今回は「自分ごと化」とは何かという話です。かつては「当事者意識」とも言いましたが、仕事を「自分ごと化」することが、働くことや会社に対する満足度や幸福度を増し、仕事の成果が向上するということに相関関係があるらしいのです。
「自分ごと化」とはシンプルに言えば「やる気」です。卑近な事例を挙げると、那須平成の森では有料のガイドウォークを実施していますが、小学生から参加できるこのプログラムには、親御さんが自分の子供に自然を学ばせたいと参加させるケースが少なくありません。この時、要注意なのは、参加する子供さん自身のモチベーションです。親が参加させようと思う気持ちと本人が参加したいかどうかは全く別問題。子供さんに「歩きたい」という意欲がない場合のガイドは悲惨な結果を招きます。これに反して、先日3年ぶりに実施した「栃木県子ども観光大使2022」に参加した小学生の子どもたち。こちらは自らの意思で参加申し込みをしていますから、その積極性と言ったら、終始、発見の連続と質問責めで私は子供たちの学びを見た想いでした。この二つの事例が「自分ごと化」を端的に表していると思います。
さて仕事と「自分ごと化」を考える時、私たちは職場の新人には、まず「ほう・れん・そう」の重要さを伝え、仕事をする際の5W1Hの考え方の整理と実践を指導します。その上で実際に様々な業務を担当してもらいますが、言われたことを言われたようにするだけでは仕事としては完成しません。
拝命された業務に対して、自分の「やる気」を確認し遂行する上での障害物は何か、ステークホルダーは誰か何かなど、「想像力」と「考える力」が必要です。アウトプット(達成すること)は可視化できても、アウトカム(達成することによって成される成果)を可視化するには、そこまでの長い時間軸を自分で設計しなくてはなりません。本来、仕事とは、上司やクライアントから依頼されたことを行うのではなく、自らの意思や動機で取り組むのが一番楽しく、やりがいのある行為のはず。
仕事は、やらされ感でやっていては楽しくないし、自分の「伸びしろ」は見えません。「この仕事は自分の意志でやっているんだ」という自覚と責任感を持っていた方が、仕事の脈絡を覚え仕事の全体像が見えます。何のためにこの仕事をしているのかという根源的な意味を一般化することができたとき、その仕事は自分自身の成長となって表れるでしょう。これが理想的な「自分ごと化」と私は考えます。
もう一つ事例を挙げます。今、環境省は、2016年より掲げた「国立公園満喫プロジェクト」の推進をさらに推し進める形で、コロナ禍によってインバウンド人口が激減した状況を打破しようと、様々なプログラムや情報サービスの質の向上などのコンテンツの充実を図ろうとしています。私が業務する日光国立公園もその一つであり、ホームページの拡充などを進めてきました。
そんな中、ある日問い合わせの電話があり、「那須平成の森」の休園日や開園時間等がどうも間違っている様子。電話口では丁寧に陳謝し、その後スタッフでその情報源がどこなのか調べてみると、環境省が作成したHPが古い情報だとわかりました。すぐに管理官事務所に報告し、本省に間違いを訂正してもらうよう依頼しましたが、しばらくたってからの本省からの返事は、古いソフト云々で「訂正できない」という回答でした。現場にいる私は「???」。昔の刑事ドラマではないですが「事件は現場で起こっている」のであり「何をか言わんや」です。
「お役所仕事」は、「自分ごと化」とは全く真逆にあることを証明するようなお話。Z世代、AYA世代の皆さん、皆さんは「自分ごと化」をどう考えますか?