アジアの開発途上地域で国際環境教育活動を目指す人のために 2
〜求められる実践者の技能編〜
- 2015/11/06
- カテゴリー:国際事業コラム

文:佐藤秀樹(JEEF職員)
私は、海外での国際協力の仕事を初めてから、約15年が経過しました。
現地での関係機関との会議の日程調整・準備、会議やワークショップでの進行役、研修のコーディネート、お茶くみ等、限られた人数や一人で事業を行うことが多かったこともあり、多岐にわたる業務を経験してきました。このような背景もあり、海外で仕事をする時は、何事においても前向きに事を進めることで自分の視野が広がり、また、現場での多岐にわたる業務を通じて、海外で働くための多くを身につけることができる良い機会であると考えています。
さて、第2回目は、国際環境教育活動で求められる実践者の技能について紹介したいと思います。
1 国、地域や援助側の視点と現場踏査から環境問題の現状や解決策を検討する。
海外で活動する場合は、その国がどのような環境政策に基づいて事業を展開しているのか、また、それを支援する日本政府(JICA、大使館等)の支援内容についてその全体像を把握することが必要です。
また、その地域のニーズ、環境問題、環境保全に関する活動の実態や草の根レベルで行っている、NGOの取組みや課題及び対応について把握することも重要です。そして、国、地域や援助側の視点から、対象国の環境問題を包括的にとらえて問題点を解決するための整理を行い、事業実施へ向けた具体的な提案を進めていくことが求められます。
企画提案で何よりも一番大切なのは、自分で現場を踏査することです。環境問題は現地住民の日常生活と密接な関わりを持っているため、環境保全と地域の資源を適切に利用することが、人々の生活改善に寄与するということを念頭に置いた活動をしています。
2 「遊び言葉」等を用意してお互いの信頼関係を深める
現地で活動する際の一番の障壁は、言葉の問題です。アジアでは、主として英語を通じてコミュニケーションをとることが多いのが実情です。
英語を母国語としないアジアでは、英語で意思識疎通を図ることに時間が必要な場合があります。会議を行う場合は、話す内容を箇条書きにしてシンプルにまとめた資料を予め用意するとより効果的です。
また、現地で仕事をする上では、関係者との信頼関係を深めることが重要です。そのため、協働団体等と英語で冗談を言うことは難しい部分もありますが、「遊び言葉」を用意しておくと、お互いの心が打ち解けるよい材料となります。

途上国では、緊張をほぐしてから会議を始めることが少ないため、会議やワークショップ等でアイスブレイクを行うことは有効な方法の一つです。
3 対象国の異文化理解を深める
環境問題は、その国の日常生活と密接な関わりを持っているため、その国の文化・習慣について理解を深めることが大切です。
協働団体等から現地の生活事情について説明を受けるのはもちろんですが、限られた時間の中で住民や関係者と多く触れ合い、自分自身が異文化を感じとることが大切です。現地での食事(食文化)にも、その国や環境問題を物語る多くの要素が含まれています。
4 相手によく伝わる方法で会合をファシリテート
会議やワークショップでは、相手の気持ちを十分に踏まえながら、お互いの考え方を引き出して、まとめていく交通整理が必要となります。
住民との集会等では言葉の壁があることから、現地の協力団体や関係者には、会合での進め方や達成すべきことについての意図を予め伝え、集会をマネジメントしてもらうことで円滑に進めることができます。
5 ルールを取り決めて、事務作業(報告書作成、会計等)を円滑に行う
寄付者への報告や顧客への説明責任を果たすためにも、定期的に報告書作成や会計処理を行う必要があります。円滑に事務処理を行うためには、報告書の構成や領収書をとりつけるためのルールについて、現地の協働団体と予め取決めながら進めることが大切です。
2015年9、10月号
- アジアの開発途上地域で国際環境教育活動を目指す人のために 2
〜求められる実践者の技能編〜 - 私のアクティブラーニング見聞
- アクティブラーニング型授業は 何を目指しているの?
- 考えるっておもしろいかも!?パート2 第1回 好奇心の種
- ベースライン調査から見る「ハ県の今」
- アクティブラーニングってなに?
カテゴリー
- worldexpress (13)
- 事業レポート (79)
- GEMS (2)
- JICA草の根技術協力事業 ブータン王国ハにおける地域に根ざした持続可能な観光開発と人材育成プロジェクト (6)
- JICA草の根技術協力事業 ブータン王国ポブジカにおける地域に根ざした持続可能な観光の開発 (6)
- NEC森の人づくり講座 (2)
- SAVE JAPANプロジェクト (1)
- インドネシア (6)
- カンボジアにおけるオオヅル及び生息地の保全に関する環境教育・普及啓発事業 (1)
- きのこたけのこ里山学校 (2)
- ハイフォン市都市環境整備にかかる環境教育・普及啓発プロジェクト (3)
- バングラデシュ国における事業 (18)
- 企業の人材育成事業 (1)
- 市民の市民のための環境公開講座 (4)
- 日本の環境を守る 若武者育成塾 (7)
- 東京シニア自然大学 専科 (2)
- 東京シニア自然大学 本科 (1)
- 清里ミーティング (3)
- 王子の森自然学校 (2)
- 人が育つ場づくり (5)
- 国際事業コラム (24)
- 地域の課題解決あの人に聞きました! (8)
- 小さなサスティナブルのカケラ (4)
- 投稿 (4)
- 次世代のホープ達 (3)
- 清里ミーティング30thコラム (1)
- 特集 (129)
- 「伝える」ちから (3)
- 「未来を豊かに」を仕事にする (5)
- 「食」をとおしていのちをつたえる (3)
- 2020年までにチェックしたい9つのサスティナブル・トピック (3)
- esdユネスコ世界会議を終えて (4)
- JEEF25周年 私を形づくっている自然の原体験 (3)
- SDGs×教育 (3)
- アクティブラーニングってなに? (3)
- あなたの買い物が社会を変える (3)
- いま泊まりたい“学べる宿” (3)
- クリスマスの景色が変わる?生き物の変化と気候変動を知る。 (3)
- さあ! 2枚目の名刺をもとう (3)
- サイエンスと環境教育 (1)
- シニアからの環境教育 (2)
- どうする? サスティナブルな洗濯 (3)
- メディアを使った間接コミュニケーション (3)
- もうすぐ春がやってくる! 写真で伝えるセンス・オブ・ワンダー (1)
- 人と環境をつなぐ「花」のおはなし (3)
- 人気アウトドアメーカーは どんな環境の取り組みをしているの? (2)
- 今、子どもに向けたワークショップが熱い! (2)
- 今年こそ、エコツアーに行こう! (6)
- 今年こそ資格をとろう!自然体験型環境教育の資格・認定 (1)
- 地域を動かす移住者たち (3)
- 変わる!プラスチックの使い方 (3)
- 外であそぼう! (4)
- 夫婦で森に生きる (3)
- 子どもたちの自立を育むコミュニケーション (3)
- 学校で有効な環境教育的教育手法 (3)
- 市区町村の都市型環境教育のとりくみ「水」「森」「施設」 (3)
- 日中韓の環境教育の今 (3)
- 日本ならではのSDGsって? (4)
- 海の環境問題と環境教育 (3)
- 清里ミーティング30th (5)
- 環境教育✖️フェス (4)
- 環境教育って効果があるの? (2)
- 環境教育施設としての動物園・水族館 (3)
- 自然を感じる服 (3)
- 自然学校の今 (7)
- 里山イニシアチブ 野生動物と向き合う (1)
- 食とエネルギー (3)
- 食べ物を育てる×教育 (2)
- 食品ロスから環境を考える (3)
- 理事コラム (11)
- 環境教育のものさし (7)
- 考えるっておもしろいかも!? (31)
- 超大 狩猟免許をとる! (3)
- 鈴木みきの山便り (5)