伝わる文章 を書くために,覚えておきたい3つのこと
- 2015/06/03
- カテゴリー:メディアを使った間接コミュニケーション , 特集

文:赤羽 博之(伝わる文章の書き方・講師)
「伝わる文章」を書く――。
とくに集客や寄付にかかわる皆さんにとっては日々の仕事に直結する、とても切実なテーマでしょう。どうすれば、より「伝わる文章」になるのでしょうか。今回は普段、私たちが見過ごしてしまいがちなポイントを3つご紹介していきます。
1. 必ず発生する「温度差」を意識する
あなたがあるイベントを企画したとしましょう。コンセプトを練り、会場を選定し、ゲストの出演交渉、スタッフの配置からスケジュール管理、予算管理など準備期間はここまで3カ月。いよいよ当日の集客に向け「告知」をしていく段階になりました。
文案を考えるあなたのアタマの中には、準備の過程でより強くなったイベントへの想い、そして「これだけの内容なのだから、一人でも多くの人に参加してほしい」という願いが渦巻いていることでしょう。ところがこの想いや願いの強さが、文章を書くときにマイナスに作用してしまうことがあるのです。
まさに告知文を書こうとしている時点であなたが持っている情報量、想いのレベルと、実際に文章を読む方のそれとの間には「大きな差がある」ということです。
このイベントについては、あなたが「世界一! 熟知している」といってもいいでしょう。いっぽう、あなたの書く告知文を読む相手は、その文章で初めてイベントについて知るわけです。この情報量、想いのレベルの差こそが「温度差」。書き手が「なんで伝わらないのだろう……」と思い悩むような〝すれ違い〟を引き起こす原因のひとつです。
もちろん、想いや願いは不要だ――という意味ではありません。これらはイベントを準備し開催していくための原動力ですね。必要なのは、読み手との情報量や想いのレベルの違い、すなわち「温度差」の存在を前提に書くことです。
あなたにとっては「当たり前」のことでも、読み手にしてみれば「初耳」の可能性が高い。あなたのアタマの中ではすでに整理・解決がついていることでも、読み手は重大な疑問点と感じる場合もある――。こうした意識をキープした状態で、「この言い方で伝わるか?」と常に自問自答をしながら書き進めるようにしましょう。
2. 自分の文章にNGを出す
皆さんが文章を「書く」とき、どこに一番時間をかけているでしょうか。「書く」過程を次の3つに分けて振り返ってみてください。
- 何を書くかを考え、構想を練る
- 実際にキーボードを叩いて書く
- 読み返し、改良する(=推敲)
おそらく多くの方は「実際に書く」ところに多くの時間、エネルギーを割かれていると思います。では、職業として文章を書く人たちはどうかというと、私の知る限り、その前後「1」と「3」のプロセスに時間をかける方が多いようです。
「3」の過程が「推敲」と呼ばれ、「とても大切」とされていることは皆さんもご存じだと思います。たとえば専門用語を一般的な言葉に置き換えたり、分かりにくい表現を簡単な言い方に改めたり、あるいはムダを省く、語順を換える、ときには段落ごと順序を入れ換えるなど、読み手を思い浮かべながら、ギリギリまで「より伝わる文章」に仕上げるために〝粘る〟わけです。
著名な作家の記念館などに足を運ぶと、自筆の原稿用紙がよく展示されています。歴史に名を残すような作家、小説家であっても、元の原稿が読めないほどの推敲(修整の書き込み)を重ねているという事実に驚かれた方もいることでしょう。(こうした作家を上回るような!)よほどの天才でもない限り、推敲せずに文章を完成させるのは無謀なことと言わざるを得ません。
そこで必要になるのが、自分の書いた文章にNGを出すこと。自分の文章に自分でNGを出すことによって初めて推敲がスタートするのです。陶芸家が「気に入らん!」などと言いながら作品を叩き割る――あの感じに近いかもしれません。
ところが、これがなかなか簡単ではありません。なぜなら、自分のアタマで考えたことを自分が書いたわけですから、書き終えた段階では基本的に「OK」なのです。そんなときに便利なのが、文章を「第三者の目」で見る(客観視する)ための方法。ここでは3つご紹介しましょう。
どの方法も、「書き手の視点」に凝り固まってしまった意識に変化を与え、自分以外の目で見ることを助けてくれます。中でも「音読」は日本語としての完成度を高めていくうえでも必須といっていいほど有力な手段。自分で書いた文章であるにもかかわらずスンナリと音読できないようであれば、まだまだ推敲の余地がたっぷり! 書き手がスムーズに音読できないものを相手に読ませるのは、とても失礼なこと――と心得ておきましょう。
3. あなたにしか書けないことを書く
世の中には「便利なフレーズ」と呼べるような言い回しがたくさんあります。〝それ〟を書けば、なんとなく気が利いているように見えたり、文章がまとまったと感じられたりする表現です。
たとえば、イベントの様子を伝える文章の最後に「たくさんの家族連れでにぎわいました」。バーベキュー大会なら「舌鼓を打っていました」。それが社会問題ならば「今後の動向が注目されます」。ドキュメンタリーの最後に「~の挑戦は、まだ始まったばかりだ」。エッセイを習い始めてすぐの人が書きたがる「~な今日この頃である」……。こうしたいわば〝使い古された〟言い回しに頼ってしまうと、一見うまく書けたように思えても、相手にメッセージを伝える力に乏しい文章になってしまいます。なぜなら……。
そんなことなら、誰だって書けるから!
たとえば「たくさんの家族連れでにぎわいました」のようなフレーズであれば、現場を見なくても書けてしまうわけです。せっかく〝あなた〟が書くのであれば、あなたにしか書けないことで勝負してほしい。オリジナリティーを大切にしてほしいのです。
しかし、これは(これも)実は簡単ではありません。オリジナリティーを発揮するためには物事を見る目、視点そのものを磨いていく必要があるからです。つまり、目の前の出来事をただ漫然と、人と同じように眺めているだけでは、独自の視点(オリジナリティーの出発点)を持ち得ないのです。
最後に作家の井上ひさしさんが残された言葉をご紹介したいと思います。
そのためには、常に他人とは異なる視点から物事をとらえる、考えてみる習慣をつけることが必要なのです。
2015年5、6月号
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