バングラデシュ全国の小学校で適用可能なスンダルバンス地域の 生物多様性保全を学ぶ教材の開発と人材育成を目指して
- 2015/04/21
- カテゴリー:バングラデシュ国における事業, 事業レポート

【事業名】バングラデシュ国スンダルバンス地域における生物多様性保全の教材開発と人材育成事業
【実施期間】2013年1月~2014年12月
【実施地】バングラデシュ人民共和国スンダルバンス地域クルナ管区
【助成金支援団体】トヨタ自動車株式会社
【現地パートナー団体】バングラデシュ環境開発協会(BEDS)
本活動は、トヨタ自動車株式会社の「トヨタ環境活動助成プログラム」の助成を受け、現地のパートナー団体であるバングラデシュ環境開発協会(ローカルNGO)の協力を仰ぎながら進めています。
マングローブ林や生物多様性保全を学ぶ教材の完成
2013年1月から2年間の計画でスタートした、バングラデシュスンダルバンス地域のマングローブ林や生物多様性の保全を学習するための教材は、2014年12月に完成しました。小学3、4、5年生の各学年を対象とした読本の開発に加え、スンダルバンス国立公園の規則や利用方法を学ぶすごろくゲーム、同地域の自然や人間活動のつながりについてストーリーをつくりながら学ぶカードゲームが作られました。また、教師が本教材を容易く使用できるように手引書も作成されました。なお、学年ごとの読本の主な構成内容は、次の通りです。
読本の主な構成内容
- 小学3年生
- 絵やイラストを多用した色彩豊かな構成で、同地域の人と自然とのつながりを学ぶ
- 小学4年生
- 同地域で昔から伝わる動植物の神話を題材としながら、生態系の保全について学ぶ
- 小学5年生
- 詩を通じて同地域の自然環境や生物多様性について学ぶ
スンダルバンス国立公園と対岸に位置する50の対象小学校で、本教材を体験した生徒の反応としては、同地域の主要な動植物名の知識を得るだけでなく、ゲームを通して自然を守ることの大切さを、楽しみながら相互に学び合うことに面白味を感じているようです。教師からは、「スンダルバンス地域の自然環境を保全することの重要性を見直し、私たちが同地域と直接関連して恩恵を被りながら暮らしていることを、再考するための最適な教材であり、社会や理科等の教科の内容を補う画期的なツールである」との評価がありました。そして、コミュニティ住民を対象として、同地域の自然をテーマとした歌やストーリー等を盛り込んだ普及啓発教材(DVD)も開発され、今後、小学生の父兄等を対象とした活用が期待されます。
2年間という限られた期間で教材開発を円滑に進めることができたのは、現地の協働先であるバングラデシュ環境開発協会の日々の献身的な努力のおかげです。また、バングラデシュ国初等教育局、クルナ管区の森林局や環境局、国際自然保護連合(IUCN)、クルナ大学の教員や同大学の学生ボランティア等、スンダルバンス地域の自然環境保全に関わる様々な人たちを巻き込むことで、質の高い教材開発につながったと言えるでしょう。以上から、私が本事業に関わった経験から得られた教訓は、次の通りです。
- 開発途上地域における生物多様性をテーマとした教材開発で重要なことは?
- 自分たちの日常生活が同地域と密接にリンクしていること
- 一方的に知識を学ぶ教材ではなく、様々なストーリーにより考えてもらう工夫を施す
- 楽しみながら学べる教材
- 開発途上地域で教材開発のプロジェクトを円滑に進めるためには?
- 様々な関係者の巻き込み
- キーパーソンとの良好な関係構築
- 皆で一緒に取り組んでいるという、一体感をつくりあげること
全国の小学生とその父兄を対象とした教材普及実証事業の展開
今後は、バングラデシュ全国の小学校で教材普及実証事業を行ってその反応や効果を測定すると共に、必要に応じて本教材を修正し、その効果的な活用方法や将来的には政府の補助教材として、認可されるように活動を展開していきます。幸いにも、2015年1月~2016年12月の2年間にわたり、トヨタ環境活動助成プログラムの支援を継続して頂くことが決まりました。本期間中では、同国にある全7管区のうち、既存のクルナ管区50校に、残りの6管区から選抜された30校を加えた80校にて、小学校の教員、小学3、4、5年生とその父兄を対象とした教材の実証普及授業を行います。そして、スンダルバンスにおける生物多様性保全への意識を向上させながらバングラデシュ全国の小学校で使用可能な教材に仕上げていく作業を進めていきます。また、教員を対象としたワークショップを開催して教材の精査を行うことや、本教材の活用方法の検討およびスンダルバンス国立公園への視察プログラムを含めた教員研修を実施する予定でいます。本研修を通じて、小学校の教員が生物多様性保全に関する教育の普及に指導者的役割を発揮できるよう、その指導技能を向上させると共に、バングラデシュ全国の小学3、4、5年生における生物多様性教育を普及させるためのモデルを構築していきたいと考えています。
世界自然遺産とラムサール条約に登録され、世界最大のデルタ地帯とマングローブ林を形成するスンダルバンス国立公園。そこに生息するベンガルトラ、ヒョウ、イリエワニ等の野生動物や同地域の生物多様性を保全していくことが、長期的に見れば同地域の持続可能な暮らしを構築し、人々の生活向上に寄与していくことは確かです。そのためにも、環境教育の技能を有効に活用して住民の自然環境保全に対する長期的な意識の改善を目指して活動を続けていきます。
文責:佐藤秀樹(JEEF職員)
2015年3、4月号
- 自然の中で自然に育つ 〜なぜあそびが大切か〜
- 人と触れ合う楽しさを 感じて欲しい 〜大勢で あそぶ ダイナミックなあそび〜
- 高校生が地域と共に進めた環境活動(第9期日本の環境を守る若武者育成塾 成果発表会 実施報告)
- 笑いがつくる安心世界 〜少人数で あそぶ 人と人をつなげるあそび〜
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