地球温暖化に伴う気候変動について、気温自体が高くなっていることのほか雨の降り方、台風の進路や強さなど様々なところに現れている変化をみてきました。温暖化の影響は、冬季にも現れています。
日本の冬(12月~2月)の平均気温は100年あたり1.19℃の割合で上昇しており(図1)、日最低気温が0℃未満の「冬日」の年間日数も減少しています(図2)。このような温度の上昇は当然、雪にも影響します。
冬になると大陸から吹き出す寒気の影響でよく雪の降る日本海側の地域の統計を見てみましょう。例えば、北・東・西日本の日本海側における最深積雪(期間内で最も深くなった積雪の値)は各地域とも減少しています。特に、1990年頃を境に平均を下回る年が増えているのがわかります(図3)。ほかにも、大雪の回数が減っているなどのデータもあります。
これらの変化は、除雪の手間が少なくなったり、雪による事故なども減ったり、特に悪い影響ではないように思われるかもしれません。しかし、スキー場などウィンタースポーツのレジャー施設や冬の観光産業への打撃は大きく、経営が続けられない施設も出てくる可能性があります。また、山に降った雪は夏にかけての農業用水や生活用水として重要な水資源となっているため、雪が減ると深刻な水不足に陥ることも考えられます。
ひと冬に降る雪の量が減る一方、北海道や本州の内陸など温暖化による気温上昇があっても、雪が降るのに十分な低温になる地域では、厳冬期にいわゆる「ドカ雪」といわれるような極端な大雪の頻度が増える可能性も指摘されています。これは、温暖化による気温や海面水温の上昇で、大気中に含まれる水蒸気の量が増えることが一因です。これが、降水量の増加につながり、低温な地域では大雪になるということです。このような雪に対して適応し、安全に過ごすために有効な情報が、気象庁ウェブサイトで見られる「今後の雪」です。ここでは、24時間前から現在までの積雪の深さや6時間先までの予測を確認することができ、特に日本海側で短時間のうちに強く降るような大雪には有効です(図4)。
温暖化やそれに伴う気候変動は地球全体の課題であり、世界が足並みをそろえて緩和策に乗り出しています。日本の温室効果ガスの排出量も徐々に減ってきていましたが、環境省によると2021年度は8年ぶりに増加に転じました(図5)。
コロナ緩和で、落ち込んでいた経済活動が回復し、エネルギー消費量が増加したことが要因と考えられています。なかなか一筋縄ではいかないようです。これまで紹介した気候変動に対しては、気象情報を駆使して適応しつつ、カーシェアの利用やテレワークなど、多様な温暖化対策から自身ができることを選択して、行動に移していきましょう。
参考文献
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