機関誌「地球のこども」 Child of the earth

お買いものはより良い世界への投票 2020.09.18

文:鈴木 啓美(フェアトレードカンパニー株式会社

人も木も、地球に生きるすべてがフェアに暮らせる世界に

ピープルツリーは「フェアトレード」専門のブランドです。フェアトレードとは、誰もが幸せに暮らせる世界をつくるために、環境問題と貧困問題をビジネスの仕組みで解決しようとする活動です。そのために、適正な賃金を支払うだけでなく、安全な労働環境を整えること、男女平等、児童労働の禁止、環境への配慮など、いくつもの基準があります。ブランド名のピープルツリーは「人」と「木」、生きとし生けるものがすべて幸せに暮らせるようにとの思いが込められています。

どこで、誰が、どんなふうに作ったのかが分かる喜び

来年30周年を迎えるピープルツリーですが、私自身がお買いものを始めて21年目、実は社歴よりも顧客歴のほうがずっと長いのです。こんなに長く好きな理由は、環境に配慮した天然素材を使っていること、手仕事で作られていること、どんな団体が作ったのかが分かること、ほかにはないオリジナリティーがあることなどです。

例えばピープルツリーのお洋服は、既成の生地を仕入れるのではなく、糸を機織り機にかけ、オリジナルの布を織るところから始まります。グループによっては、素材となる綿花やシルクのまゆを育てるところからのスタート。糸を紡ぐ人、染める人、織る人、プリントする人、縫う人、刺繍する人…。多くの人の手を経て、やっと完成します。そんな作り手の「顔が見える」「手間ひまが伝わる」からこそ、長く大事にしたいと思うのです。

フェアトレードさらにオーガニック

オーガニック(有機)農法は、手間と時間がたくさん必要ですが、農家の人々の健康と環境を守り、持続可能な生産のためにも、ピープルツリーは有機農法を推進しています。コットン製品の約8割に、オーガニックコットンを97~100%使用しています。

ナチュラルなイメージのあるコットンは、実は栽培に多量の化学肥料と農薬が使われています。水質・土壌汚染による生物多様性が失われるだけでなく、農家の人々の健康被害も深刻です。農薬や肥料、遺伝子組換えのたね(GM種)の購入のために莫大な借金を抱えることになり、児童労働の温床にもなっています。

フェアトレードなら、継続的な取引によって収入が安定します。さらに有機農法に転換すると、農家の経済的負担は40%削減されるという試算もあり、オーガニックコットンを栽培することは、環境問題だけでなく農家の貧困問題や児童労働問題の解決策と高い親和性があるのです。

ピープルツリーのオーガニックコットン製品のほとんどは、「GOTS(オーガニック・テキスタイル世界基準)認証」により、生地の生産・加工や保管・流通のすべての過程で環境的・社会的な基準を満たしていることを認証されている。

世界フェアトレード連盟(WFTO)により認証を受けた団体の製品につけられる「フェアトレード保証ラベル」

手彫りの木版でいくつもの色を重ねる、熟練職人によるブロックプリント

新たな価値を生み出すリサイクルサリー

毎年夏に大人気なのが、インドやバングラデシュの民族衣装であるサリーをワンピースやパンツにリメイクした「リサイクルサリー・シリーズ」。何度も水をくぐって柔らかくなった生地が肌に心地よく、涼しいです。そして何より、日本ではあまり見かけないビビッドな色柄の組み合わせが素晴らしく、1着1着が唯一無二。そうした色彩感覚の違いは、自然環境や文化の違いが育んだもの。光が違えば、目に映る美しさも変わります。

もともとサリーをリサイクルすることは、使い古した布をマットにするなど、インドの人びとにとっても「古臭い繕いもの」というイメージがあったそう。ところが、ピープルツリーからの依頼で素敵な洋服に生まれ変わった時、自分たちのクリエイティビティが刺激され、創ることにとても誇らしさを感じたと、職人たちが言ってくれました。

新たな日常に向けて

コロナ禍において、多くの方が「当たり前」と思っていたことの有り難さを感じ、本当に大事なものは何か、自分は何を幸せと思うのかを、真剣に考えるようになったのではないでしょうか。作ってくれた人を応援したいと、消費活動を見直した人も多いと思います。

顔の見えるものづくりで作り手たちの暮らしや将来をサポートするフェアトレードは、新たな価値基準にふさわしい取り組みのひとつだと思います。楽しくフェアにお買い物をすることで世界とのつながりを感じ、毎日の暮らしを心から豊かにしてみませんか?

PeopleTreeウェブサイトへリンク 

鈴木啓美

鈴木 啓美(すずき ひろみ)

ピープルツリー広報・啓発。「自分にとって心地いい暮らしが、周りの人々にも地球にも優しいと、心からハッピーになれる」と考え、フェアトレードを身近に感じ、生活の中に楽しく取り入れてもらえるよう、メディア対応やセミナー講師を担当、「フェアトレードの学校」などを企画。

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