機関誌「地球のこども」 Child of the earth

ベトナム・ダナンで家庭ゴミ削減の秘訣を学ぶための スタディツアーを実施しました! 2015.02.25

【開催日】2014年9月8日(月)~11日(木)
【開催地】ベトナム社会主義共和国・ダナン市
【主催】(独)国際協力機構(JICA)
【協力】ダナン市、ハイフォン市

文:佐藤秀樹(JEEF職員)

「ハイフォン市都市環境整備にかかる環境教育・普及啓発プロジェクト」は、2013年1月に開始されてから2年が過ぎようとしており、残り1年となるところです。
今回は、ハイフォン市で本事業に関わっているプロジェクトチームメンバー21名と一緒に、ベトナムの中でゴミ削減の先進的な都市として有名な、ダナン市を舞台としたスタディツアーを実施しました。

本スタディツアーでは、ダナン市でゴミの回収を行っている都市環境公社(URENCo)やコミュニティでゴミ削減のための活動を行っている、婦人同盟の関係者との意見交換、およびダナン市内の視察を通じて、ハイフォン市とダナン市のゴミの不法投棄の相違点を洗い出し、ハイフォン市の家庭ゴミ削減に適用可能な方法を見つけ出すことを目的として実施されました。

ダナン市の家庭ゴミ処理の現状 〜ダナン市URENCo事務所への訪問から〜

一般家庭ゴミ処理におけるハイフォン市とダナン市との大きな違いは、ダナン市では街や住宅街にゴミ箱が設置され、ゴミはゴミ箱に捨てることが徹底されていることです。また、これはパイロットプロジェクトとしての試みですが、住民にゴミを捨てる時間を設定し、例えば、A地区では毎日17時〜18時の間にのみ、ゴミ箱へ家庭ゴミを捨てることが実施されています。URENCoによると、この仕組みを導入してからは、95%の人が時間通りにゴミを捨てるようになったとのことです。指定された時間に捨てるのが原則ですが、もし当該時間に捨てられない場合は、住居周辺のゴミ箱に捨てることで、ゴミの不法投棄を少なくすることができているようです。

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市場付近におけるゴミ箱の設置

ダナン市は人口100万人で200万人の暮らすハイフォン市の半分であることから、ゴミの排出量(ダナン市: 600トン/日、ハイフォン市: 900トン/日)も違うため、ダナン市ではゴミ処分のコントロールがしやすいという利点もあります。

地域で行われている家庭ゴミ削減のための環境保全活動 〜婦人同盟の活動から〜

婦人同盟は、花や木等の植物を植えて緑を増やすこと、日曜日に地域を清掃することやペットボトル、空き缶、金属製品等のリサイクル品を回収することなど、地域住民を対象とした環境保全活動を行っています。リサイクル品の回収では、毎週ゴミ収集のカートをひきながら、ドアtoドアで各世帯を回り、集めていきます。

ペットボトルを利用して作られた花立て

ペットボトルを利用して作られた花立て

リサイクル品は、婦人同盟を通してURENCoに買い取ってもらい、貧しい子供の奨学金や地域の修繕費(コミュニティ会館や学校の修繕、貧しい世帯への食料支援等)に使用されています。1日だけで2,000円程度のリサイクル品を集めて売ることができるようです。また、婦人同盟は、学校やコミュニティ会館で、使用済みのペットボトルや段ボールを利用した、花立てや写真立てを創作するためのワークショップを実施しています。リサイクル製品が自分たちの住んでいる地域の修繕というかたちで、目に見える活動になることや、慈善活動に使用されるという明確な目的があることが、リサイクル品の回収に地域住民が積極的に協力してくれる理由となっているようです。

ダナン市の関係者との意見交換から 〜ゴミ削減のための秘訣〜

ダナン市では、一人のコミュニティリーダーが統括する世帯数の規模が、30世帯。ハイフォン市の100世帯/リーダーと比較すると、ハイフォン市はダナン市の3倍以上となります。ダナン市では各コミュニティリーダーが統括する世帯数が少ないこともあり、ゴミの不法投棄を阻止しやすいと考えられます。

参加者によるとりまとめの様子

参加者によるとりまとめの様子

参加者からは、「ハイフォン市でも婦人同盟と類似した活動を実施していますが、その効果は十分ではありません。ダナンで成功している秘訣は何ですか」という質問がありました。婦人同盟の関係者からは、「ダナン市では、特定のコミュニティリーダーだけでなく、できるだけ多くの住民を巻き込み、住民のアイディアに基づいてプロジェクトを作るようにしています。そうすることで、活動に対する住民の参加度を高め、自立性や事業終了後の住民による活動の持続性を、確保することができます。」、「多くの環境プロジェクトを生み出して、円滑に進めることができる理由としては、ダナン市に環境保全を強く推し進めてくれる自治体のリーダーがいることも挙げられます。」という回答がありました。また、婦人同盟からは、市民への環境保全活動の普及方法として、「テレビ、ラジオ、新聞やチラシだけでキャンペーンを進めるだけでなく、実際に住民が参加できる活動機会を多く持つことで、参加型体験学習をするように心がけています。これが、人々の環境に対する意識を継続的に高めることにつながります。」とのコメントもありました。

今後のハイフォン市 家庭ゴミ削減へ向けた展望

住民が毎日、決められた時間(1時間/日)に、地域周辺の決められた場所(ゴミ箱)にゴミを捨てるという試みは、ゴミを不法に投棄させないという視点から、かなりインパクトのある取り組みであったように感じました。また、住民のアイディアをできるだけ多く活動に反映させ、活動に対するモチベーションを高めることや、住民に参加型学習の場を設けて活動に対する理解を深めるなど、住民主導で進めるための学ぶべき要素は多々ありました。

ダナン市役所、URENCo、婦人同盟や市民との横の連携が上手く構築されていることも、プロジェクトを円滑に進めることを可能にし、その効果も発現しやすいものにしていると推測できます。
文責:佐藤秀樹(JEEF職員)

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