アクティブラーニング型授業は 何を目指しているの?
- 2015/10/27
- カテゴリー:アクティブラーニングってなに?, 特集

文:皆川 雅樹(専修大学附属高等学校教諭)
アクティブラーニングって?
いきなりですが、物理学者アインシュタイン(1879~1955)の言葉を引用します
教育とは学校で習ったすべてのことを忘れてしまった後に、自分の中に残るものをいう。そしてその力を社会が直面する諸問題の解決に役立たせるべく、自ら考え行動できる人間をつくることである。
アインシュタインの言う通りであるとすれば、「将来、学校の勉強って役立つの?」と聞かれれば「役に立つ!」と答えることができます。ただし、これまでの学校で学習していることが、本当に社会の諸問題の解決に役立つかどうかは実感できず、「勉強しても意味ないのでは?」と思っている方が多いかもしれません。
ここでちょっと考えてみましょう。アインシュタインが言う教育・学校における「自分の中に残るもの」「自ら考え行動できる人間をつくる」とはどのようなことなのでしょうか。ここに「アクティブラーニング」が関わってくると思います。
2014年11月の文部科学省から中央教育審議会への諮問や、同12月の中教審答申では、「アクティブラーニング」が大きな柱として取り上げられました。では、アクティブラーニングとは何でしょうか。京都大学の溝上慎一氏は次のように定義しています。
一方向的な知識伝達型講義を聴くという(受動的)学習を乗り越える意味での、あらゆる能動的な学習のこと。能動的な学習には、書く・話す・発表するなどの活動への関与と、そこで生じる認知プロセスの外化を伴う
アクティブラーニング型授業とは、これまでの生徒・学生が先生の話をただ聴くだけの一方的な講義型授業だけではない時間・空間を授業内で作ることということになります。
さらに、溝上氏の定義で注目すべきは、「認知プロセスの外化を伴う」の部分です。私は、この部分について高校生に「授業などでの学習活動の意味を考えて言葉などで表現する行為を伴う」と説明しています。つまり、学習活動としては、従来であれば先生側が提供する授業内容(日本史の知識など)がメインでありすべてであったのに対して、それを学習する過程で学んだことやそこにおける自分の姿勢などを他者との関係で振り返ることに注目する必要があると言えます。
したがって、先生が「何を教えるか」と同時に生徒・学生が「どのように学ぶか」を重視すること、つまり能動的=「アクティブ」な学び=「ラーニング」につながるわけです。これは、冒頭にあげたアインシュタインの言葉においても、「自分の中に残るもの」の自分=学習者、「自ら考え行動できる人間をつくる」の自ら=学習者であり、先生が何を教えたのかだけではなく、学習者が何ができるようになり、どんな能力が身に付いたのかが問われていることが如実に表れています。
小中高では、学校生活の8割、1日の1/4を占めるのが「授業」です。そこでの学びの方法について、新たな展開が求められています。
日本史でアクティブラーニング!?
さて、「皆川の日本史の授業はアクティブラーニング型授業になっているのか」というと、現在進行形で実践中であり模索中というのが正直なところです。ここでは、最近の私の高校での日本史の授業について紹介します。
皆川の日本史の授業目的・目標・ルール
生徒に明示・説明している授業の目的・目標
- 【目的】
- 日本史の知識習得だけではなく、日本史を通して「社会人」=“学び家(か)”になる!(指示待ちで教わってばかりの“教わり家”ではなく、主体的・積極的に学べる“学び家”)
※「学び家」については、高木幹夫『「学び家」で行こう』(みくに出版、2014年)を参照している。 - 【目標】
- 日本史を学びながら、今の自分たちの常識から考えて「変だなぁ」と思うことをできるだけ多く発見すること(疑問を持つこと・わからないことをきちんと認識すること)が「学び家」への第一歩!(さらに、その疑問を自分たちの知恵で解いていくことができるとなおいい!)
- クラスメイト・仲間(=学びの友[学友])とのコミュニケーション(学習ネットワーク)を通して、「感謝の気持ち」と「謙虚さ」を持てる“学び家”になる!
生徒に明示・説明している授業内でのルール
- 「きくはきく はなすははなす」
- 「聴く(listen)・訊く(ask)は効く」「話すは離す・放す」(話しすぎは理解を鈍らせる、言葉は暴力にもなるなど)
- 暇な人はいらない!
- 「暇な人にならない」ため、「暇な人を作らない」ためにどうすれば良いか、意識できるようにしていきましょう!
- 「フリーライダー」はいらない!
- 「フリーライダー」(他のメンバーに頼りっきりでその成果にタダ乗りする人)では、授業に参加しても無駄な時間になるだけ!
皆川の日本史授業1時間の流れ(アクティブラーニング型)
多くの方たちが体験した高等学校の社会科系の授業というと、先生が黒板にたくさんの字を書き、マシンガントークで説明し、時にこだわりの歴史的事象や豆知識を語るといった時間・空間だったと推測されます。私の授業では、語りたいことは厳選し、配付プリントから生徒自らが思考する時間・空間を大切にします。
誰もが読める文字で書き、「質より量」でとにかくたくさん書くことで論理性を身に付けると同時に自己肯定感を持つことにつながると考えています(「思考が対話をうながし、対話が個の思考を深める」)。これによって、アインシュタインが言う「教育」とともに、先生も共に育っていく「共育」につながっていけばと思い、日々の授業に取り組んでおります。
みなさんは、これからの教育・共育について、どのように考えますか?
私の授業の具体像については、 リクルート『Career Guidance』№408[2015年7月]http://souken.shingakunet.com/career_g/2015/07/2015_cg408_56.pdf) 『現場ですぐに使えるアクティブラーニング実践』(産業能率大学出版部、2015年)も参照。
2015年9、10月号
- アジアの開発途上地域で国際環境教育活動を目指す人のために 2
〜求められる実践者の技能編〜 - 私のアクティブラーニング見聞
- アクティブラーニング型授業は 何を目指しているの?
- 考えるっておもしろいかも!?パート2 第1回 好奇心の種
- ベースライン調査から見る「ハ県の今」
- アクティブラーニングってなに?
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