Episode 3: 津波被災地での環境教育
2014年4月より「海と田んぼからのグリーン復興プロジェクト」 (注1)の有志と共に気仙沼市本吉町の子どもを対象にした「子ども小泉学」を企画、コーディネートを担当し、当地域の住民グループが講座の運営を担いました。
約1年間で14回開催した「子ども小泉学」は森、海、川での自然体験活動やワークショップを通じて身近な自然や生態系の豊かさ、人々の暮らしや営みに気づき、地域に対する親しみと愛着を感じ、未来に何を残したいか考えてもらう環境学習・ESDプログラムで、津波被災地の地域づくりを担う次世代の育成を目標に掲げました。
「子ども小泉学」の実践
2011年3月11日14時46分、三陸沖を震源とする東北地方太平洋沖地震が発生、引き潮が確認された20分後には最大約20メートルの大津波が本吉町小泉地区を襲い、町全体が壊滅的な被害を受けました。
小泉地区の中心部を流れる津谷川右岸および外尾川河口域には地震により海岸・河川堤防が損壊したため魚類、底生生物が生息する干潟的環境が出現しました。
さらに、海岸の背後にある久須志神社の境内には気仙沼を代表するヤブツバキの樹林や在来種の草本類が多数確認できました。社殿は今回の津波からも辛うじて被害を免れました。
リアス海岸の急斜面の崖地にあり、手つかずの自然が残された鎮守の森は幾多の自然災害から守られてきたと考えられ、人々の暮らしと防災・減災のあり方を考える学びの場に相応しいフィールドです。
国連防災世界会議
「子ども小泉学」の学習活動のまとめは、2015年3月に開催された国連防災世界会議の会期中に現地で行ったエクスカーションと翌日の同会議サイドイベントの「パブリック・フォーラム」にて発表しました。東北大学で開催した「パブリック・フォーラム」では当日会場の定員を大幅に超える130人ほどが詰めかけ、子どもたちの発表を熱心に聞いてくださいました。
当時小学3年生だったAさんは、「今まで小泉はただ通り過ぎていた場所でしたが、子ども小泉学に参加してからは、干潟や鎮守の森、海岸の自然の豊かさを感じて、小泉は自慢できる場所になりました」と報告しました。これより前にAさんの母親は震災当日の体験がトラウマになり、海には決して近づけなかったのに、波打ち際で大はしゃぎして水飛沫がかかっても平気になった。恐怖心を乗り越えることができたと語っていました。
(「子ども小泉学」のエピソードは次回に続きます。)
注釈
(注1)大学・企業・NPO・団体・研究機関が協働する環境コンソーシアム。東北大学生態適応センターに事務局を置いていた。