っている練習問題のように、解いている途中で変化することがない固定的な課題。後者は、質問に答えたり、話し合ったりというように、状況に合わせて臨機応変な思考が求められるような課題です。

静的な課題は、何回か解くうちに慣れて解けるようになっていきます。一方、動的な課題は柔軟な思考力と発想力によって逐一対応しなければなりません。日本の子どもは、こういう課題が苦手だという調査結果があります。しかし、環境問題をはじめとする社会問題は常に動的なものです。

課題の「質」を変える発問

ファシリテーターとしての大切なスキルは、質問をして学習者の考えを広げたり、深めたりすることです。

学校の授業を想像してみましょう。先生が「教科書の問題を解いてみましょう」と課題を提示します。これは静的な課題です。

解き終わった子が「答えは〇〇です」と答えます。そこで先生が、「どうしてそう考えたの?」「解き方で工夫したところは?」などと質問を向けたとします。ここからが動的な課題になるのです。

ファシリテーションを使うことで、どの教科でも子どもたちの実践的な思考力や課題解決力を育てる状況がつくれます。

2014年のESDユネスコ世界会議で、教育者のファシリテーション能力の強化が重要であるという旨が提起されました。

SDGsの達成をはじめとする持続可能な社会をつくるためには、複雑に変化していく社会課題にアプローチできる人材の育成が不可欠です。

子どもたちの思考を常に動かしていけるようなファシリテーションを、これからの教育では大切にしていきたいですね。

2018年7、8月号

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