機関誌「地球のこども」 Child of the earth

快適な洗濯をずっと続けていくために 2019.10.04

洗濯物イメージ

文:井上 紀子(未来洗浄研究会

皆さんの家では、1年間に何回お洗濯をされていますか。週1~2回でも1年間では100回、毎日のようにお洗濯されていると300回から400回にもなります。これが日本中の家庭で行われているわけですが、果たしてこのお洗濯を10年後、20年後も今と同じように続けていけるでしょうか。

洗濯の価値と環境への影響

私たちが衛生的に清潔に暮らしていくために、洗濯がとても大切なのはもちろんですが、お風呂上がりに心地よい感触のタオルに身を包んだり、お気に入りの服につけてしまった食べこぼしがきれいに落ちたり、パリッときれいなユニフォームに着替えたりすると、気持ちがグンと上がりますよね。

快適でこころ豊かな暮らしに、洗濯は必要不可欠だと思います。この洗濯を少し別の見方で考えてみたのが図1です。

洗濯の環境への影響

汚れた服やタオルを洗濯するためには洗濯機に水を入れて、洗剤を入れて、電気を使って洗濯機を動かします。さらに洗濯をすると洗剤成分や汚れを含んだ排水が出ますし、洗剤容器はごみになり、エネルギーを使っているのでCO2も出ています。また、繊維がこすれるとどうしても細かい繊維が抜け落ち、それが化学繊維の場合はマイクロファイバーと言われているマイクロプラスチックの一種にあたります。

このままでは、地球に優しくないようにみえます。どうしたらよいでしょうか。

皆さんが家庭でできることの効果

企業はできる限りの努力をして、サステナブルな製品を家庭まで届けようとしていますが、図2に示すように実際に毎日の洗濯をしてごみの分別をするのは、一人ひとりの生活者です。皆さんの協力なしには、サステナブルな洗濯にはなりません。例として次のリストをチェックしてみてください。

潜在製品のライフサイクル

家庭でできるこんなこと!

  • 洗剤の量は洗濯物の量に合わせて毎回適切に調節していますか?
  • すすぎ1回の洗剤なのに、何となく2回すすぎをしていませんか?
  • 洗剤購入時に、環境のことも考えている製品かどうか確認していますか?
  • 容器をごみに出す時にきちんと分別していますか?
  • 服の素材や洗う頻度を気にかけていますか?

家庭では年間100~400回もの洗濯をしているのですから、毎日の習慣のちょっとした見直しをするだけで、実はずいぶん違いが出てくるはずです。日本の世帯数は約5000万世帯。みんなで見直せば、その効果は間違いなく大きくなります。

毎日の取り組みが世界にもつながる

世界の水不足の地域では飲み水が最優先で、洗濯をしないところがあるそうです。一方、先進国の中にはニットも60℃のお湯で洗濯し、縮んでも傷んでもそれが当たり前という地域もあります。サステナブルな洗濯への課題は世界各地で様々ですが、日本の5000万世帯の洗濯が変われば、世界の洗濯がサステナブルになることにもつながるはずですよね。

世界中の人達も自分達もサステナブルに快適に暮らしていくために、水・原料・エネルギーのこと、また、排出しているものにも思いを馳せ、まずは日本で自分の洗濯を見直すところから始めませんか。

皆さんの取り組みと、企業や研究者、自治体などの取り組みを掛け合わせてこそ、これからの「サステナブルな洗濯」を作っていけるのだと考えています。

未来洗浄研究会でめざすこと

未来洗浄研究会

花王は1987年に初めてのコンパクト化洗剤、2009年に「すすぎ1回」の洗剤を発売し、洗濯に関わる資源の節約や節水、省エネを進めてきました。他の洗剤メーカー、洗濯機、繊維やアパレル、下水道事業者もさまざまな工夫をしています。さらには研究者や行政、民間団体もさまざまな研究・活動を行なっています。
そこで、それぞれの知恵を集めたらより効果的なアイデアや共同活動が生まれるのではないかと考え、昨年私たちは「未来洗浄研究会(※1)」を立ち上げました。研究会での議論が、サステナブルな洗濯や洗浄のための、画期的な技術や社会を動かすムーブメントにつながるよう活動していきたいと思います。

*1 未来洗浄研究会は、「世界中の人々がサステナブルに清潔に快適に暮らせる社会」をめざして、事業領域や学問領域の枠を超え、産学公民等のさまざまな知恵を集めて、未来の洗濯や洗浄について、議論や提案をしていく場です。2018年12月、Future Earth、東京大学IR3S(2019年4月より、東京大学未来ビジョン研究センターに統合)、花王株式会社の3者が共同で、設立しました。

井上 紀子(いのうえ のりこ)

未来洗浄研究会/花王株式会社 ESG活動推進部。花王入社後、研究開発部門、生活者研究センターを経て、2017年より、生活者に向けた環境コミュニケーション(次世代啓発、イベントなど)を中心としたESG関連活動を推進している。昨年、3者共同での「未来洗浄研究会」の立ち上げを担当。

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