機関誌「地球のこども」 Child of the earth

東京湾の小さな無人島で「食べる自然体験」 2015.02.16

【実施日】2014年10月25日(土)
【開催地】猿島(神奈川県横須賀市)
【主催】(公財)損保ジャパン日本興亜環境財団、損害保険ジャパン日本興亜(株)、JEEF

文:森花音(JEEFインターン生)

10月25日(土)、(公財)損保ジャパン日本興亜環境財団、損害保険ジャパン日本興亜(株)、JEEF三者共催「市民のための環境公開講座」の野外講座「食べる自然体験」が開催されました。今回の講座では、講師に蓮池 陽子氏(有限会社ビーネイチャー フードプランナー)と北澤 伸之氏(ネイチャーガイド)をお迎えしました。普段目にすることの少ない海の幸を自分の手で採って食べることを通じ、その素材が育った理由や背景について知り、考えるきっかけにしていただくことを目的としています。

会場は、東京湾に浮かぶ小さな無人島で、湾内最大の自然島「猿島」。20代から70代まで、幅広い年代の方々13人にご参加いただきました。

ラピュタの舞台のような不思議な空間

まだひんやり寒さを感じる早朝。集合場所の横須賀中央駅から徒歩で15分、出航場所である三笠桟橋へ。船が動き出し参加者の気持ちが徐々に高まる中、10分程で猿島に到着しました。

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猿島は、かつて旧陸・海軍の要塞として利用されており、長らく一般人の立ち入りが禁止されていました。そのため、現在でも豊富な自然や歴史遺産が残されています。磯場へ移動する途中、煉瓦で覆われた要塞跡が見られました。また、トンネルを抜けると、木々の間から光が差し込み、なんとも神秘的な空間が広がっていました。参加者たちは、「ラピュタの世界のようだ」と、最初の感動を次々とカメラに収めていました。

貝採り、魚釣りに挑戦

「オイモノ鼻」と呼ばれる磯場の広場に到着し、参加者それぞれの自己紹介が終わると、いよいよワークショップの開始。2グループに分かれ、貝採りグループは講師の蓮池さんから、釣りグループは北澤さんからの説明の後、体験をしました。釣りでは、岩の隙間など暗い所に潜む魚をターゲットに、参加者は思い思いに魚の隠れていそうな場所を見つけては、次々に挑戦していました。魚の保全と資源保護のため、18㎝未満の魚は放流するという制限はあったものの、私を含めた初心者も気軽に楽しめる釣りでした。また、貝採りでは、岩にへばり付いているマツバガイやヒザラガイ、カメノテなどを採りました。マイナスドライバーを駆使しながら、ひたすらカメノテを獲る「カメノテ名人」。海の中がクリアに見える水中メガネを使いながら、「魚の目」で海底の貝を次々と採る人。皆、海の世界にのめり込んでいる様子でした。
磯場に来るまでは知らない者同士でも、同じ喜び、楽しさを分かち合えば、自然と会話も弾みます。ある方は、「70歳が7歳に戻ったような気持ち」と、童心に戻って楽しんだ様子。一方では、「図鑑で見て知っていたカメノテが、今回の体験を通じて本物の知識に変わり、これが自然体験の魅力だと思う」と、様々な気づきや想いを持ったようです。

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採った自然の恵みで料理作り

魚釣り・貝採りを楽しんだ後は、待ちに待った砂場でのランチタイム。アヒージョ、アクアパッツァ、カメノテのボイル、塩焼き、バゲットのサンド。参加者が収獲した新鮮な魚介は、蓮池さんの手によって、オシャレな料理に変わっていきます。多くの方が興味津々だったカメノテのボイルは、見た目は名前の通り亀の手そっくりで、最初は食べるのを躊躇していた方も、一口試してみると、エビやカニのようなその美味しさに病みつきになっていました。

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海の匂いのする風と暖かな太陽の光のもと、参加者たちは、普段の生活の中で切り離されてしまっている、採ることと食べることの両方を体験することで、改めて自然の恵みをいただいているという、実感とありがたみを認識できたようでした。

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学び・体験を広げる大切さ

振り返りの中で印象的だったのが、「今度は身近な人を連れてきたい」という言葉を多くの方が口にしていたこと。今回の学びや体験を自分の中だけに留めるのではなく、周りに伝え、広げていく大切さを再認識させてくれました。それぞれの想いを胸に、参加者たちは、笑顔で猿島を後にしました。

山に囲まれて育った私にとって、今回の海の自然体験は新鮮なことばかりでした。釣りや貝採り、料理に夢中になっていても、その中で沢山の気づきがありました。また、自然は知らぬ間に人との距離を縮めてくれるパワーを持っていると感じました。今回の経験をきっかけだけで終わらせないように、これからも自分の目で見て、体で感じて、考えるということを実践していきたいと思います。

文責:森花音(JEEFインターン)

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