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ブータンの環境教育情報局!(3)

ブータンの環境問題

ブータンは、北に中国、南にインドという二つの大国に挟まれた小さな内陸の王国です。長い間、ヒマラヤ山脈に囲まれ、孤立していたブータンが近代的な開発に触れ、現代社会への変貌を遂げたのは1960年代からです。それ以来、ブータンは世界で最も急速に発展している国の一つとなっています。

自然環境の保全は、ブータンの文化、宗教、地域信仰に深く根ざしています。そのため、「環境」は国を開発する際に優先度が高く設定されており、国の戦略を記した文書にも強調して記されています。憲法では、国土の60%を森林にすることが定められており、実際国土の約71%が森林、約10%が低木林となっています。 ブータンは、その広大な森林面積のおかげで、排出される以上の二酸化炭素を森林が吸収し、カーボン・ネガティブ(CO2の排出量よりも吸収するCO2の量が多い状態)を達成しています。また、第4代国王Jigme Singye Wangchuck陛下が提唱された国民総幸福量(GNH)に基づく政策がなされています。GNHは、グッドガバナンス、持続可能な社会経済開発、文化の保護と促進、環境保全の4つの柱を掲げています。

ブータンの豊かな森林生態系とGNHの開発理念は一見理想的ではあるのですが、発展途上国特有の課題にも直面しています。ブータンは、急速な経済発展に伴い、インフラが増加し、国民の生活様式が変化しているため、環境に関連する新たな課題に直面しています。UNEP 2018によると、ブータンには5つの主要な環境問題があると言われています。農村から都市への移住、土地の劣化、大気汚染、水資源と汚染、固形廃棄物管理に関する環境問題です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブータンにおける開発と都市化の問題の一つに、「人口の農村から都市への移動」があります。ブータンの人口や住宅に関する調査(2017)によると、21.7%の人々が都市部に移住し、農地は休耕地となり、村の多くの家は空き家となってしまっています。都市部では人口増加がしており、この変化の影響で、都市の資源、インフラ、そして環境に圧力をかけてしまっています。

以前からあった焼き畑を伴う焼畑耕作の文化は、森林伐採や森林火災に加えて、土地の劣化の大きな原因の 1 つとなっています。また、ブータンの大気汚染の主な原因としては、国土の一部における産業活動の拡大、自動車の増加、燃料となる木材の使用などが挙げられます。加えて、都市化や産業活動による人口やインフラの増加により、水資源に大きな負担がかかっています。環境問題の中でも、廃棄物管理は大きな問題であり、国民一人一人に関わる問題です。廃棄物はもはや新たな問題ではなく、消費が活発になっている今の社会は、ブータンのあらゆる人々に影響を与え、一家庭から出る廃棄物の量は、過去に排出されていた量を超えてしまっている状態です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、私たちは、政策や規制、教育、テクノロジーの活用など、様々なアプローチを通じて、これらの問題に対処しようとしています。しかし、政府だけでこれらの課題に取り組むことは不可能なので、民間企業から市民社会組織まで、また国内から国際レベルまで、さまざまな機関や組織が政府を支援しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

文責:チェリン・チョキ 翻訳:山口泰昌(海外事業グループ)

 

チェリン・チョキ

ブータンの技術教育及び訓練並びに職業教育及び訓練を基盤とした教育機関であるAthang Learning Instituteのディレクター。以前は、ブータンの環境NGOである王立自然保護協会に勤務。また、ブータンの持続可能な観光開発を提唱し、促進するためのボランティアベースのプラットフォームである「ブータン持続可能な観光協会」のメンバーとしても活躍している。日本環境教育フォーラムとは、ブータンにおける環境教育を提唱する上で長年のパートナーである。