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ブータンの環境教育情報局!(5)

ブータンにおける環境教育 その2

ブータンには、林業・公園管理局(Department of Forestry and Park Services)、国家環境委員会(National Environment Commission)、王立自然保護協会(Royal Society for Protection of Nature)、クリーン・ブータン(Clean Bhutan)、世界野生生物基金(the World Wildlife Fund)など、環境問題や課題に取り組む機関や組織があります (機関や組織名については、一部意訳)。さまざまな機関が、環境教育を通じて環境問題を訴える先駆的な役割・責任を持っています。しかし、幼い子どもたちに環境に対する価値観や自然・生物多様性に関する知識を身につけさせる責任は、ブータン王国政府教育・技能開発省(Ministry of Education and Skills Development) が担っています。

教育機関では、子どもから大人まで、また読み書きのできない人など、多種多様な対象者に効果的な環境教育を提供するために、さまざまな方法や戦略を継続的に検討しています。教育分野では、正式なカリキュラムの環境教育は、初等・中等教育のすべてのレベルで、さまざまな教科に広がっています。ブータンで環境教育が導入される際に重視されたのは、カリキュラムに現地の事情(ブータンの物理的、社会的、経済的な環境)を取り入れて作成することでした。

 

ブータンにおける環境教育でインパクトのある取り組みのひとつに、学校や施設での「自然クラブ」の結成があります。ブータンのほとんどの学校には、30〜40人のメンバーで構成される自然クラブがあります。自然クラブは、教育省が正式に設立するまで、王立自然保護協会(RSPN)が資金・技術支援やコーディネーターへの実地研修などを行い、その傘下で活動していました。自然クラブが環境教育のために行っている活動の中には、文芸コンテスト、植林、美化・清掃活動、テーマ別の環境イベントの開催、教育旅行の企画などがあります。

 

正式なカリキュラムの中で環境教育を実施することによって、下記の効果が期待されています。

しかし、このアプローチにはまだ課題が残っています。Tenzin & Maxwell(2009)によると、ブータンの学校制度では、適切な環境教育の戦略を策定できる環境教育専門家が不足していることが課題の1つです。また、ブータンの教師と生徒の環境問題に対する認識の調査(Mongar, 2022)によれば、生徒が地域社会を変えていく役割を果たすための知識と技能を身につけるために、学校のカリキュラムに「気候変動教育」を取り入れることが推奨されています。

前回の記事で、次世代の環境保全のための教育や意識改革を行うため、新しい戦略へ投資することが大切であると強調しました。メディアなど通じて情報にアクセスできるようになった現在、人々は以前ほど無知ではなくなってきています。環境の重要性や持続可能性の必要性については多くの人が認識していますが、環境に配慮した解決策や持続可能な消費へつながる習慣を実践することは、あまり意識されていない、もしくはまだ無知な人が多いのが現状です。なので、ブータンの環境団体も、従来のやり方に加えて、より創造的な解決策やアプローチを考え直し、実践する必要があります。例えば、以下のようなことが世界で実施されています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

WWFブータンや王立自然保護協会(RSPN)のような組織は、環境保護や種の保存が大切だと思っている学生や個人を対象にしたフィールドトリップを主催し、実際に体験して学べる機会を提供しています。こういった例を見ると、教育実践者のスキルアップのために多くのプラットフォームがあることがわかります。こういったプラットフォームを通じて、教育実践者は環境教育をより双方向で効果的のある、また参加者の記憶に残るものにしていくことができると思っています。

 

文責:チェリン・チョキ 
写真提供:Phuntshothang Middle Secondary School
翻訳:山口泰昌(海外事業グループ)

チェリン・チョキ

ブータンの技術教育及び訓練並びに職業教育及び訓練を基盤とした教育機関であるAthang Learning Instituteのディレクター。以前は、ブータンの環境NGOである王立自然保護協会に勤務。また、ブータンの持続可能な観光開発を提唱し、促進するためのボランティアベースのプラットフォームである「ブータン持続可能な観光協会」のメンバーとしても活躍している。日本環境教育フォーラムとは、ブータンにおける環境教育を提唱する上で長年のパートナーである。