機関誌「地球のこども」

伝統と自然が息づく国ブータン

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文:松尾 茜(JEEF国際事業部 ブータン駐在員)

GNHとエコツーリズム

中国とインドに挟まれたヒマラヤの小国、ブータン王国は、発展の指針として「国民総幸福量(GNH)」の向上を目指す、ユニークな国として知られています。2016年現在、ブータンにとって、水力発電に次いで大きな外貨獲得手段となっているのが、観光産業(※1)。1974年に外客受入れを開始し、民主制に移行した2008年以降、本格的な観光開発が始まった際には、すでに国際社会でエコツーリズムの概念が定着していました。

伝統文化や自然環境の保全と、社会経済開発のバランスを、慎重にとりながら国づくりを進めたいブータン。エコツーリズムは、まさに最適なツールであるといえます。

※1:ブータン国税局の統計によると、2015年、水力発電による電力輸出高は約17.8千万ドル、国際観光による売上高は、約7.1千万ドル。
引用元:https://www.rma.org.bt/annualreporttp.jsp

地域活性化につながる環境保全への理解

ブータン各地でエコツーリズム開発が進む中、目に見える成果を出している事業のひとつが、JEEFとブータン王立自然保護協会(RSPN)が協働で行った、オグロヅルの越冬地でラムサール条約にも指定される湿地、ポブジカ谷のCBST事業(※2)です。

※2: 地域に根ざした持続可能な観光(Community-Based Sustainable Tourism)の略称。

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美しい湿地の景観と、希少なオグロヅルの飛来。それだけで観光客を惹きつける魅力を十分に持っているポブジカ谷では、ホテル建設などの開発が進行する中、地域住民が置き去りにされていました。

そこで、JICA(国際協力機構)草の根事業として、地域主体のエコツーリズムを始めたのが2011年。農家ホームステイの整備、ローカルガイドの育成、湿地を守りながら歩けるボードウォークの設置、ツル観察小屋の整備、オグロヅル祭の活性化などを行いました。

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その結果、お客様が来ても恥ずかしくないように、ゴミを拾うようになった。」「ツーリズムにより収入が増えた。以前にも増して、オグロヅル保護の重要性がわかった。」など、地域の人々の環境に対する意識が、明確に向上したのです。

ブータンのエコツーリズムに参加した日本の高校生たちには、地元出身のローカルガイドと共に、農家ホームステイを楽しんでいただきました。帰国後の事後研修では、地域経済が活性化するようにと、「ヤクのミルクキャンディー」、「そば粉餃子てづくりキット」など、地元の素材を活かしたお土産品のアイディア出し。地域と外の世界が継続的に繋がるきっかけを与えてくれることも、エコツーリズムの大きな魅力のひとつです。

 

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未来へのチャレンジ

今後のチャレンジは、大きく2つ。ひとつは、地域主体のエコツーリズム運営組織が、きちんと継続的に機能すること。もうひとつは、農業や畜産業などの地場産業とエコツーリズムを上手に結びつけて、総合的な地域活性化に繋げていくこと。

その担い手として期待されるのが、地元出身の若者たちです。彼らが都会の誘惑に惑わされることなく、地域の魅力を再認識し、エコツーリズムの立役者になってもらうためには、私たち日本人のような、外からの「応援団」の力が欠かせません。

未来のブータンにも、今のように美しい伝統と自然が息づき、若者からお年寄までが、訪れる観光客と共に、地域で活き活きと暮らせるように。ひとりでも多くの方に、「応援団」としてブータンのエコツーリズムを体験していただくことを、心よりお待ちしています。

2017年5、6月号

地球のこども201705

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