機関誌「地球のこども」 Child of the earth

スンダルバンス地域の漁師による漁場の適切な利用を通じた、イルカとカメの保全を目指して! 2015.06.24

【事業名】バングラデシュ・スンダルバンス地域における漁師を対象としたイルカとカメの保全のための普及啓発活動
【実施期間】2015年4月~2016年3月
【実施地】バングラデシュ人民共和国 スンダルバンス地域
【助成】(公財)イオン環境財団
【協力】バングラデシュ環境開発協会(BEDS)

本活動は、公益財団法人イオン環境財団の助成を受け、現地パートナー団体であるバングラデシュ環境開発協会(ローカルNGO)の協力を仰ぎながら進めています。

スンダルバンス固有の生態系と人間活動の影響

本活動の対象地域であるスンダルバンスは、世界遺産(自然遺産)に登録されている場所。インド東部の西ベンガル州からバングラデシュにまたがる世界最大のガンジス・デルタ地帯にあります。

ガンジス川などの水量の多い川が世界最大級のマングローブの森を形成する大湿地帯にあり、貴重なベンガルトラが生息しているほか、ヒョウ、イリエワニ等の野生動物や、野鳥など数多くの希少種及び、絶滅危惧種が棲息する固有の生態系を保持しています。

多くの河川が入り込み、淡水と塩水が交じり合う、イルカにとっては最適な生息環境をつくりだし、特に、イラワジイルカや、ヒレのないネズミイルカ等が多く棲息しています。2011年には、バングラデシュの森林保全局が同地域の数ヵ所にイルカの保護区域を定めています。

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また、この地域ではヒメウミガメやアオウミガメ等の棲息が多く確認されていましたが、ここ数年は生息環境の悪化にともなってその個体数が減少しています。

スンダルバンス地域におけるイルカやカメは、国際自然保護連合(IUCN)のレッドデータブックで絶滅危惧種に指定されている種が多く、その理由としては次の人間活動が深く関与しているものと考えられます。

イルカとカメ保全の課題

  1. 漁師による混獲(漁獲の対象とされている魚に混じって、イルカやカメも漁獲されること)
  2. 漁師の漁法(イルカやカメが漁網に引っかかった場合のリリースの方法)
  3. 人口の増加による漁業活動の拡大
  4. 漁師や商売人によるイルカとカメの不法取引
  5. 漁師が漁場での規則を順守しないことや漁場の適切なモニタリングを行わないこと
  6. 本地域における漁師や地域の漁業関係者のイルカとカメを含めた生物多様性保全に関する知識の欠如

漁業と保全の両立

イルカやカメは環境の変化に脆弱であり、特に生息地や餌が少なくなると生息環境が脅かされます。同地域のイルカやカメの個体数の減少は、漁師の保全意識の低さと、漁法の技能の未熟さに起因しているといっても過言ではありません。毎年、イルカやカメは、漁師の混獲により捕獲されるケースが後を絶たない状況で、同種を保全することが急務となっている一方で、この地域で暮らす漁師の生計も成り立つような配慮が求められています。

本活動では、リリース技能に焦点をおいて漁師の意識向上を図りながら、同地域の持続的な生物多様性保全を図ることを目的とします。

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活動内容と期待される成果

イルカ保護区に流れ込む河川で漁業を営む漁師、教師や地域の代表者、約250人が8つの委員会で組織化され、同地域のイルカやカメの保全と、漁業による営みの共生を図るための仕組みが、それぞれの地域で構築されることが期待されます。
また、開発された教材の活用や研修会を通して、対象者が同種保全のための技能を向上させ、政府が定めた漁業規則の重要性について理解を深めることが大切です。将来的には、スンダルバンス地域の保護区や、ホットスポット域(イルカやカメの生息が脅かされている地域)での漁師による漁法の技能が改善され、混獲が現在よりも減少することを上位目標として取り組んでいきます。

2015年度年間活動計画

  1. 対象地域における漁師の現状把握と対象者250名の選抜
  2. 8つのイルカ/カメ保全委員会の設立
  3. イルカ/カメ保全のための研修教材の作成
  4. 研修教材を活用し、イルカ/カメ保全委員会のメンバーを対象とした研修会の開催(1日間×8委員会)
  5. 漁師が研修で学んだ成果を漁場で実践し、その実践結果に基づいて漁法や教材の見直し等についての意見および改善点の検討
  6. 本活動の評価(研修を受けた漁師に対し、トレーニングの習熟度や理解度を確認)

文責:佐藤秀樹(JEEF職員)

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