会員ページ Member Only

温暖化で変わる気候と防災(6)地球温暖化で雪が減るのか増えるのか 2023.09.15

地球温暖化に伴う気候変動について、気温自体が高くなっていることのほか雨の降り方、台風の進路や強さなど様々なところに現れている変化をみてきました。温暖化の影響は、冬季にも現れています。

日本の冬(12月~2月)の平均気温は100年あたり1.19℃の割合で上昇しており(図1)、日最低気温が0℃未満の「冬日」の年間日数も減少しています(図2)。このような温度の上昇は当然、雪にも影響します。

図1:日本の冬の平均気温偏差 ※赤線:基準値からの長期変化傾向は上昇している(気象庁ウェブサイト)

図2:日最低気温0℃未満の年間日数(気象庁ウェブサイト)

冬になると大陸から吹き出す寒気の影響でよく雪の降る日本海側の地域の統計を見てみましょう。例えば、北・東・西日本の日本海側における最深積雪(期間内で最も深くなった積雪の値)は各地域とも減少しています。特に、1990年頃を境に平均を下回る年が増えているのがわかります(図3)。ほかにも、大雪の回数が減っているなどのデータもあります。

図3:西日本日本海側の最深積雪の基準値との比
※平均値(100%)に対して最も変化の大きい西日本のみを示した。北日本、東日本については、気象庁ウェブサイトで、「北・東・西日本 日本海側の年最深積雪の基準値との比」を参照。

これらの変化は、除雪の手間が少なくなったり、雪による事故なども減ったり、特に悪い影響ではないように思われるかもしれません。しかし、スキー場などウィンタースポーツのレジャー施設や冬の観光産業への打撃は大きく、経営が続けられない施設も出てくる可能性があります。また、山に降った雪は夏にかけての農業用水や生活用水として重要な水資源となっているため、雪が減ると深刻な水不足に陥ることも考えられます。

ひと冬に降る雪の量が減る一方、北海道や本州の内陸など温暖化による気温上昇があっても、雪が降るのに十分な低温になる地域では、厳冬期にいわゆる「ドカ雪」といわれるような極端な大雪の頻度が増える可能性も指摘されています。これは、温暖化による気温や海面水温の上昇で、大気中に含まれる水蒸気の量が増えることが一因です。これが、降水量の増加につながり、低温な地域では大雪になるということです。このような雪に対して適応し、安全に過ごすために有効な情報が、気象庁ウェブサイトで見られる「今後の雪」です。ここでは、24時間前から現在までの積雪の深さや6時間先までの予測を確認することができ、特に日本海側で短時間のうちに強く降るような大雪には有効です(図4)。

図4:気象庁ウェブサイト「今後の雪」の使い方と大雪の情報について
『すごすぎる天気の図鑑 雲の超図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)

温暖化やそれに伴う気候変動は地球全体の課題であり、世界が足並みをそろえて緩和策に乗り出しています。日本の温室効果ガスの排出量も徐々に減ってきていましたが、環境省によると2021年度は8年ぶりに増加に転じました(図5)。

図5:日本の温室効果ガス排出量 ※2021年度(令和3年度)の確報値(『2021年度(令和3年度)の温室効果ガス排出・吸収量(確報値)について』(環境省))

コロナ緩和で、落ち込んでいた経済活動が回復し、エネルギー消費量が増加したことが要因と考えられています。なかなか一筋縄ではいかないようです。これまで紹介した気候変動に対しては、気象情報を駆使して適応しつつ、カーシェアの利用やテレワークなど、多様な温暖化対策から自身ができることを選択して、行動に移していきましょう。

参考文献

『すごすぎる天気の図鑑 雲の超図鑑』
(荒木健太郎/KADOKAWA)
>>Amazonでみる

佐々木 恭子(ささき きょうこ)

気象予報士、防災士。合同会社『てんコロ.』代表。
大学卒業後、テレビ番組制作会社入社。番組ディレクターを経て、2007年に気象予報士の資格を取得し、民間気象会社で自治体防災向けや道路向けの予報業務などを担当。現在は予報業務に加えて、気象予報士資格取得スクールや気象予報士向けスキルアップ講座などを主催・講師を務める。

JEEFメールマガジン「身近メール」

JEEFに関するお知らせやイベント情報、
JEEF会員などからの環境教育に関する情報を
お届けします。

オフィシャルSNSアカウント

JEEFではFacebook、Twitterでも
情報発信を行っています。
ぜひフォローをお願い致します!