機関誌「地球のこども」 Child of the earth

楽しく美味しく地球に優しい保存食 2020.02.14

文:黒田 民子(家庭料理研究家)

私の日々の食卓は、季節の食材を使ったお惣菜が並びます。保存食と意識することなく、旬の食材を使って作る一品が美味しくて体に良くて、無駄がなく、地球に優しい食生活だと思っています。

環境負荷や自然災害対策が課題となっている今、古来から日本人が培ってきた知恵「自然と調和し命を繋ぐ保存食」を見直す時代に来ています。今回ご紹介するのは、母から教えてもらった手作りの保存食です。

旬の食材

春:春は芽吹きの季節。山里の散策で美味しいものにたくさん出逢えます。
まだ土色の濃い地面からは新しい息吹が次々と。そう、薄緑色の蕾が可愛いふきのとう。これを摘んで味噌と合わせてふきのとう味噌に。ほろ苦い味わいに、ご飯がすすみます。

ワラビやセリ、うど等山菜はアクが強く下処理が大変ですが、春の恵みと喜びを感じます。清楚なソメイヨシノが散り始めたら、次に八重櫻が咲き始めます。

この八重櫻の7〜8分咲きを摘んで櫻の花の塩漬けを作ります。春のちらし寿司やさくら湯に華やかさを添えます。櫻花を漬けた塩はほんのりと香り、ピンク色になっています。これを天ぷらに添えたり、おにぎり塩に使ったりと楽しみます。

夏:初夏からの楽しみは何と言っても梅仕事。
翡翠色の青梅を使って梅酒作りから始まり、黄色く完熟した梅を使った梅干しまで家族の嗜好や健康を考えて作ります。

秋:実りの秋は、果実たっぷりのジャム作りを。
どこからもとなく香る金木犀の花を摘んで果実酒に。かりんも晩秋に出回ってくるので漬け込み、かりん酒に。渋柿は皮をむき、ひもにぶら下げて干し柿に。

冬:そして一番寒い季節に仕込む、味噌作りなど。

これらの保存食作りに欠かせないのが、次(※)の6つです。1〜6を複数組み合わせることで、より保存性は高まります。

例えばベーコンは生の肉を塩漬けにして、熟成させ乾燥、そして煙で燻します。

保存食作りに有効な6つの方法

夏を越えて、まろやかな味わいの味噌とたまり醤油。

我が家の手作りベーコン。茶葉とザラメ砂糖で燻します。

冷蔵(凍)庫に頼らない保存法で非常時も安心

さて、今は店に行けば欲しい食品やお惣菜が手に入る時代です。しかし、非常時になればコンビニやスーパーのお惣菜やパンがあっという間に品不足になり心細くなります。

そんな時、保存食や日持ちするお惣菜の作り置きがあれば、どんなに心強く思うことでしょう。慣れ親しんだ我が家の味で、食事ができることの安心感は替え難いものです。

秋の大型台風の時は我が家の冷蔵庫には常備菜があり、慌てて買い物に行くこともありませんでした。そして、台風の影響で電気や水が止まるかも… と思い、冷蔵庫の食材を使って急遽お惣菜作りを始めました。何もしないで冷蔵庫に食材を入れたまま腐らすことはとても出来ないからです。

食材を無駄にしない

 

冷蔵庫の中からミイラ化した野菜が発見され、苦笑しながら捨てた経験のある人も多いはずです。ちょっと使い残した野菜は冷蔵庫にしまうのではなく、干し野菜にした方が美味しく食べられて無駄になりません。

空気の乾燥した季節に太陽の陽を浴びた野菜は甘みが増します。半日も干せば半干し状態となり、水分と旨みを閉じ込めたような深い味わいが楽しめます。2〜3日以上かけてしっかり乾燥させれば密閉保存で1ヶ月以上も保存がきき、味噌汁や煮物などにそのまま加えて手軽に調理できます。

保存食は素材を無駄なく食べきる工夫である一方、食料の乏しい冬や凶作などに備えるために土地にあった様々な保存方法が考えられて来ました。ときに非常食として命を繋ぐものとして、昔の人は丁寧に作り少しずつ大切に食べて暮らしていたのです。

自然と共に生き、命を繋いできた先人たちに、私たちは学ばなくてはならない時代が来ています。皆さんもまずは「楽しむ」ことから日常に保存食を取り入れてみませんか?

黒田 民子(くろだ たみこ)

1947年生まれ。家庭料理研究家。情報サイトAll About「ホームメイドクッキング」ガイド。家庭料理や保存食レシピが幅広い世代に支持されている。週刊朝日「黒田民子の家つまみでひとやすみ」が好評連載中。『優しい保存食と自家製レシピ』(主婦の友社)、『保存食マニュアル』(ブックマン社)など著書多数。

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