機関誌「地球のこども」 Child of the earth

おさんぽ日和 〜親子であそぶ〜 2015.04.21

文:鳥屋尾 健 (公財)キープ協会

「大人の写真。子どもの写真。」(新倉万造×中田燦)という本が好きです。大人と子どもが同じものを撮ったら、何が、どんな風に、違って写るのか?そんな絵日記みたいな文庫サイズの写真集。

子どもは、子どもの目線で世界と出会っています。子どもと一緒に野外にでると、自分ひとりでは出会えない喜びと出会えます。親子で時に、のんびりと、時にアクティブに自然との出会いを楽しみましょう。

子ども達と外に行く時の、僕のおススメ「そそのかし」をご紹介します。
「私は、こうしてますよ~♪」情報、ぜひ教えてください!

五感センサーフル活用!

野外の気持ちいい場所は、そこで過ごすだけで、素敵なものをいっぱい受け取ることができます。そんな場所で、人が外の世界を感じ取っている五感センサーの感度をあげると、さらに楽しくなってきます。花があれば、においをかいでみてください。木の実があればさわってみてください。川のせせらぎがあれば耳をすましてみてください。

「おー、これすごくツルツルしてるよ」
「父ちゃん、これもツルツルだよ。あっ、これもツルツル。」
「この花、においかいでみな。いいにおいするよ。」
「ほんとだ。こっちはキュウリのにおいがするよ。」

親子の会話もはずみます。大人のマネをして、子どもはどんどん新しい世界に出会っていきます。

○○を探す

「何かを探す」ということは、狩猟採集の時代からの人の本能でしょうか?同じ世界をみていても、意識するとはじめて目にとびこんでくるものがたくさんあります。赤いもの、丸いもの、セミのぬけがら、不思議なもの、春らしいもの、おいしそうなもの・・・。何か視点をもって世界と向き合うと、向こうから「ここだよ」と教えてくれます。

「このあたりは、キノコが多いなあ。ちょっとキノコ見つけながらいくか。」
「父ちゃん、きて~。このキノコ すごく大きいよ」
「(咲き始めたタンポポの花を見つけて)
おっ、こんなところにも春がいるよ。」
「(つくしを見つけて)こっちにも春がでてるよ~」

たくさん並べる

自然のままにあるものを、並べていくことは、そこにひとつの規則性をうみだすことなのかもしれません。葉っぱ、石ころ、貝殻、木の実、雪玉、小枝・・・。同じ種類のものばかり並べるのもいいですし、いろんな種類のものを並べるのもおもしろいです。

丸く渦巻き状にならべると、どこまでも続けたくなります。一直線に並べていくと、ひとつひとつの違いに気づきます。道の端っこなど、その自然物がちょっと浮き立つ場所におくとちょっとしたアート作品に! 子どもだけでなく、意外に大人がはまります。

「知らない人が、この作品を見たらどう思うだろう」と、いたずら心がくすぐられます。
(もちろん、ずっと跡が残るような落書きのようないたずらはダメですよ。いつの間にか風で消えてしまうような、波に消えていくような、そんな作品がいいですね。)

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並べてみると、何だかうれしい!(つららのかけらを雪の上に)

日常の時間に、野外の時間をつなぐ

楽しい思い出は、それを思い出すだけで心の中にたくさんのエネルギーが湧いてくる気がします。野外で遊んだ時は、ほんの少しだけ、自然のひとかけらを日常の時間に持ち帰ってはどうでしょう。家の中に、自然物をちょっとおけるコーナーをつくるだけでよいのです。

大きなスペースも、立派な飾り棚もいりません。公園で拾った松ぼっくりがひとつおいてあるだけでもいいのです。海に行った時の小さな貝殻が、小瓶に入っているだけでもいいのです。玄関の脇だったり、洗面所の端っこだったり、ふとした時に目に入る場所がおススメです。もちろん、小さな折り紙を下に引いてみたり、きれいな小箱にいれたり、つるしてみたり、いろいろ工夫するのも楽しいですね。

野外で遊ぶことは・・・

野外で遊ぶ時間は、心と体にたくさんの糧を与えてくれます。時に穏やかな落ち着きのリズムを、時に時間を忘れるほどの熱中を、時に誰かに伝えたくなる驚きを。目に入るもの、聴こえてくる音、自分をつつんでくれている空間の広がり・・・人は、無意識の中で、それらを自分の内側にとりいれているのではないでしょうか。

雨の日のくもの巣のキラキラした様子、木漏れ日のゆらゆらゆれる影、ずっと見つめていても飽きない不思議な色の貝殻・・・。そんな出会いは、心の中にたくさんの喜びで彩ってくれます。それはきっと大事な原体験になっていくでしょう。

単一な人工的な世界ではない、多様な自然の中で体を動かし遊びまわること。その中で、基礎的な体力、バランス感覚や判断力、気づく力、挑戦する気持ちや、小さな生命と向き合うこと・・・心と体が育っていく大事なものが、野外での遊びの中にあります。

人工的なものが、なんでもダメなんてことではありません。人類が、厳しい自然と向き合う中で獲得してきたたくさんの知恵がそこには詰まっています。人の手が加わることで、暖かい気持ちになるものが世界にはたくさんあります。人工的なものと自然のもの。何事も「過ぎたるは、なお及ばざるが如し」ですね。今の時代の日本には、野外で遊ぶ時間の中にあるものが、ちょっと足りていないのではないでしょうか。(子どもだけでなく、むしろ大人にこそ足りていないのかも知れません。)

やってみて!こんなあそび

森の宝さがし

自然の中で見つけた面白いもの、好きなものを「家族や友達にみせたい」と思ったことってありませんか?「きれいな色」「へんてこな形」「なんだか気になる」をいろいろ集めて眺めてみましょう。春夏秋冬、季節が変われば、小さな木の実やセミのぬけがら、天然ドライフラワー・・・その季節にしか見つからないものがあります。山、森、海、川、と場所が変われば、風で飛んできた小さな種や、不思議な模様の石ころ、浜辺に流れ着いた魚の骨のひとかけら・・・その場所でしか見つからないものがあります。

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仕切りのあるお菓子の小箱などを野外に持っていってもいいですし、封筒や、小さな袋にいれて持ち帰り、家で整理してみるのもいいでしょう。同じところを歩いているのに、見つけるもの、選ぶものは人それぞれ。その違いもまた楽しいものです。(すぐドロドロになってしまいそうなキノコなどのお宝は、その場所だけで楽しみましょう。)

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鳥屋尾 健 (とやお たけし)

1976年、愛知県出身。「教育」をキーワードに過ごす中、環境教育と縁あって15年。幼児~シニア、地域~海外と、自然体験~研修事業~ビジターの運営まで、多様な現場で活動中。陽だまりの中での昼寝が好き。6歳の娘と1歳の息子との日々から、新しい世界が広がるのが楽しい。公益財団法人キープ協会環境教育事業部。

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