ごみ問題に対する住民意識改善の難しさを感じた3年間
- 2016/06/16
- カテゴリー:ハイフォン市都市環境整備にかかる環境教育・普及啓発プロジェクト, 事業レポート

【事業名】JICA草の根技術協力事業(パートナー型)ハイフォン市都市環境整備にかかる環境教育・普及啓発プロジェクト
【実施期間】2013年1月~2016年1月
【実施地】ベトナム社会主義共和国・ハイフォン市
【JICA草の根技術協力事業(パートナー型)】(独)国際協力機構(JICA)
【協力】ハイフォン市
3年間(2013年1月~2016年1月)にわたり、ベトナム・ハイフォン市の家庭ごみを削減するための環境教育・普及啓発プロジェクトが終了しました。本事業は、国際協力機構(JICA)の草の根技術協力事業(パートナー型)として実施されました。
ごみ出しの意識の低さ
プロジェクト対象都市のハイフォン市はハノイ市の東約100キロメートル位置するベトナム北部で最も重要な港湾都市であり、人口は約170万人。ここでは人口の増加に伴い、ごみの量が増加し、市民のごみ出しの意識の低さによる路上投棄、定期回収の遵守率の低さが不衛生な環境を作り出しています。
このような問題から、住民が家庭ごみを適切に処理するための意識・行動改善と、関係機関による環境教育・普及啓発活動の技能向上を目的とし、市内に設定したモデル地区(ホンバン、リーチャン)で事業が開始されました。
ポイ捨ては当たり前
ベトナム人の多くは、Non My Back Yard 気質(自分の敷地を一歩出れば他人の土地)つまり、「家の外は役所が掃除すべき」という意識があります。公共の場を綺麗に使用するという意識が低く、ごみが落ちていることも、ごみをポイ捨てすることも当たり前の状況です。
行政による環境教育・普及啓発活動は、一方的なスローガンの押し付け「ごみのポイ捨ては禁止、ごみはごみ箱へ」等と告知するだけで、住民の環境改善へ向けた心に響く活動を行うための検討が十分に行われてきませんでした。
事業の実施内容と成果
このような状況の下、本事業では市の公衆衛生や環境問題に関わる主な機関(ハイフォン市計画局、都市環境公社(URENCo)、青年同盟、婦人連盟等)を含めたプロジェクト・チームを結成し、市のごみ問題について横断的に話し合うことのできる場を構築しました。そして、同市で適応可能な環境教育・普及啓発のアイデアを創出するため、下記の活動を実施しました。
実施内容と成果
1.本邦研修での学びを活かし企画・実施
本事業のプロジェクト・チームのメンバー20名が本邦研修(年1回、計3回開催)に参加し、環境教育・普及啓発活動の企画・立案能力を向上させた他、その学びを活かしハイフォン市の対象地区で、合計8本の環境教育・普及啓発活動を、企画・実施しました。主な活動は左記の通りです。

本邦研修-企業のごみ削減の取り組みを学ぶ
- 小学生(高学年)を対象としたごみ最終処分場の見学
- ハイフォン市のごみ処理の現状把握や最終処分場での生ごみ堆肥生産によるごみの有効活用を学ぶスタディ・ツアーの実施。
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小学生を対象としたごみ最終処分場への見学ツアー
- 小学校(高学年)での環境教育
- 小学校教員を対象にごみ教育教材の開発と教材活用のための研修会を開催し、研修会に参加した教師が生徒に対してごみの減量が必要な理由、ごみの再利用などの授業を実施。
- 地域住民を巻き込んだ清掃活動
- 婦人連盟から、各自治会の女性グループを通じ、ごみを捨てないこと、減らすことの大切さを伝える活動の実施。
2.プロジェクトメンバーがスタディ・ツアーに参加
2014年9月本事業のプロジェクト・メンバー20名が、ごみを含めた街の美化に積極的に取り組んでいるダナン市でのスタディ・ツアーに参加しました。住民の清掃活動への積極的な参加や、その動機を促すためのファシリテーション技能等について意見交換を行い、環境教育・普及啓発活動の企画・立案能力の向上を図りました。
3.事業終了後の活動計画・提言書の作成
2015年5月~11月の間、プロジェクト・チームメンバーの所属先ごとに活動計画の作成とその草案の見直しを行うワークショップ等を繰り返し行い、そして、12月に活動計画・提言書としてハイフォン市人民委員会へ提出、説明を行いました。人民委員会副委員長立ち合いのもと、環境教育・普及啓発活動の継続の重要性がみとめられました。
ごみ問題は、各国の文化・習慣と密接な関わりを持っているため、住民のごみのポイ捨てや公衆衛生に対する意識改善を図ることの難しさを感じる3年間でした。ハイフォン市は環境教育・普及啓発の重要性を認めています。
そのため、本事業で結成した横断的なプロジェクト・チームがハイフォン市で環境教育・普及啓発活動のプラットフォームとなり、日本や自国で学んだ環境教育の技能を活かしながら、自立して継続的に活動を続けていくことが、今後益々重要となります。
最後に、3年間にわたり本事業を進めるに当たって、ご協力頂いた国際協力機構(JICA)とカウンターパートのハイフォン市に心から感謝の気持ちと御礼を申し上げたく、謝辞にかえさせていただきます。
文責:佐藤秀樹(JEEF職員)
2016年5、6月号
- 企業の責任における5つのステップ
- ごみ問題に対する住民意識改善の難しさを感じた3年間
- アジアの開発途上地域で国際環境教育活動を目指す人のために
〜これから高まるニーズ編〜 - 環境スポーツイベントを通じたCSR
- 住民の意識改革から始まった国立公園保全 –これまでの軌跡–
- 考えるっておもしろいかも!?パート2:第4回 学びの環境を考える 1(教室編)
- 宇宙から見た地球
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