機関誌「地球のこども」

海辺の環境教育フォーラムと、その参加者による協働プロジェクト

文:古瀬 浩史(日本インタープリテーション協会

海辺の活動を盛り上げたい!

海辺の環境教育フォーラム」(以下海辺フォーラム)は、2001年に始まった海域の環境教育に関心を持つ人によるミーティングであり、同時に、協働や情報交換のネットワークでもあります。その活動の始まりは多くの環境教育系のミーティングがそうであるように、JEEFが実施してきた「清里ミーティング」に起源を求めることができます。

初期の清里ミーティングには、海系の活動に取り組む人の参加が少なかったことから、それを課題として感じていた有志が、海域の環境教育に特化したミーティングを企画して機運を盛り上げたい・・と考えたのです。環境教育を海と陸に分けることにはそれほど大きな意味はないのでしょうけれども、現場の状況には大きな違いがあります。

例えばエコツーリズムに代表される商業的な自然体験のプログラムは、海域や島嶼で先駆的な取り組みが多くある一方、学校教育の現場の取り組みでは海がテーマのものは多いとは言えません。関連する学問領域も陸域のそれとは違いがあります。これらのことから、海域の環境教育に関わる人が出会い、協働のきっかけを創ろうとする集まりにはニーズがあり、その結果今日まで続いてきたと言えます。

海辺フォーラムの他の特徴としては、実行委員会が毎回リセットされ、開催地や運営メンバーが一新されることが挙げられます。このやり方は継続性や効率などの点では課題があり、運営が洗練されていかないというマイナス面がありました。反面、開催地毎に特徴のあるプログラムが行われ、運営に関わる人の拡がりや、世代交代の点で大きな意義があったと考えられます。

2017年5月に、通算13回目となる海辺フォーラムが、千葉県南房総市で行われました。実行委員はほぼ全員が20歳代(唯一の例外の一人は10歳代!)という若さで、非常に活気のあるミーティングとなりました。もちろんベテラン世代もたくさん参加しました。

 

海のプログラムをアーカイブ化LAB to CLASS

今年の海辺フォーラムの中で報告された活動の一つに「LAB to CLASS」があります。これは海辺フォーラムに集う人たちによる協働プロジェクトの一つです。様々な団体や個人が実践してきた海に関する教育プログラムや、新たに開発したプログラムの手法をウェブ上に利用しやすい形でアーカイブし、教員や社会教育の指導者に利用してもらい、海洋に関する教育の機会を増やすことをねらっています。

これを主催する海の環境教育NPO bridgeは、もともとイルカやクジラをきっかけとした環境教育を実践する団体でしたが、現在は主に海辺フォーラムの人的ネットワークを活用して、様々な専門団体や研究者(Lab)のノウハウと現場(Class)を繋げることをコンセプトとした「LAB to CLASS」プロジェクトの事務局業務を担っています。サイトはまだ発展途上ではありますが、海域の環境教育に関心のある人にはぜひ訪れて欲しいサイトです。

日本全国みんなでつくるサンゴマップ

日本全国みんなでつくるサンゴマップ 

これもまた、海辺フォーラムの参加者が多数参加する協働プロジェクトです。気候変動の影響をいち早く受けると考えられているサンゴ礁生態系の現状を、市民参加調査によって把握しようとする活動です。2008年の国際サンゴ礁年を契機にスタートし、サンゴ礁に関する情報の収集に貢献してきました。

2015年から2016年にかけて世界中のサンゴ礁で大規模な白化現象が起き、沖縄でもたくさんのサンゴが死滅しました。2018年には10年ぶりとなる国際サンゴ礁年が予定されており、調査の再活発化やサイトのリニューアルについての議論が始まっています。

海はすべてつながっていて、海洋の生態系が生物たちのネットワークで成り立っているのと同じように、海の教育の分野もまた、人のネットワークの力を発揮して取り組んでいきたいと考えています。

 

古瀬 浩史(ふるせ こうじ)

インタープリテーションや海域の環境教育の普及を主要なテーマに、人材育成やプログラム開発を行っている。海辺の環境教育フォーラムの通年事務局を担当。帝京科学大学アニマルサイエンス学科教授、日本インタープリテーション協会代表理事。

2017年9、10月号

地球のこども2017年9月号

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