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ようこそ、ちえの木の実へ!(10) 2023.01.15

新しい1年も絵本と共に。

こんにちは。ちえの木の実です。

新しい年がスタートしました。クリスマスから一転、しめ飾りに除夜の鐘、おせちに十二支に……とお正月の雰囲気がただよう絵本であふれる店内に、お客さまも開口一番「和、ですね」と。そんなふうに、衣替えや模様替えをしながら、季節や行事をたっぷり味わっていただけると嬉しいです。

春の七草、スラスラ言えますか? 鏡開きって何日でしたっけ?

つい、絵本の中に答えを探してしまいます。お正月のあそびの定番だった、かるたや福笑い。たこあげや羽根つき。「あそんだよ」と教えてくれる子に、どれくらい会えるでしょうか。こちらもやはり、絵本を開くと……いるいる! 頬を赤く染めながら駆けまわる、子どもたちの姿が。そんなとき、ふと、ある本のタイトルが心に浮かぶのです。『人生に大切なことはすべて絵本から教わった』この国の歴史、この国の子どもたちの姿、ことば、あそび、歌……やさしいことばで、やさしい絵で、1つの答え以上のことがいつも見つかるのも、絵本や児童書です。

 

1月の本棚は・・・

1年のはじまりにふさわしい、鏡餅(羊毛の手づくり)といっしょに、お正月気分満載の絵本を。1年に1度、この時期に「まってました」といわんばかりに存在感を発揮するのが、十二支の絵本です。なぜネズミが1番か、なぜネコがいないのか、などがおもしろく描かれた昔話は、子どもたちに語りたくなります。今年は卯年、ということもあり、うさぎの絵本も賑やかに紹介しています。

 

『こたつ』

ある一家の、こたつが主役の絵本です。こたつを定点観測していると、寒い寒いと子どもが入ってくる。こたつの上の「歳末食品市」のチラシ、「夜中まで起きていられるかな」という会話から、大晦日の朝だということがわかります。こたつの上に置かれるものは、ごはん、宿題、昆布巻き(みんなで巻く)、年賀状(急いで書いている風景)、おじさんから届いたカニ……とめまぐるしく変わり、この風景がお正月まで続くのです。誰もがこたつに入っては出て、持ってきては片づけて、ごちそうが並び、家族が集う。こたつがあたたかくて離れられないのは、単にあたたかいからではないのかもしれませんね。家族が顔を合わせ、思い思いのことをやっても、いっしょに何かをしてもいい場所。なんだか程よい空間のように感じられます。

『うさぎをつくろう』

『スイミー』や『あおくんときいろちゃん』で親しまれているレオ=レオニの絵本には、副題がついているものが多いのですが、こちら『うさぎをつくろう』には「ほんものになったうさぎのはなし」とあります。(もうそれだけで素通りできなくなります)

はさみとえんぴつが「うさぎをつくろう」と相談し、えんぴつが描いた絵のうさぎと、はさみが切った紙のうさぎができあがります。なにかがほしければ、えんぴつとはさみにお願いすればよいのですが、ある日ふたりはほんもののにんじんを見つけて食べるのです。ほんものって、なんでしょうね。作ったものとほんものの違いに気づくと、読み手も魔法をかけられたような気分になりますよ。

『あるヘラジカの物語』

アラスカの写真家で知られる星野道夫さんと親交の深かった、絵本作家・鈴木まもるさんが、星野さんの遺した1枚の写真を見て物語を作らずにはいられなかった、というスケールの大きな絵本です。写真に写っているのは、大自然の中で、角をからませたまま白骨化した2頭のヘラジカ。なぜ、このような形でからまりあっているのか。写真を見ていると、その向こうに2頭のヘラジカが戦う様子、力尽きてゆく様子、さまざまな動物の餌食となり朽ちてゆく様子が、くっきりとした映像のように作者の目の前に流れたのかもしれません。極寒のアラスカの冬を越えてやってきた春は、命の象徴そのもの。新春に厳かに開きたい絵本のひとつです。

1冊の絵本を読み終わったとき、言葉にならない感情があふれることがあります。言葉にする必要はないし、子どもたちに「どうだった?」「どう思った?」と聞き出す必要もないと思います。ただ、こたつのような場所で、「おもしろかったね」「不思議だね」と心と心を通わせられたら、それこそが、ポッとあたたかくなる瞬間なのだと思います。12月から1月にかけて、お客さまともそんな心のやりとりが多くありました。お店がどんどんあたたかくなるわけです。あたたかさを求めて来てしまう、そして入ったら最後(!)、そんなこたつのようなお店を、これからも目指したいと思います。

武本 佳奈絵(たけもと かなえ)

ちえの木の実スタッフ。アメリカの大学にてカウンセリング心理学専攻。都内児童書専門店、出版社などにて勤務後、2020年2月にちえの木の実に入社。絵本・児童書の翻訳なども手がける。2児(高校生、中学生)の母。

ちえの木の実ホームページ ▶https://www.chienokinomi-books.jp/

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