海岸を散歩すると、いつの間にか林の中を歩いていることに気がつきます。「どこから砂浜で、どこから林なのか?それはどこで変わるのだろう?」ふと疑問がわきました。
砂をすくい上げながら、林へむかってみても、いつの間にか土へ変わってしまいます。今度はカップに砂と水を入れてみると、濁り具合から、木々が生え始める場所から少し林へ入った場所に土が増えていくことがわかりました。
それを調べている時に、眼の前を通り過ぎていく甲虫がいます。オガサワラスナゴミムシダマシです。「よく見るこの甲虫は、いったいどこが一番見られるのかな?」と新たに疑問がわき、簡単な枠を置いて数を調べてみました。
大きい葉から小さい葉の破片まで丁寧に取り除いていきます。
後で復元できるように大きさ別にトレーにわけておきます。
取り除いた葉は、ふるいにかけて葉以外のものにわけます。生き物はこのふるいから落ちていきます。それで見つかったのが、このトレーです。
オガサワラスナゴミムシダマシしかいませんでした。そして、海岸に近い林の中が一番多いことがわかりました。
「他に生き物がいないの?」と謎が深まるばかり。1年を通して調べてみました。調べた中で見つかった、ゴミムシダマシ以外の生き物を野帳へ書き込んでいくと、ほとんどがトビムシ。それとダンゴムシのセット。これにごくたまに見られたのがカニムシやハサミムシ。といった感じでした。小笠原では葉を分解する生き物が少ないことがわかりました。
調べ終わるころ、ある日、事件が発生しました。
ゴミムシダマシを葉から取っている時、1個体が手から落ちてしまいました。すると、近くを通ったアリがいきなり噛みついてしまいました。とっさに持っていた筆でアリを離そうとしましたが、離れません。すると、近くにいた別のアリがどんどんゴミムシダマシに噛みついていきました。どうすることもできず、連れていかれてしまいました。
専門家に聞いてみると、最近島に入ってしまったツヤオオズアリということがわかりした。森の中で見られていたアリはとうとう海岸まで生息地を広げたと言っていました。自分の体よりはるかに大きい甲虫を連れ去っていく様子に怖さを感じました。
島の自然は、時々メッセージを出している時があります。人間には聞こえない声で普段は通り過ぎてしまうかもしれません。今回は、葉の下から「ぼくたちが一番頑張って葉を食べているんだよ」「知らない生き物がいるよ」「だんだん生活する場所がせまくなっているよ」と聞こえた気がしました。