機関誌「地球のこども」

考えるっておもしろいかも!?第5回 学びのおもしろさって何?

考えるっておもしろいかも!?

今回は、前回の「待つということ」の続編のような話です。7月末~8月頭にかけて、小学4・5年生を対象とした科学教室を開催しました。今年で3回目となる夏の教室ですが、今年は特に実験にじっくり取り組むことを意識してプログラムを組みました。何を知るための実験なのか、どう使う器具なのか、何のために結果を記録するのか、一つ一つの意味を子どもたちに伝えていきました。

ある日、薬品を「すり切り」という手法を使って量りとっているときのことでした。それまで弾けるような笑顔で活動していた男の子が、急に真面目な顔になって「こんな丁寧に教えてもらったことないからなぁ…」とつぶやきました。詳しく聞くと、すり切り自体は授業で習ったけれど、先生が説明するのを一度見ただけで後は自己流でやっていたとのことでした。「かもが手を添えて教えてくれたから、力加減がわかったよ」と彼は嬉しそうでした。

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彼とのやりとりの後、僕はふと実験のおもしろさって何だろうと考えました。実験のハイライトは、やはり結果が出た瞬間です。しかし、その結果に行き着くまでのプロセスを自分で組み立てることができたという自負は、結果が出た瞬間の感動をさらに大きくするのでしょう。大人たちは、子どもたちに一番いいところを味わってもらおうとお膳立てしようとしますが、子どもたちは最初から最後まで自分でやりたいのです。同じようなことは日常の学びの場でも起こっています。危ないから、汚れるから、時間がかかるから、いろいろな理由を付けて大人たちは「おもしろい」部分を子どもたちから取り上げてしまいます。

子どもたちには試行錯誤しながら学ぶという経験がとても大切です。試行錯誤という学び方は、失敗する権利も、成功・発見する権利も子どもたち自身が持つことができます。学びのおもしろさというのは、子どもが自分の手で新しい知識や技能をつかみ取ることなのではないでしょうか。

GEMS(ジェムズ)は、カリフォルニア大学で開発された子ども対象の科学と数学の体験学習プログラムです。 大人が知識を教えるのではなく、子どもたち自身が実験を企画し、話し合いながら結論を導き出すようにアクティビティが構成されています。

ジャパンGEMSセンター

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鴨川 光(かもがわ ひかる)

1987年茨城県生まれ。ジャパンGEMSセンター研究員。 早稲田大学大学院教育学研究科修了後、2013年6月より現職。子どもの思考力や社会性の発達について研究している。ワークショップやボランティアを通して子どもたちと一緒に成長中。

2014年9、10月号

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