
「横浜市における海洋プラスチック環境教育プログラム」の一環で、横浜市の小学校に向けて、海洋プラスチックごみに関する環境教育出前授業を行っています。今回は、横浜市立鶴見小学校を訪れました。
※このプログラムは、ジョンソン株式会社からの寄付金によって支援されています。

科学者として、海洋プラスチック問題に向き合う
まずは、「海岸に流れ着くごみは、海のどのあたりを漂っているんだろう?」を調査する実験から。海洋プラスチックから海を守るためには、ごみが海の中に浮いているのか沈んでいるのか、どんな場所でどんな生きものに影響を与えているのかを調査することが必要だよね、と伝えました。
科学者として、まずは予想をしてから、実験を行いました。

観察して、触れて、考えて。実際に触れることで、子どもたちの思考は動いていきます。
「みんなはスポンジ、どう予想した?」
「俺は、これは沈むと思ったよ。水を吸ったら重くなるもん」
「え、でもいつも教室の水槽洗うとき、スポンジ浮いてない?」

そして、実際に試してみると……
「えー!沈んだ!なんで!?」「やっぱり、思った通りだった!」
「え、プラスチックでも浮くものと浮かないのとあるじゃん、なんで?」
「ほかにもプラスチックのもの試してみようよ」
自分の持ち物も次々に試していく子どもたち。自分の手で確かめたことが、新たな疑問を生み、さらなる探究へとつながっていきました。

実験を通して、同じ「プラスチック」と一括りにされがちな素材にも、浮くもの・沈むものがあり、それぞれが異なる影響を生きものに与えている可能性があることが見えてきました。
マイクロプラスチックの影響と、対策の難しさを知る
後半は、5mm以下の小さな海洋プラスチック、マイクロプラスチックについても伝えました。
砂の中に細かくなったプラスチックが混ざり、お魚や深海の生きものが食べてしまう……というお話のあと、小瓶に入った砂とマイクロプラスチックをふるいにかけ、マイクロプラスチックを取り除きました。

ひとつの瓶の中でも、数十個入っていたマイクロプラスチック。とても細かいため、生きものたちにとっては、エサと区別がつきません。
では、もしそれが、海岸全体や、海底の砂にも広がっていたら?
「魚は目が悪いから、エサかわからないよね」
「大変だ……」
子どもたちは想像を巡らせ、魚や貝やエビの視点に立って考えていました。
減らせるプラスチックって、どんなもの?
一度流出すると、回収が難しくなってしまうプラスチック。私たちにできることは、ごみとして流出してしまうプラスチックや、プラスチックの使用量をなるべく減らしていくことだと伝えました。
そして、さまざまなプラスチック製品について、プラスチックの使用量を減らせるものはあるか、他の素材に置き換えられることはできるかを話し合いました。

子どもたちは、「プラスチックは私たちの暮らしを支えている素材」という側面にも着目し、「減らせるプラスチックは減らしたい。けれど、必要なプラスチックは大切に使う」という現実的な視点で考えていきました。
「おかしのふくろはー…紙でいいよ!ハンバーガーとか紙で包んでるよね」
「いや、でも、ポテチとか入れたら油しみるじゃん」
「アルミホイルだったら大丈夫かも?」
子どもたちは、グループの中で率直に自分の意見を話しつつも、他の人の意見にも耳を傾けていました。お互いのアイデアを重ね合ううちに、子どもたちは一人ひとり、プラスチックの使用量を減らす工夫を具体的に考えていきました。
誰ひとり取り残さない未来を目指して
海洋プラスチック問題をテーマに、子どもたちは異なる意見を交わしながら、解決に向けて必要なことを考えていきました。
環境問題に向き合ううえで大切なのは、「一つの正解を押し付ける」のではなく、「多様な意見を尊重し、協力して取り組んでいくこと」。その姿勢が、より良い未来をつくる力になります。
授業を受けた子どもたちは、今後、地域の環境を守る活動にチャレンジしていく予定です。今回の学びが、次のアクションへとつながっていくことを期待しています。

文責:木村佳葉(ELMSセンター担当)