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ブータンの環境教育情報局!(4) 2023.01.16

ブータンにおける環境教育

ブータンは 1970 年代から環境に配慮してきた国です。ブータンでは、環境教育や環境保全を推進するために、政府レベル、非政府レベルのさまざまな機関や組織が多くの取り組みを行っています。また、ブータンはカーボンニュートラルであることを義務づけられていて、排出量を削減するためのさまざまな政策を実施しています。環境教育は優先事項であり、小学校から学校のカリキュラムに組み込まれています。生徒たちは、生物多様性保全の重要性、気候変動、持続可能な開発について学んでいます。

環境教育が学校のカリキュラムに組み込まれる以前は、王立自然保護協会(RSPN)が学校、大学、機関などで結成された自然クラブへの支援を通じて環境教育が実施されていました。RSPNは1987年以来、ブータンの正式な教育制度における環境教育プログラムの開発と統合に尽力してきました。RSPNは、全国の学校に自然クラブを設立することで環境教育プログラムを開始しました。その後、自然クラブは教育省によって正式に制度化されました。長年にわたり、RSPNは学校、教員養成機関、僧院、ノンフォーマルな教育、地域コミュニティなど、さまざまなセクター向けに環境教育教材を開発してきました。2015年にクラス9と10(日本での中学校3年、高校1年)のカリキュラム開発に成功したのに続いて、RSPNは学校や教育機関が環境教育プログラムを充実させるための支援を続けています。

環境保護は、国民総幸福量(GNH)の4つの柱のうちの1つです。GNHは人と環境の幸福に焦点を当て、その理念は国のカリキュラムにも取り入れられており、学生は環境を保護し、天然資源を保全し、持続可能な開発を促進することの重要性について教えられています。

また、ブータンの「グリーンスクールプログラム」など、政府のさまざまな取り組みを通じて環境教育が推進されています。このプログラムは、青少年に環境教育を提供し、彼らが地域社会を変える主役となることを奨励しているものです。さらに、ブータンは国連の生物多様性条約に加盟しており、環境保護・保全の推進に積極的に取り組んでいます。ブータン政府は、「森林・自然保護法」や「環境保護法」など、環境の悪化を抑えるための政策もいくつか実施しています。また、ブータンは国連気候変動枠組条約の締約国であり、再生可能エネルギーの開発にも積極的に取り組んでいます。これらの取り組みは、ブータンが環境を保護し、自然を守ることの重要性を国民に伝えていこうとする姿勢を表しています。

教育省は、環境教育がすべてのレベルの学校カリキュラムに含まれるようにするために、いくつかの措置を講じています。教育における持続可能性を確実にするため、2015年に「持続可能な開発のためのブータン教育(BESD)フレームワーク」が開始されました。BESDフレームワークは、持続可能な開発、環境教育、市民教育、価値観教育といった4つの要素に焦点を当てています。

さらに政府は、環境教育をカリキュラムの一部として組み込んだ国家カリキュラムを策定しました。カリキュラムには、気候変動、再生可能エネルギー、生物多様性、廃棄物管理、水管理などのトピックが含まれています。さらに、植樹、清掃活動、遠足など、生徒が環境について学べるような課外活動もいくつか企画されています。また、ブータン王国政府は、学校での環境教育を促進するために「グリーンスクール」プログラムを開始しました。このプログラムは、学校がより環境に優しくなれるようなサポートを提供することに重きを置いています。このプログラムでは、グリーンインフラの構築、太陽エネルギーや雨水利用システムの提供、環境に配慮した活動の推進などが行われています。

学校での環境教育だけでなく、さまざまなコミュニティと連携して、地域の環境と人の距離を縮め、環境問題に対する責任感や意識の向上を促し、環境意識の高い市民が集まるコミュニティ作りに貢献しています。RSPNやWWFは、「環境教育は世代を超えた課題であり、今後も継続される」と考えています。ライフスタイルの変化や新しいテクノロジーの影響により、新しい世代を教育し、考え方を変えるための新しい戦略に投資する必要があると思っています。

文責:チェリン・チョキ 写真提供:ブータン王立自然保護協会  翻訳:山口泰昌(海外事業グループ)

チェリン・チョキ

ブータンの技術教育及び訓練並びに職業教育及び訓練を基盤とした教育機関であるAthang Learning Instituteのディレクター。以前は、ブータンの環境NGOである王立自然保護協会に勤務。また、ブータンの持続可能な観光開発を提唱し、促進するためのボランティアベースのプラットフォームである「ブータン持続可能な観光協会」のメンバーとしても活躍している。日本環境教育フォーラムとは、ブータンにおける環境教育を提唱する上で長年のパートナーである。

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