機関誌「地球のこども」

地域の課題解決あの人に聞きました!第8回「開発教育」でよりよい社会をつくる人を育てる

DEAR理事会の様子

文・インタビュアー:山口泰昌(事業部海外事業グループ コーディネーター) 写真提供/開発教育協会©

今回のインタビューは
認定NPO法人開発教育協会
中村 絵乃さん

誰もが住みやすい世界をつくるために必要なものはなんでしょうか。経済格差是正、社会基盤整備、環境保全。様々なキーワードが考えられると思います。

今回は、「持続可能で、公正な社会をつくる人」を育てる活動をされている開発教育協会(DEAR)の事務局長である中村絵乃さんにお話を伺いました。

ワークショップで考える正解のない問い

まず、開発教育について伺いました。

「社会で起きていることは環境問題でもあり、開発問題でもあります。自分たちにとって便利で住みよい社会は多くの場合、生態系の破壊や、資源の大量消費を伴っています。そういった発展の背景にある問題や構造に気づき、より持続可能に、そして公正な社会にするにはどうすればよいかを考え開発教育を行っています。貧困や人権も、もちろん環境もテーマです。」

DEARは、スタッフが6名ですが、役員やボランティアと20以上のタスクチームをつくり、様々な活動をしています。その中でも学校や地域でのワークショップは大切な活動の一つです。

「学校では、正解が一つではない問い(例:持続可能な社会とは何か?)を子どもたちと考えます。答えがなく先生もわからない。という状況で子どもたちはたくさんのアイデアを出します。時には先生もびっくりして『あの生徒が、あんなこというんだ』と驚きます。子どもたちは皆ちゃんと意見を持っています。」

 

親子向け100人村ワークショップ 写真提供/開発教育協会©

問題の構造を可視化する

「ワークショップではあらゆる人の立場を考えるようにしています。例えば、一番大変な思いをしている人は、なかなか声を上げられないでしょう。そして、誰が意思決定に参加しているのか、誰が力を持っているのか、など、構造的なことを可視化します。

具体的な例を挙げると、日常生活に不可欠となった『スマートフォン』。これがどこでどのように作られ、私たちの手元に届くのかを考えたことはありますか? スマホ一台当たりの電子部品の数は約千個あり、その原料となる鉱石は世界中から来ています。さらに、工場でその部品を組み立て、スマホが作られる過程でさまざまな環境問題や人権問題が起きています。

例えば過酷な状況で鉱石を採掘する人々、採掘現場で汚染される川、スマホの部品を一日中組み立てる人々、などのことは知ろうとしないと知ることができません。私たちの便利な暮しの結果、起きているこのような問題をできるだけ可視化し、複雑な構造を理解します。問題を知るだけでなく、問題解決のための取り組みを知り、私たちができることを考えます。」

教材『スマホから考える世界・わたし・SDGs』 写真提供/開発教育協会©

このような「様々な構造を理解し参加者に考えてもらう」教育活動を37年続けてきたDEAR。活動による解決したい課題を伺うと、

「私たちの活動は教育活動ですので、貧困や環境問題を直接解決するものではありません。私たちができることは、一人ひとりが『課題を遠い世界のことではなく自分の事と理解し、その上で構造を考え、社会をより持続可能な方向に変えていく力』をつけることをサポートすることです。人間は一人ひとりがとても価値のある存在であること。その人が自分らしくいられる社会であると同時に、他人にとっても生きやすい社会。みんなが行動することで、そういった社会を自分たちでもつくれるんだと知ってほしい。」と、仰いました。

 

 

DEAR主催教材体験ワークショップ 写真提供/開発教育協会©

DEARが発行している様々な教材

DEARが発行している様々な教材 写真提供/開発教育協会©

社会をどう変えていくのか

我々JEEFは、自然体験を通した環境教育を行い、「自ら課題を見つけ、学び考えて行動できる人」を育てることで、持続可能な社会の実現を目指しています。その中で、私が所属している海外事業グループでは、バングラデシュやインドネシアで生計向上事業を行い、生活環境を整えると同時に、地域の環境保全を住民と一緒に考えるといった活動もしています。

このような活動を行う上で、必要なことは中村さんの仰る、構造を理解し不公正な状況に敏感になる、ということだと私も思います。何か行動を起こす際に、問題の背景を知らずにこちら側の価値観のみで行動をしてしまうと、状況に合わない支援をしてしまったり、相手の気持ちを傷つけてしまう可能性があります。ですから、その人や地域がどのような苦しみを抱えているのかを理解し、原因を把握し状況に適した解決を図ることが大切です。

全ての人々にとって住みやすい世界をつくることは難しいことですが、最後の次のような中村さんの言葉に心に沁みました。

「環境を保つためには人権や開発などの問題は避けて通れないので、環境教育に関わっている方々とも一緒になって考えられるといいなって思います。」

誰もが住みやすい社会とは何か。どうすれば実現できるのか。友達でもお隣さんでもNGOでも、世界のことを一緒に考えること、活動すること。これも世界をより住みやすくする一つの方法だと思います。みなさんも身近にできることから活動を始めてみてはいかがでしょうか。

湿地帯での授業(ブータン)©JEEF

2019年9、10月号

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