うす暗い展示室に鮮やかに映し出される、独特な形の生物たち。ここはアムステルダムにある「Micropia」。世界初の「微生物ミュージアム」です。
微生物学の幕開けは今から約350年前。オランダのレーウェンフックが自ら発明した顕微鏡で微生物を発見、詳しく観察し報告したことが始まりです。彼が次々と微生物の存在に気づき、新しい世界を拓いていったように、ここでは多くの微生物たちに出会うことができます。
微生物コレクターになろう
ずらりと並ぶ顕微鏡で覗くミジンコや珪藻類、クマムシたち。肉眼で見られるきのこや粘菌。発光微生物を体内に持つヒカリキンメダイや、きのこを栽培するハキリアリなど、微生物と共生する生物も展示されています。
そして各展示にはスタンプがあり、ルーペ型の用紙にスタンプをコレクションしながら回っていきます。順路の最後で用紙を読み取ると、見てきた微生物たちを大きさ順に見ていくことができ、その世界のスケール感、深さを実感できます。
発酵食品と腐った食品の匂いを比べてみる
人間と微生物の関わりも多く紹介されています。伝染病を引き起こす微生物やウイルス、医療への応用、バイオ燃料の生成など。極めつけは「発酵食品」と「腐った食品」が展示されているエリア。なんと実際に匂いも嗅げる展示ケースになっているのです。
「発酵食品」には、オランダに工場がある日本メーカーの醤油や乳酸菌飲料も含め、微生物によってもたらされる豊かな食文化が展示されています。一方「腐った食品」は、チーズや果物、ジュースやハンバーガーなど、いつから展示ケースに入れられているか日付が書かれています。どちらも常時3種類ほどのケースからチューブが伸びていて、匂いを嗅ぐことができます。
Micropiaは動物や植物や人間といった生物たちと、微生物との相互関係という広い視点で展示が作られています。そのため、動物の死骸が微生物によって分解されていく実際の映像や、キスと口内細菌の関係性など、単に微生物を紹介するにとどまらない、更に深く踏み込んだ展示も多くあります。
目には見えない、でもいつも側にいる。そんな微生物たちのディープな世界に浸れるミュージアムです。