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SDGs時代の環境教育とは(2) 2023.11.15

Episode 2: 気候危機と子どもの権利

2015年の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で採択された「パリ協定」では世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つ(2℃目標)とともに、1.5℃に抑える努力を追求する(1.5℃目標)ことが示され、今世紀後半には人間活動に由来する温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを約束しました。

ところが、2023年3月に公表された「気候変動に関する政府間パネル」(IPPC)の第6次統合報告書によると(注1)、このままではあと10年で1.5℃に達する見込みで、今世紀末には3.2℃に達することが示されています。さらに、同報告書は現在の気候変動への過去の寄与が最も少ない脆弱なコミュニティが不均衡に影響を受けることを指摘しています。

小泉海岸の夜明け(2023.11 筆者撮影)

子どもの意見表明権と政治活動

スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんが始めた「たったひとりのストライキ」に刺激を受けた世界中の若者たちが参加する「未来のための金曜日」(Fridays For Future)というムーブメントも社会的に立場の弱い人々が気候変動の影響を受けやすいという不公正に注目し気候正義を訴えています。

2019年9月に開催された「国連気候変動サミット」に参加するため、グレタさんはストックホルムからヨットで大西洋を横断しニューヨークに到着しました。サミット直前の9月20日、市内で「グローバル気候マーチ」が開催され、彼女は子どもたちの前でスピーチを行いました。ニューヨーク市教育委員会はその日公立学校の臨時休校を決め、保護者の同意書か大人が同伴すれば生徒が参加するのを許可しました(注2)。子どもたちが政治活動に参加することを許可し、公立学校の休校措置を行なった教育的意味は大きいと考えます。

気候変動は、世代内公正の観点からは社会的に立場の弱い人が、世代間公正の観点からは子どもが参画する機会を保障しなければなりません。1989年の国連総会で採択された「子どもの権利条約」の「意見を表す権利」(第12条)は子どもの自己決定権や人格的自立権につながる権利を明言したものです。条文には「自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする。(注3)」とあり、子どもの意見を尊重する態度が大人側にも求められています。

津波被災地での自然体験活動

震災直後の小泉海岸(2013.9 筆者撮影)

次に、2011年の東日本大震災の津波被災地で子どもの意見表明権を考慮した事例をご紹介します。宮城県気仙沼市で実施した「子ども小泉学」は、震災後、海に近づくことすらできなかった子どもたちと自然体験ができたことは大変意義深い活動でした。次回は2014年4月から2015年3月までの1年間、地域の方々と小泉海岸で行った環境教育の実践に纏わるエピソードから始めたいと思います。

注釈
(注1)IPPC(The Intergovernmental Panel on Climate Change) “AR6 Synthesis Report: Climate Change 2023”
(注2)津山恵子「『僕は気候変動で死ぬ』世界同時デモに動いた子どもたちの切迫感と日本の温度差」(「ビジネスインサイダー」2019年9月25日付)
(注3)堀尾輝久・河内徳子編(1998)『平和・人権・環境 教育国際資料集』青木書店

秦 範子(はた のりこ)

外資系IT企業在職中に米国大学院留学。帰国後、杉並区内に拠点を置く環境NPOに参加。以来、15年間学校コーディネーターとして区内小中学校の環境教育に関わってきた。現在は都留文科大学等の講師(非常勤)のほか、2021年8月から日本環境教育学会副会長(2期目)を務める。田舎暮らしに憧れて7年前に八ヶ岳南麓に移住。博士(農学)。

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