機関誌「地球のこども」 Child of the earth

Bird Friends ~鳥がつなぐ友情~ 2014.10.22

文:内田 葵(うちだ あおい)桜美林大学 リベラルアーツ学群 環境学専攻3年 
9月8日~9月12日までJEEFでインターン

日本に46か所しかない、貴重なラムサール条約登録湿地の一つである谷津干潟で実施された、東京シニア自然大学に参加してきました。そこで身につけたことをレポートします。

東京シニア自然大学(JEEF主催)の本科過程を修了した専科生を対象に、「干潟を楽しむ」のテーマの下、より参加者が生物についての興味・理解を深める目的で干潟に生息する生物の観察会が開催されました。本日の講師である安西英明先生は小柄で鷲の顔をあしらったバンダナを頭に巻いており、軽快な話し方と表情から気さくな印象を受けました。

感銘を受けた教育手法

参加者とともに、施設のレンジャーである長井裕紀さんから谷津干潟の時代背景等の説明を受けた後、安西さんによる野鳥の説明を聞きました。その中で私は、単に自分の持っている知識を効率良く提供するのではなく、時に自分自身のことやギャグを織り込みながら参加者を笑わせ、和ませる手法に気付きました。「季節の移り変わりを感じると嬉しい。」といったような率直な想いから話題を進め、「これはミミズのように見えるかもしれませんが、ゴカイ(誤解)です。」等のギャグでどっと笑いを取る、知識ではないものの、柔軟なテクニックに「私もこのように流調に話したい。」と、感銘を受けました。

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説明が終わり、センター内の望遠鏡から見える湿地を観察しました。安西さんの近くで観察を行い、野鳥の脚の色の違い等、私だけでは気付かない細かい所を教えていただきました。長い時間をかけてセンター内から様々な鳥や水生生物を見ているうちに、段々と早く外に出て観察してみたいという思いが湧き出てくるのを感じました。

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青空の中での生物観察会

昼食を皆で一緒に取った後、参加者の前で自己紹介を行いました。参加者からは「自然観察だけじゃなくて人間観察もしなよ。ほら。この人とか人間観察にもってこいだよ。」「君もあと少ししたら私たち(シニア)の仲間入りだよ。」等、ちょっとしたユーモアを利かせて私を暖かく迎え入れてくれました。

午後は、谷津干潟を歩いて回る形で自然観察を行いました。その中で、安西さんから具体的な鳥の種類を教わりました。「ダイサギは体が大きいのが特徴で、アオサギは名前はアオだけど体はほんのり青みがかったグレー。」等の解説を聞き、参加者と共に種類当てを試みました。しかし、遠くにいる鳥の種類を見分けることは難しく、参加者との経験の差を思い知らされる形となりました。

東京シニア自然大学専科 sinior4

野外での自然観察では、野鳥に限らず、カニなどの水生生物や、バッタなどの昆虫の観察を行いました。その中でも私が印象に残っているものは、大きな巣を張っているジョロウグモです。クモは習性で巣の上の振動するものを餌だと認識するため、安西さんは音叉をクモの巣に当て、勘違いしたクモが近づいてくるという実演を行いました。その後、参加者は安西さんに習って音叉をクモの巣に当て、小さい頃に還ったかのように楽しんでいました。私はクモ等の虫が苦手なため、積極的に触れあうことはしなかったものの、参加者の姿を見て「虫を含め、生物全般に興味を持つ際限なき知的好奇心を見習いたい。」と感じさせられました。

一通り生物の解説を終えた後、参加者と共に公園の芝生に腰を下ろし、私たちを取り巻く環境について話を伺いました。その中でも特に、「私たち哺乳類と比べ下等生物だと言われる鳥や昆虫は、大昔から地球上に存在していた大先輩なんだよ。」という言葉が印象に残りました。私たち人間の儚さを感じさせられ、謙虚な気持ちになることが出来たからです。

この体験を通じて、環境教育の本質は、専門的な知識を適切に伝えていくだけに限らず、「自然を媒介に全てのものは一つにつながっている」という事実を参加者に感じ取ってもらうことにあるのではないかと強く感じました。

未来へ羽ばたく為に

私は大学では環境学を専攻しており、プログラムの一環としてエコライフフェアやエコフェスタ等の環境技術・環境規制を主としたイベントに参加することは多くありました。しかし、今回のように実際の自然と直接触れ合う機会は少なかったため、今回の体験は環境に対する感性を磨く貴重なものとなりました。残り1年半の大学生活、ゼミ、卒論、と行うべきことは多々ありますが、今回の体験で学んだ教育手法と感性を存分に活かして、湿地を飛翔する野鳥のごとく将来に向けて羽ばたいていきたいと思います。

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