機関誌「地球のこども」 Child of the earth

poco a pocoそして環境教育は続く(エルサルバドル) 2017.06.06

文:森嶋 優理子(もりしま ゆりこ)

エルサルバドルってどんな国?

エルサルバドルという国をきいたことありますか? エルサルバドルはアメリカ大陸の細い部分に位置する中米の中でも一番小さな国です。エルサルバドル人は少し照れ屋でやさしい人々です。道を歩いていると知り合いでもそうでなくても「Salud(サルー)」と少し恥ずかしそうに声をかけてくれます。まじめで働き者の彼らは、中米の日本人と言われています。そんな国で2年間、環境教育活動をしてきました。

到着してまず驚いたのが道端に転がるごみです。途上国と言われる国ではよくあることですが、この国も例外ではなく、道を歩いている人、バスに乗っている人、大人から子どもまでいろんな人がごみを道端に捨てます。そのごみを回収する人はいないので、道端にはごみが転がっています。

そんな状況を見て、私の教師経験を生かし、学校を巡回して子どもたちに自然環境の大切さを理解してもらおうと同僚と環境教育の計画を立てました。

任地のごみ。雨期になるとごみ、生活排水、家畜の糞、雨水が混ざり不衛生。

任地のごみ。雨期になるとごみ、生活排水、家畜の糞、雨水が混ざり不衛生。

エルサルバドルでアクティブラーニング

エルサルバドルの学校の授業は、先生が教科書の内容を板書して、こどもがそれをノートに写すという、はっきり言って退屈なものです。

同僚と考えた環境教育の授業は、一方的に知識を提供するのではなく、子どもが自分で問題について考え、意見を持ち、他者と共有する、といういわゆるアクティブラーニングになるようにプログラムしました。こんなときどうする? といったケーススタディや、川が汚れていく様子を体験するアクティビティ等をとおして、自然環境の大切さについて考えてもらいました。

ワークショップの中で話し合い、グループで意見を出す。

ワークショップの中で話し合い、グループで意見を出す。

 

ワークショップのはじまり。日本の文化も紹介しているので、礼からはじまる。

ワークショップのはじまり。日本の文化も紹介しているので、礼からはじまる。

 

習慣化するポイ捨て

エルサルバドル人の生活の中で、ごみのポイ捨ては習慣化しています。それだけでなく、生活排水を川に直接流す、家畜の死体を川に捨てるなど、人々の生活は環境保護の観点から見たら問題だらけです。しかも、それが習慣化しているのです。

巡回授業やイベントで「自然環境を大切にしよう」と人々に伝えれば、当然「そうだよね、大切にしなきゃ」という反応が返ってきます。しかし、それがすぐに生活の中で行動に反映するかというと、習慣化しているので、なかなか難しいところがあります。

クリーンキャンペーンで地域のゴミ拾いをした後、お疲れさまのジュースを配布すると、飲み終わった缶が道端に捨てられていたということがよくあります。ワークショップが終わると、人々がまたポイ捨てするのを見て、「どうして? さっき一緒に考えたのに!」と悲しくなることもありました。

活動がうまくいかない! と嘆く私に、同僚は「poco a poco(少しずつ)」と言ってくれました。すぐに人々の行動が変わらなくても、「少しずつ続けることが大切」という大切なことを教えてくれました。

私が活動した、わずか2年間では人々の行動の変化は見ることはできませんでした。でも、エルサルバドルで人々の行動が変化するように、たくさんの仲間が活動していることが分かった2年間でした。

れからも「poco a poco」という大切なことを教えてくれた同僚や、「少しずつ」日々奮闘している仲間によって、エルサルバドルの人々の行動が変化していくことを信じています。

¡¡¡Buena suerte!!!

森嶋

森嶋 優理子(もりしま ゆりこ)

1987年生まれ。大学卒業後、メーカーに営業として2年間勤務。その後中学校理科教師として1年間勤務し、2013年9月より青年海外協力隊 環境教育隊員として中米のエルサルバドルで活動。帰国後はJICA国内協力員を経て、私立中高一貫校にて教員として勤務予定。

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