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環境教育の原点ー30by30への期待(6) 2023.03.15

2022年、カナダで開かれた生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択されました。この枠組で、「30by30(サーティ・バイ・サーティ)目標」が主要な目標に定められました。
これは、2030年までに世界の陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする目標です。日本では今のところ陸域の20.5%、海域の13.3%が保全されていますが、これを両方とも30%に増やしましょうということです。

30by30目標では、これまでの保護地域とは違い、「OECM(Other effective area-based conservation measures)」、保護地域以外で生物多様性保全に資する地域、という考え方が採択されています。保護地域とは国立・国定公園など法令で開発が制限される地域ですが、OECMでは、30by30に賛同する民間企業や個人、地方自治体等からの申請に基づき、環境省が「自然共生サイト」と認定します。
このため環境省は昨年「30by30アライアンス」を創り、企業や自治体、NPO法人、個人などの参加を募っています。日本環境教育フォーラムや関係団体も参加しています。私が属している青森山田学園も参加を申請しました。

カナダで開かれたCOP15会議

話がちょっと理屈っぽくなりましたが、このOECMという考え方は日本の里山が重要なヒントになっています。日本では古くから人間と自然が共生しているところがあり、そこが里山でした。この里山のような地域を末永く守っていけば自然環境は保全されるのではないか、というのです。土地を境界線で分けて「ここは守るところだから入ってはいけません」という保全の仕方もあるけれど、もっと柔らかく自然を守る、というよりか、共生していこうという考え方ですね。
人間と自然が混在し、その上で自然を破壊せず、むしろ自然と人間が共生しながら結果的には健全な自然が増えていくという形が創れるのです。

実はこれ、環境教育にぴったりだと思います。誰もが楽しく参加できそうだからです。身近なゴルフ場やスキー場も参加できるのです。動植物の管理やモニターを的確に行い、生態系が守られていればいいのです。自然保護というと何となく構えてしまいそうですが、OECMでは肩ひじを張らずに参加でき、いつの間にか自然大好き人間に変身していく可能性があります。
環境省のアライアンスが日本中に広がり、いつの間にか陸海ともに30%以上の豊かな自然が回復できるかもしれません。そんなことを夢見るとなんだか楽しくなります。

これまで6回、勝手なことを書き連ねてきましたが、どなたかの心に、書いた一節でも残れば幸いです。

岡島 成行(おかじま しげゆき)

1944年1月、横浜市で生まれ。高校、大学とも山岳部。アンデス、ヒマラヤに挑戦するなど15歳から25歳は山にだけ集中した日々。卒業後、読売新聞記者、大妻女子大学を経て2014年より青森山田学園理事長。この間、日本環境教育フォーラム、環境教育学会、自然体験活動推進協議会などの設立に携わる。

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