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これまでの35年、これからの○○年(2) 2022.05.16

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今でも事務局の女性職員に対して「○○ちゃん」と呼んでいる男性理事や役員がいる団体があります。男性は、愛着の意味でそうしているのでしょうが、社会的に見てアウトです。いちいちイエローカードを提示する私を、彼らは胡散臭そうに(うるさいやつと)見ているだけです。

5月の那須は、美しいオオルリが囀ります。

男性優位の思想は、当たり前のように、日常のどこにでも潜んでいるので、そのことを自覚することは、当時も今も、男性も女性もしごく困難なことです(でした)。
2000年代にジェンダーフリーの考え方が社会に啓発された後、バックラッシュが起こり、混乱が続きます。現在、ようやく「フラワーデモ」や「Mee too運動」が認知されるようになりました。この35年という時間は、女性の人権がクローズアップされることに強化されたともいえるでしょう。ただ、女性自身が強化されたかどうかは不明です。女性の中にも男性優位者や女性嫌悪者はいるからです。この問題はとても闇が深いので、この紙面では負いきれません。

今や「失敗しないためのジェンダー表現ハンドブック」なるものまで世に登場している時代。特にシニア世代の男性たちは、女性に対する言葉使いに大いに緊張感をもって対峙していることでしょう。ただし、本当に、男性が本心として女性に対して尊厳をもっているかどうかは、「?」。そしてこのことが、最も難しい問題なのです。
日本のジェンダーギャップは世界で121位(2021年)。日本の男女不平等の原因は、昭和のままの管理職の価値観と言われています。50~60代が相当する管理職の人々は、「頭では問題だと理解しても、改善に向けての行動ができない」そう。前述した、注意を払って言葉使いはできても本音は男性優位のままなので、女性への共感や理解ができず、結果的に、格差となって表れてしまう現実。必要なのはマインドシフト。これは私たちがずっと口にしてきた環境教育のキャッチコピー「価値観の変革」と同じ。「価値観の変革」の到達の難しさは私たちが身をもって体験してきた困難でもあるはず。私は、この解決はそう簡単ではないと踏んでいます。

ガイドウオークで5月の新緑を楽しみます。

チャレンジの一つとして以下を挙げましょう。Y世代、Z世代の人達は、先輩から先達の歴史を聞くとき、先輩のジェンダー意識を確認した上で話を聞きましょう。確認の手法はワザが要りますが、男性優位と俺様気質はつながっていますから、その人の価値観が権威的なものにどう紐づいているかをアプローチするのも有効な手立てです。先達の歴史を語るその人の意識(価値観)がどこにあるかによって、ストーリーは簡単に脚色されてしまいます。リテラシーが必要です。また、一人の人の話を鵜呑みにせずに多様な先輩諸氏から話を聞きましょう。

そして、男性優位の価値観からの脱出を試みてください。男性優位であることを捨てることは、昔からはびこっている男性に対しての抑圧的な「男なんだから頑張れ」、「男なんだから偉くなれ」の呪縛から解放されることでもあるのです。私は、性別にとらわれず自分の好きな事ややりたい事ができる社会が、平等な社会の一歩になると思っています。

環境教育の世界はまだまだ人権意識が高いとは言えない、というのが2022年の私の肌感覚です。Y世代、Z世代の人達へ。体育会系の上下関係や縦社会に屈しないで、自分自身の人権感覚を磨いて下さい。少しでも「?」と感じたら、声に出して、誰かがその声を拾ってあげましょう。そして複数で共通の話題にしてみましょう。「個人的なことは政治的なこと」なのです。

 

若林 千賀子(わかばやし ちがこ)

若林環境教育事務所代表、栃木県にある「日光国立公園那須平成の森」でインタープリターをしています。そのほかNPO法人自然体験活動推進協議会理事、(一社)アニマルパスウェイと野生生物の会会員、JEEF元理事。関心領域は、自然全般、人権に関する事柄。家族は二人と老猫一匹。これまで飼ってきた動物は、犬、猫、文鳥、コザクラインコ。動物はすべて好きです。

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