9月に入り、清里はだいぶ秋めいてきました。サクラやウルシの葉が色づき始め、ドングリやクリ、ヤマブドウなども実ってきています。
さて、この連載も今回で最終回です。これまで、森が持っている人を元気にする力や要素について、ご紹介してきました。今回は、この「森で人は元気になる」ことの社会的意味や、その活動の先に期待できることについて、ご紹介したいと思います。
「森で人が元気になる」活動を通して、期待できること
1)医療面での効果
「保養」や「休養」として森での活動を取り入れることにより、病気を未然に防ぐ「予防医学」としての効果を期待できます。(もちろん「治療」として森や自然の中での活動を実施している事例もあります。)メンタルヘルスケアとしても、森や自然の中での活動は有効であるため、企業の福利厚生として森での活動を取り入れる動きも近年出てきています。
森に入る機会や人が増えることによって心身の健康を保つことは、高騰する医療費を削減することや自殺者を減らすことにもつながります。
2)森林や自然環境の保全
森を活用することによって、森林が保全されることが期待できます。そもそも健全な森がないと活動することができないため、前提条件として「森を守ること」が必要になります。そして、森を守ることは、その場所の自然環境や生態系を守ることにもつながります。
また、森での活動を通して、森や自然が好きになったり、関心を持つようになったりする人が増えるのではないでしょうか。森や自然に愛着を持つことで、大切に思い、守るための行動をとる人も増えていくはずです。それは、森や自然を守るための大きな力になるでしょう。
3)地域の活性化
活動を通して、森の価値が見直され、高まることが期待できます。森での活動は観光資源にもなり得、事業にすることで経済効果も見込むことができます。地域にある森の価値が見直されることは、森や自然が地域の守るべき宝であることに、地域の人が気づくきっかけにもなるでしょう。森を活かし守ることは、地域の自然だけでなく、自然に紐づく文化や暮らし、そこに暮らす地域の人をも活かし守ることにつながるはずです。
以上、3つの点を挙げましたが、これらを総じて言えることは、森で人が元気になる活動を通して、私たちは「持続可能な社会」の実現に寄与することができるということです。私が所属しているキープ協会が「森で人を元気にする活動」に取り組んでいる理由も、この活動が持続可能な社会をつくることにつながると感じているからです。
すでに日本各地で森をフィールドに、人を元気にする活動をしている方が沢山いらっしゃいます。場所ややり方などは様々だと思いますが、森を人を、地域を地球を元気にしていこうという仲間が全国にいることはとても嬉しく心強く、そして尊いことだと感じています。
「今度の休みには森に行こう!」そんな人が増えて、森と人が今より近く、より良い関係になっていきますように。そして、人が森で過ごすことで人も森も元気になり、さらには地域も元気になるような、そんな場所や時間が日本各地で続いていくこと、そして増えていくことを心から願っています。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。皆さんと、清里で、あるいは皆さんおススメの森で、いつの日かお会いできることを楽しみにしています!