こんにちは。ちえの木の実です。
今回は、ちえの木の実の「本棚」について少しお話したいと思います。
本棚に並べられた本を見ると、その人の頭の中や人となりが見えてくる・・・そんなふうに感じることはありませんか?ちえの木の実の本棚も同じように、本棚から本棚へ、少しずつ歩みを進めていただくなかで、「この季節に、今日という日に読みたい本」というのが浮かび上がってくると思います。スタッフが静かに発しているメッセージに、お気づきになるかもしれません。日々、棚を動かしたり、棚に入り込んでいる本に触ったりしながら、本との会話を楽しんでいる私たちです。
5月の本棚は・・・
5月は、ちえの木の実20周年のお祝い・感謝の気持ちを込めた特集棚を作っています。誰にでも年に1度訪れる、おたんじょうび。誕生を待ちわびる動物たちの話、お祝いの準備に心躍らせる子の話、ケーキ作りや贈りもの選びを楽しむ話。こぼれおちそうなほどの喜びであふれる話のなんと多いこと!明るい気持ちでお客さまをお迎えできる、入り口の特集棚です。
もうひとつ忘れてはいけないのは、ありがとうの気持ち。ここまでちえの木の実を育ててくださったのは、お客さまです。開店当時赤ちゃんだった小さなお客さまは、もう20歳。立派な大人ですね。
ご自分の子どもの本を探しに来られていた方は、今頃お孫さんの本を選んでいるかもしれません。あたたかい時の経過に、感慨深くなってしまいます。「ありがとう」の絵本で、心からの感謝をお伝えしたいと思っています。
時は流れる、命を繋ぎながら。
数ヶ月前に入荷した絵本で、つい時間を忘れて眺めてしまう『命のひととき』(化学同人)と、20年以上前からずっと大切にしている『のにっき -野日記-』(アリス館)をご紹介したいと思います。
どちらも、「時間」「命」について、じっくり考えるヒントをくれる絵本です。
『命のひととき』は、四季の移り変わりを慈しむ作者の心が伝わる、美しい絵本です。驚くのは、この絵には一滴のインクも使われていないということ。自然の中で生きる動物や植物がすべて、作者自らが拾い集めたり育てたりした植物でコラージュされているのです。
時間をかけて作り上げた押し花や押し葉を組み合わせて、表情豊かなページを作っているのです。もちろん原画はありません。1ページを作り終えると、色も形も変わってしまう「命ある」絵だったのですから。
『のにっき』は、のどかな表紙に完全にダマされた(!)1冊です。
母イタチの亡骸の横で、泣き叫ぶ子イタチのページから物語がはじまります。そのシーンが定点観測され、命のつながりがシリアスに、そしてユーモラスに記録されます。
自然界の中では、生と死は常に隣り合わせであり、むしろ日常ともいえること。命から命へ、そこかしこでバトンが渡されているのです。この絵本に出会う前と、出会った後、見える景色が確かに変わった、と感じる方が多いのではないでしょうか。
どちらも新旧問わず、開くたびに新鮮な衝撃を与えてくれる絵本です。
ぜひ、たくさんの方々に出会ってほしいと願う絵本です。
次はどんなテーマでお話しようか、どんな絵本を紹介しようか、今から楽しみでなりません。
お店でもお気軽にお声かけくださいね。お客さまと絵本の話ができる、というのがいちばんの喜びです。